ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【ヤマト2202】第21話における二つの「ヤマト2」

こんばんは。ymtetcです。

ヤマト2202は「さらばのリメイク」的要素が強い作品だと言われています。しかし今回の第六章に関しては、「ヤマト2のリメイク」的要素が強いように思います。

そんな問題意識から、今日は第六章の中でも、とりわけ第21話について考えていきます。

目次

第21話における二つのメッセージ

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「第六章はヤマトを肯定する映画である。」6日の記事ではそんなことを書きました。

言い換えれば、藤堂早紀と山南修を「導いていく」役割をヤマトが担っていたということです。

そんな、二人を「導いていく」ヤマトから発せられたメッセージが、2202の原作の一つである「ヤマト2」と、密接に関わっています。

真田「お前には聞いていない」

真田「艦長、意見具申。銀河のコスモリバースで増幅してやれば、アンドロメダ一隻の波動砲でも、重力源にダメージを与えられるはずだ」

AI「期待する効果を得るには、CRSに、負荷がかかりすぎる。不確実性の高い作戦のために、コスモリバースシステムを失うわけには──」

真田「お前には聞いていない!」

このシーンは一見すると、AIを真田が一喝しているように見えます。

それはその通りなのですが、AIが話し始める直前、それまで真田を見ていた早紀が視線を左斜め前に移しています。その視線の先にいるのは、AI。つまり早紀は、AIに意見を求めた。そして、AIはそれに応じた。

「お前には聞いていない」という真田の一喝は、AIに向けたものでありながら、そのAIに頼ろうとした早紀に対するものでもありました。

これが第21話における、ひとつめのメッセージです。

土方「生きろ」

もう一つは、6日の記事でも紹介したこのセリフです。

山南「多くの、多すぎる命が失われた。今更、責任を取れるものではないが、せめて、俺とアンドロメダの命と引き換えに、戻ってきてくれ、ヤマト……!」

土方「山南!」

土方「死んで取れる責任などないぞ。山南」

土方「生きろ! 生きて恥をかけ。どんな屈辱にまみれても、生き抜くんだ!」

波動砲艦隊の拡大、終わりなき殺し合い。その責任は今更取れるものではないと分かっていても、せめて自らの命と引き換えにヤマトを救うことで、山南は多くの犠牲に報いようとしました。

それを、土方艦長は「生きろ!」と一喝した。これが、ふたつめのメッセージです。

真田「これはもう戦艦とは言えない。戦闘マシーンだ」

真田「どうだい、この艦は」

古代「天井も高いし、通路も広い。居住性はかなり良さそうですね」

真田「良すぎるのさ」

真田「これが、新型波動エンジンだ。小型軽量だが、出力は大きい。整備も作動も、全て自動化している」

真田「ここが主砲発射室。ショックカノン砲と同径だが、射程距離はヤマトの波動砲と同じだ。その上、艦首拡散波動砲はヤマトの2倍の威力がある。見たまえ、砲術部員の座席がないだろう。照準も発射もすべて、中央でコントロールされるんだ」

真田「操縦も機関部の制御も、全て自動化している。戦闘指揮ももちろんだ。レーダーからコンピューターに接続した情報が直ちに分析され、その結果が各パートに伝達されると自動的に始動するというわけだ」

古代「人間は何をするんです?」

真田「座って、ただ計器を眺めているだけさ」

真田「科学局長の自分が言うのもなんだが、これはもう戦艦とは言えない。戦闘マシーンだ。戦いは人間がするものなのに

古代「なぜこんな化け物みたいなものを作ったんです?」

真田「司令部の命令だ。お偉方は、ヤマトの勝利を機械力の勝利だと錯覚しているんだ。その結果がこの艦だ。血の一滴も通わないメカニズムの結晶さアンドロメダは、今の地球そのものなんだ。この艦では、敵に勝てない」

(『宇宙戦艦ヤマト2』第2話「彗星出現・ヤマトを改造せよ!」)

土方「生きて」

土方「そうか……! ヤマト、生きていたら聞いてくれ。彗星帝国を攻めるのは、あの下の部分だった。我々はあの都市に目を奪われ過ぎていた。ヤマト、ヤマト! 我々は負けた。だがヤマトよ、生きていたら……生きて……生きて……」

古代「土方さん!」

(『宇宙戦艦ヤマト2』第21話「壮烈・土方艦長の死!」)

土方「ヤマト、生きていたら聞いてくれ。我々は負けた。だがヤマトは死ぬな! 生きて、生きて最後まで戦え! 地球の運命は君達の肩にかかっているのだ! 古代!」

古代「土方さん!」

(PSゲーム『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』)

2202の興味深い「操作」

2202の第21話と、旧作ヤマト2。

こう対比してみると、面白いことに、同じ内容のメッセージを同じキャラクターに言わせていることが分かります。

真田は「血の一滴も通わない」「マシーン」を批判し、土方は「生きろ」と説く。

2202にしては珍しい、極めてストレートな「リメイク」であると言ってもいいのではないでしょうか。また、第六章の「ヤマトらしさ」はここにあり、とも考えられます。

 

また、ここから見えてきたことでさらに興味深いのは、山南と土方にまつわる2202の「操作」です。

2202の山南は、ヤマトと対峙するアンドロメダの艦長、という「ヤマト2の土方」要素を背負っていました。

一方で土方は、ガトランティスに敗北したところをヤマトに救われ、ヤマトの艦長となる「さらばの土方」要素を背負っています。

ですが、この構図がそのまま現在まで続いているかと言うと、そうではありません。

特にこの第21話では、「生きろ!」と説く土方はむしろ「ヤマト2の土方」要素を背負っています。

そう説く相手は、旧作ではヤマトでした。それが2202では、アンドロメダと銀河。

なんとこの2艦、恐ろしいことに、どちらもヤマトと同じカラーリングをしているんです。

この辺りの作劇的「操作」はとても興味深く、深読みすればいくらでも妄想が出てきそうだと思っています。今後の課題とします。