ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【ヤマト2202】絶望の深さは【ズォーダー】

こんばんは。ymtetcです。

今日のタイトルは、福井さんの代表作をもじってみました。福井小説は全くの専門外ですが、ヤマト2202って福井小説から読み解けたりしないのだろうか。とかなんとか思っていたり。

今日はここ数日の記事の続きですが、昨日の記事にMig様より興味深いコメント*1をいただきましたので、返信もかねてご紹介します。

(ゴレムは――引用者注)ユダヤの伝承であるゴーレム(泥から作った人造人間で、額に貼り付けてある真理(emeth)と書いてある紙のeを消すことで死(meth)ぬ。 wikiより)を基にしているのでしょう。  そしてズォーダーは、第1章の冒頭ナレーションや劇中でも盛んに「愛」を口にし、レドラウズや透子を通じて古代と加藤に、恋人と我が子の命の選択を迫ります。 古代は雪が飛び降りたので自らは選択せず、加藤は我が子の命を選択しました。なにより、ズォーダー自身の選択はゼムリア人に愚かと言われ、多くのガトランティス人、さらにサーベラーと子供まで殺されました。 自分の選択は正しかったのかを悩み、人に正解を示してほしいように見受けられます。 第7章で古代がズォーダーを説得させるためには、「恋人への愛」について行動を示す必要があるのでしょうね。古代が雪の命を選択することで、人造人間であるズォーダー自身の選択は愚かではなく、人として正当な考えであったと納得をさせることでしょうか?  単純に、ゴレムという名称の装置があり、これを起動させてガトランティス人を滅ぼすよりは、古代がズォーダーを説得させて終戦となる方が、サブタイトル「愛の戦士」に相応しいですね。  これが私の推理です。

太字に関しては、私の方でつけさせていただきました。ゴレムの元ネタも考えたことがなかったのでハッとしましたが、それ以上にハッとしたのは「自分の選択は正しかったのかを悩み、人に正解を示してほしい」という部分です。

何故ならば、今日の記事で以下に書いているように、ズォーダーの「悪魔の選択」の動機が「自分の選択は正しかったのか」という部分にあると、私は全く考えていなかったからです。このズォーダーの悩みを、今日私が以下に書いた部分と合わせてみると、一本くらい筋が通りそうな気がしています。

はじめに

第六章では、ズォーダーの諸々の動機が明らかになったわけですが、それをこんな風に評している人もいます。

「なんだ、妻子を殺された恨みかよ。スケールが小さいなぁ」と。

確かに私もそう思いましたし、それほど間違った解釈とは思いません。しかし、これではあまりにも寂しいので、少し「それっぽく」考えてたいと思います。

「絶望」

古代が「話し合うことはできないだろうか」という例の場面では、「千年も絶望した」というセリフも出てきます。この「絶望」という部分を掘り下げてみれば、「それっぽく」見えるようになるかもしれません。

この「絶望」について、私の解釈をまとめてみますと、

  • 自分への失望
  • 創造者たる人間への絶望

という感じでしょうか。それ故に「自分たちをも含む、全生命の抹殺」「新たな種の発生を待つ」に繋がってくるという解釈です。

 

人間は、自分たちを「家畜」扱いする。ズォーダーは、「家畜」扱いへの不満・疑問を持った。一方で、「愛に縛られない」ガトランティスとして、自分への期待もある。しかし、「愛からは逃れられない」自分がいた。自分に失望する。そして、人間による悪魔の選択。選んだ。自分の愛に従って、選んだ。なのに、人間は約束を破る。何故人間は自分たちガトランティスを作ったのか? 「ゼムリアの人間は傷つかない」──自分たちは、人間のエゴによって作り出された。そんな人間たちが、自分たちを虐げてきたのだ。何故アケーリアス文明は、そんな人間たちを作ったのか?

ズォーダーは、人間とガトランティスの狭間にいるからこそ、自分たちを生み出し、虐げてきた人間への絶望と、「愛から逃れられない」自分への絶望を抱えてきた。

自らの深い絶望の正しさを感じた時、決まってズォーダーはこう呟く。

「虚しい、実に虚しい」

虚しさは、自分への失望。人間への絶望。

ズォーダーが「悪魔の選択」を突きつけ、人間を滅ぼし続けてきたのは、愛から逃れられない人間に対する絶望を確かめるため。人間にそのことを分からせるため。

それはちょうど、『さらば』のそれと同じように。人間に対して、彼は突きつける。

愛の虚しさ。そして、大いなる愛を。

永遠の安息をもたらす「死」を。

 

ズォーダーがやろうとしているのは「自分を含む、自分たちをも含む、全人類の抹殺」。しかし、彼が何をしようとしているのか、本当のことを知っている人がいます。彼の最愛の女・サーベラーは、ズォーダー自身も知らなかった、彼の本当の動機を見抜いていました。

「壊すのは宇宙ではなく、あなたの凍えた心……」と。

おわりに

さて、以上が私の考えだったわけですが、悪魔の選択の動機の部分が「人間に対する絶望を確かめるため」という、極めて抽象的な表現になっています。

ですが、これをMig様の推理である「自分の選択は正しかったのか」と組み合わせると、少し整理されてきます。

いわばズォーダーは「愛に囚われない」はずなのに「愛から逃れられなかった」自分自身に裏切られ、「愛に囚われた」人間にも裏切られた。

それこそが彼の絶望であり、だから「自分の選択は正しかったのか」わからなくなっている。それを知りたいから「悪魔の選択」を突き付け、自分の絶望の通りの結末を迎えると「実に虚しい」と呟く。

Mig様の推理とは少し違う考え方かもしれませんが、おかげさまで、抽象に堕していた私の考えを整理することができました。Mig様、ありがとうございます。

*1:たまりにたまったコメント返信なのですが、あまりにもためすぎてしまったので、どこかのタイミングで一斉に行おうと考えております。ご了承ください