こんばんは。ymtetcです。
今日は上映最終日ですね。私のヤマト2202に対する想いは、おおよそ上映開始日の記事にぶつけましたので、改めて語るまでもありません*1。
願いは一つ。今後も、「宇宙戦艦ヤマト」が続きますように……
さて、今日は「森雪のキス」について考えます。
〇「森雪のキス」で、福井さんが描きたかったものは何か?
⇒「記憶がいくら失われようとも、『心』が憶えている」
(#25)
古代:沖田さん。お叱りは、そちらで受けます。
森雪:(第一艦橋に入ってくる)
古代:雪……! どうして……退艦命令を!
森雪:私が、ナビゲートします。あそこに、ヤマトを突撃させる。
古代:(驚き、ハッとする)
森雪:臨界寸前の波動エンジンをぶつけても、あの質量のものは沈められない。でも、敵がエネルギーを補給してしまう前に、時間を稼いで、一人でも多くの人を、地球から脱出させられるなら……。
古代:雪……。
森雪:私、あなたを憶えていない。でも、分かるの。あなたが、そう考えているって。
古代:雪……!
森雪:古代くん……一人じゃ無理。
発進するヤマト。
芹沢:ヤマトが、ゆく……。
藤堂:無駄にしてはならん。脱出計画を急ぐぞ!
ズォーダー:……千年前、お前は滅びの方舟を目覚めさせた。何故そんな真似ができたか分かるか? 人間だからだ。人間だから人を呪い、人を滅ぼそうとする。人間だから人間を愛し、人間を守ろうと……。
森雪:波動エンジン、内圧250%。炉心内部、臨界寸前ですが、滅びの方舟への到達は可能。
古代:(手が震える)
森雪:(古代に寄り添い、膝の上へ)
森雪:あたたかい。
古代:雪。
森雪:古代、くん……。
長めに書き起こしてみました。「森雪のキス」とは、このシーンを指します。
このシーンに対しては、「何故記憶を失っているのにキスをするのか」→「『心』が憶えているから」という会話がファンの間でも幾度か繰り広げられています。よって、今更「森雪のキス」の理由については語るまでもありません。
しかし、これを通じて福井さんが描きたかったこと、となると話は別です。今日は、この「森雪のキス」と、全く同じことを描いているエピソードを紹介します。
それが、第12話の「『繰り返す』サーベラー」です。
今作におけるサーベラーは、千年前にズォーダーが失ったオリジナル・サーベラーの複製品です。人間の「愛」によって裏切られた千年前の記憶だけを残して、滅びの方舟を動かすためだけに作られた存在。
それなのに、コピー品であるはずのサーベラーは、幾度となく「ズォーダーと愛し合っていた」頃の記憶を取り戻し、彼の野望を止めようとします。
その度に、ズォーダーは彼女を殺してきました。「これで何度目か!」とガイレーンも驚きを隠せないほどに、幾度となく彼女は記憶を取り戻していたのです。
これは何故か。最終話を観たあとなら理由が分かります。
「心」が、憶えているからなのです。
このような「記憶」と「心」を分けて描きたいという福井さんの狙いは、他のキャラクターのセリフにも表れています。
(#23)
ミル:あなたはかつて、人の想いなど、所詮脳を飛び交う電気信号(≒記憶)に過ぎないと言った。それを心や魂と呼んで重んじるのは、人が己の虚しさを慰める行為でしかないと。まだ我々には認識できない何かが、人間にはある。
(#24)
森雪:テレサ。聞こえていますか、テレサ。私は、テレザートを憶えていない。でも、知っているような気がするのです。
(#25)
テレサ:記憶は、ただの蓄積。想いが人をつくり、縁を結ぶ。
人工的に作り出された人間のコピー品に「心」は受け継がれるのか、「記憶」を失っても「心」は受け継がれるのか、といった気になる点はありますが、それは別として、福井さんの描きたかったことは一貫していることが分かります。