ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【ヤマト2202】第六章の「ガンダム」的操作

こんばんは。ymtetcです。

ヤマト2202の第六章は、「ガンダムっぽい」などと言われることもあります。思い返せば、ガンダムオリジンが「ヤマト2199っぽい」と言われたこともありました*1ね。

今日は「ヤマトとガンダムの違い」という部分から、どのようにして第六章は「ガンダムっぽく」なったか、その問いについてひとつ考えてみたいと思います。

目次

はじめに

ガンダムについて私は全くの素人なので、どう違うのかを語り尽くすことはできません*2

ですが、今日はこれを参考にして

 ● 言ってみれば「ヤマト」は「プロジェクトX」だと思うんです。NHKの大ヒットドキュメンタリー番組だから皆さんよくご存じだと思いますけど。中島みゆきの主題歌が流れて字幕が画面を流れるところを想像してください。「焼けただれた地球」「人類絶滅」「保証なきイスカンダルまでの旅、14万8千光年」「それでも男たちは挑んだ…」…ほら、むちゃくちゃ盛り上がるじゃないですか。貫き通してやり遂げた男たちの話という意味では、「青函トンネルを開通させた男たちの話」と全く同じことですよ。やっぱり『ガンダム』とはタッチがちょっと違うんです。福井さんは『ガンダム』を、結局はロボットの腹の中の個人に帰結する物語と分析していて、確かにそれだと「プロジェクトX」にはなりにくい。対して『ヤマト』は一つの目的を追う集団の物語。「青函トンネルを開通させた男たちの話」と「ヤマト」の話はやっぱり通じるものがあるんだと思います。

福井みんなで何かをやり遂げるというね。でも、それも懐メロとして、ただの再演奏になってしまっては意味がなくて、それなら昔の作品をもう一辺観ればいい訳で。今回は基本の部分はきちんと押さえつつ、現代に生きて働いている人たちが抱えている葛藤や苦悩を反映させながら、手本なき時代にどう生きていくかを一人ではなく全員で探っていく話にしようと。一人で探っていくのは『ガンダム』なんですよ。「ヤマト」の場合はみんなでこの艦を推進させながら目的地に向かっていく。

http://yamato2202.net/special/special1_3.html

お二人が分析している

  • 集団で乗り越えるヤマト

  • 個人で探っていく、個人に帰結するガンダム

の違いから、第六章について考えてみたいと思います。

AIによる自動化:山南にまつわる操作

第六章ではAIによる地球艦隊の自動化が描かれ、それを背景に高機動戦闘シーンが描かれました*3アンドロメダ改の搭乗員は無人艦隊の先導役*4・山南一人となりました。

この操作を行うことによって、アンドロメダ艦長の物語を、さながらモビルスーツ(MS)のパイロットのような「個人に帰結する物語」の構図で描いたのです。

艦長に押し付ける:藤堂早紀にまつわる操作

ヤマト2202には、上述のような福井さん、岡さんの「ヤマトとガンダムの違い」分析を反映した物語が描かれました。それが、第二章から第四章で描かれた「責任を艦長代理に押し付ける」という物語です。

第二章の発進シーンをよく見ると、古代が主砲発射の号令をかける直前にクルーが古代を見つめるカットがあります。このような演出と物語は、第三章の「責任を艦長代理に押し付けて」というキーマンのセリフや体調を崩す古代など、本編を通じて繰り返され継続され、「イスカンダルに旅した者が均しく背負う十字架だ」まで続きます。そして、福井さんと岡さんが上述の鼎談で述べているヤマトらしさ、の延長として、第13話にて「全員で背負う」という結論が描かれました。

鼎談のような分析を逆手にとって、なのかは分かりませんが、第六章は言うなれば「責任を全て藤堂艦長に押し付ける」物語を描きました。過程としては「全てAIに押し付ける」少数のクルー達がいて、それを真田が一喝する。そして、艦長に決断を迫る。この操作によって、銀河の物語を藤堂早紀一人の物語に押し込めて個人に帰結する物語」として描いたわけです。

おわりに:割を食った古代進

この操作にあって、割を食ったのが古代進でした。第21話においては、ヤマトの物語すら土方一人に押し付けられています。これは、作劇上の都合かと思います。本来ならば、土方のようなセリフは主人公たる古代進が言うべきでした。しかし、2199から2202を経たここまでの古代進の物語からして、彼の口からああいうセリフは出てこない。結果的に、第21話では古代の影が薄くなってしまったのです。

こうして、アンドロメダというMSのパイロットを山南に、銀河というMSのパイロットを早紀に、ヤマトというMSのパイロットを土方に、そして、ブラックバードというMSのパイロットを加藤に、といった作劇上の操作を行うことで、第六章とりわけ第21話は、個人と個人と個人と個人が入り交じりそれぞれの「個人に帰結する物語」を描いたということになります。

これが、「ガンダムっぽい」と言われる理由の一つなのではないでしょうか。

*1:CGスタジオが同じ→SPECIAL|機動戦士ガンダム THE ORIGIN 公式サイト/その他、一部2199スタッフも参加→SPECIAL|機動戦士ガンダム THE ORIGIN 公式サイト

*2:松本宇宙と富野宇宙の違いについては→『ガンダムUC』や『エウレカセブン』の世界を作った男たちが『ガンダムNT』含め50作品以上を語る! 松本零士と富野由悠季が描く宇宙の違いは? SFとの出会いとは?

*3:この戦闘シーン描写を「ガンダム的」と評する向きもあるようです。また、「第五章の戦闘シーンの方がAIっぽい」と言われることもありますが、個人的には第五章の戦闘シーンは「人が動かしているからこその規律」を描写したと解釈しておきたいと思います。

*4:『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第六章上映記念 愛の宣伝会議 ⑤ - YouTube