ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【ヤマト2202】「トランジット波動砲発射失敗」のリメイク的意味 その2

こんばんは。ymtetcです。

昨日の記事では、土星沖海戦から都市帝国決戦に至る『さらば』『ヤマト2』『2202』のそれぞれの流れを比較し、『2202』は旧作からそれぞれ

・『さらば』リメイク的要素:「トランジット波動砲(渦の中心核を狙え)」

・『ヤマト2』リメイク的要素:「奇襲作戦」「地球艦隊の波動砲による都市帝国出現」「ヤマトの戦線離脱」「ヤマトの改装(修理)」

を引き継いでいると指摘しました。そこから、

  •  原作にはない「銀河」「火星沖海戦」「ヤマトの救出」は、『2202』の完全オリジナルなのか。
  • 原作の両方に存在しながら、その詳細がいずれも異なる「土星沖海戦」と、『2202』の「土星沖海戦」との関係はどのようなものか。

という問いを立て、そして、

  • 「トランジット波動砲発射失敗」は、リメイク的に見てどのような意味を持っているのか。

という問いについても考えていくと述べました。

今日は、第20話のシナリオ集を参考にしながら、これらの問いについて考えていきたいと思います。

目次

第20話シナリオ集から見る「土星沖海戦」~「都市帝国決戦」

第20話シナリオ集については、過去記事で詳しく整理しました*1

この過去記事で重要な点は、

  • シナリオの第20話では、「火星沖海戦」にて、地球艦隊による波動砲攻撃と都市帝国の出現が描かれた。
  • 但し、地球艦隊による波動砲攻撃の戦術は、本編第18話のそれとは異なる、一歩進んだ感のある戦術が採用されていた。
  • 福井さんの証言によれば、「土星沖海戦には艦船が沢山出るので、白色彗星の本体を出すのはもう少し先にする予定だった」とのこと。
  • ここから考えると、土星沖海戦のシナリオは本編と同じで、「都市帝国出現」だけが後から付け加えられた可能性が高い。
  • とすれば、本来の土星沖海戦は「地球艦隊の波動砲、利き目無し」→「敗北」→「降伏勧告」→「ヤマトワープアウト」→「トランジット波動砲」という、『さらば』の筋書きを再現したものだったと考えられる。

ということです。

では「第18話は本来『さらば』における土星沖海戦の再現だった」とすると、一方の第20話シナリオはどうだったでしょうか。

第20話シナリオで重要なのは

  • 「火星沖海戦」の波動砲艦隊による一斉射で、都市帝国が出現する

という部分です。この第20話の「火星沖海戦」シナリオは、『ヤマト2』における土星沖海戦の帰趨と一致します。

ここから、『2202』は『さらばの土星沖海戦』と『ヤマト2の土星沖海戦』の両方をリメイクしようとしていたと言えるのではないでしょうか。

『2202』における『ヤマト2』の出現

本来の第18話土星沖海戦を『さらばの土星沖海戦』、シナリオにおける第20話火星沖海戦を『ヤマト2の土星沖海戦』と位置づけると、その周囲にも色々なものが見えてきます。

まず興味深いのは、第19話で描かれた「奇襲作戦」が、『ヤマト2』のそれと似通っているということです。

『ヤマト2』における「奇襲作戦」は、土星沖海戦の前段階として、ガトランティス主力艦隊の後方に控えていた空母艦隊をヤマト率いる空母艦隊が奇襲するというものでした。そして『2202』における「奇襲作戦」は、ガトランティス主力艦隊の後方に位置して合流を試みている増援艦隊を、銀河率いる地球艦隊が奇襲するというものです。その過程で、AIの判断により作戦ブラックバードが採用されるという流れ。

両者は細部こそ大きく異なりますが、概ねネタ的には共通していると言ってもいいのではないでしょうか。この「奇襲作戦」が、2202における『ヤマト2の土星沖海戦』の前段階として描かれていることや、ヤマト二番艦である銀河が艦隊を率いていることも興味深いポイントです。

さらに、銀河が「戦闘マシーン」として描かれたこと*2も。旧作において「戦闘マシーン」として描かれたのはアンドロメダでしたが、『2202』におけるアンドロメダは「戦闘マシーン」としては描写されていませんでした。

そして、第21話で「ヤマト2」のテーマが語られたこと。第19話における「ヤマト戦線離脱」、第22話における「ヤマト修理」と、その先の「デスラーとの対決」。

こうしてみると、『2202』の物語は第19話以降、『ヤマト2』へと舵を切ったと言えます。

『さらば』から『ヤマト2』へ

では、第18話までの『さらば』から第19話以降の『ヤマト2』へと切り替わったのは、どのタイミングでしょうか。

ここでタイトルに立ち返りましょう。

第18話と第19話を繋ぐもの、それは「トランジット波動砲発射失敗」シーンです。

「トランジット波動砲」というギミックは『さらば』の「渦の中心核を狙え」に対応するものです。しかし、『2202』では「渦の中心核を狙え」シーンの完全再現直前で(加藤の選択によって)裏切られます。

『さらば』リメイク的な展開を裏切り、「ヤマト戦線離脱」という『ヤマト2』的展開がスタートする。まさに『さらば』から『ヤマト2』へと切り替わるスイッチを、このシーンが担っていると言えます。

『ヤマト2』から『さらば』へ

「トランジット波動砲発射失敗」以降、『2202』は『さらば』から距離を置きました。

それでも、『さらば』は再び戻ってくると断言できます。

本編第22話の「都市帝国決戦」の作戦会議シーンでは、「トランジット波動砲」が登場しました。

「トランジット波動砲」は再び使用されるのです。しかも、作劇からして今度は失敗しないはず。

「トランジット波動砲発射失敗」がスイッチとなって『2202』は『さらば』から『ヤマト2』へ移行したとすれば、来るべき「トランジット波動砲発射成功」は「渦の中心核を狙え」の再現である以上に、再び『ヤマト2』から『さらば』へと切り替えるスイッチだと考えられます。

おわりに

今日は、第20話シナリオ集を参考に

  • 『2202』は「トランジット波動砲発射失敗」シーンを境に、『さらば』から『ヤマト2』へと移行した。
  • 『2202』は今後来るべき「トランジット波動砲発射成功」シーンを境に、再び『ヤマト2』から『さらば』へと移行すると予想される。

ということを考えてみました。

  • 原作にはない「銀河」「火星沖海戦」「ヤマトの救出」は、2202の完全オリジナルなのか。

この問いの答えとしては、

  • 「銀河」は『ヤマト2』のヤマト及びアンドロメダの役割を担う。
  • 「火星沖海戦」(シナリオ版)は、『ヤマト2』の土星沖海戦の役割を担う。
  • 「ヤマトの救出」は、2202オリジナルのストーリーと言えるが、そこで語られるテーマは『ヤマト2』と同じ。

となるでしょうか。また同じく、

  • 原作の両方に存在しながら、その詳細がいずれも異なる「土星沖海戦」と、『2202』の「土星沖海戦」との関係はどのようなものか。

という問いについても

  • 『2202』の土星沖海戦は本来『さらば』の再現である。
  • 『2202』の火星沖海戦は『ヤマト2』の再現である。

をひとまず答えにしたいと思います。

ちなみに余談ながら、興味深い点があります。

それはデスラーとの対決」の位置どりです。

デスラーとの対決」の位置は、二つの原作でそれぞれ異なります。『さらば』は土星沖海戦の前、『ヤマト2』は後です。

『2202』は一見すると、『ヤマト2』のルートを辿っているように思えます。

しかし、それだけではありません。

『さらば』と『ヤマト2』には共通点があります。

それは、どちらも「都市帝国決戦」を前にヒントを与えてくれるということです。前者は「渦の中心核」、後者は「真上と真下」。

これまで見てきたように、「渦の中心核」も『2202』にはありますよね。それも「デスラーとの対決」の後、第七章に。

デスラーとの対決」について言えば、『2202』は「ヤマト戦線離脱」以降の『ヤマト2』ルートを辿るのみならず、同時に「トランジット波動砲」=「渦の中心核」を後方へ移動させることによって『さらば』ルートをも再現しているということになります。

「トランジット波動砲」をめぐる「失敗」と「成功」は、二つの原作を持ったリメイク作品としての『2202』に、興味深い意味付けをしていることがここからも分かりますね。

 

(今日の記事とは関係ありませんが、過去記事「もしもヤマト2199に続編がなかったら」のコメントに返信しました*3