ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

つぶやき──『シナリオ編』と「作品考察」へのアプローチ

こんばんは。ymtetcです。

久々にブログを書いていて、感じたことがあります。

それは、ヤマト2202資料集『シナリオ編』の存在が、これまでになかったような、たくさんのことを可能にしているということです。

例えば、これです。

ymtetc.hatenablog.com

この記事では「森雪がキスをしたのは『心』が憶えているからだ」という話について、本編中の他のセリフを引用してまとめたものでした。

この話については、おおよそ的を得たものであると考えていました。本編中のセリフも根拠になり得ますし、他の方々も同様のことを仰っていたからです。

しかし、それが「福井さんが描きたかったもの」であるかどうかは必ずしも証明できていませんでした。なぜなら、上の記事の中に福井さんの言葉は出てこないからです。

『シナリオ編』は、このような「作品考察」における一つの弱点を決定的に埋めてくれる存在になりました。では、このシーンに込められた福井さんの意図を、以下「構成メモ」(2015年11月20日版)から見てみましょう。

はじめまして、奥さん。はじめまして、あなた。記憶をなくしても、魂で結び合った二人が頷き合い、大いなる和を体現する光が超巨大戦艦に近づいてゆく。光に呑まれる直前、死んだはずのサーベラーも黄金色の思念になってよみがえり、ズォーダーの魂を浄化に導く。

(『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち ‐全記録集‐ シナリオ編 COMPLETE WORLS』KADOKAWA、2019年、267頁)

「記憶をなくしても、魂で結び合った二人が頷き合い」。こうして、福井さんの言葉でシーンに込められた意図が分かる、というわけです。

このように、『シナリオ編』にはブログの記事にできそうなネタがごろごろ転がっています。

そこで、今週末は試験的にブログの更新を予定しています。

さらに今日は以下、久々にブログの記事を書く中で感じた「『作品考察』へのアプローチ」について、呟いてみたいと思います。

私はこれまで『ヤマト2202』という作品を考える上では<本編>を重要視してきました。

先ほど上に掲載した「森雪のキス」の記事もそうです。本編の情報をベースに、他の意見も参考にしつつ「ああじゃないか」「こうじゃないか」と考えて、文章にまとめる。ある意味、最もシンプルなやり方だと思います。

ですが、『シナリオ編』の登場以後は、あるいは別のアプローチも可能になるかもしれません。

それが<シナリオ・作者の意図>をベースに考える、というアプローチです。すなわち、本編については一旦脇に置いて、『シナリオ編』だけをベースに『ヤマト2202』を考え、文章にまとめる。こういったやり方も、不可能ではないのです。

『シナリオ編』には、「福井晴敏企画・構成・設定メモ」という、218ページから294ページにわたる章が設置されています。

ここには『ヤマト2202』を企画するにあたって、福井さんがこの作品に込める狙いを抽象的にまとめた「福井晴敏企画メモ」が掲載されているだけではなく、企画メモを具体化した「構成メモ」が複数のバージョンで掲載されており、ガトランティスデスラー(過去)の設定をまとめた「設定メモ」も付け加えられています。

これらの「メモ」を丹念に追っていけば、福井さんが想定した『ヤマト2202』の姿を明確化することが可能になります。というのも、福井さんは『シナリオ編』掲載のインタビューでこんなことを述べているんです。

もし、自分が単独で書いていて、羽原さんが監督でなかったのなら、また異なるものになっていたでしょうね(後略)

(前掲『シナリオ編』348頁)

アニメ作品は一人で作るものではありません。現場はシリーズ構成の独裁でもなければ、監督の独裁でもないのだと思います。ですから、良いか悪いかは別にして、「福井晴敏企画・構成・設定メモ」と本編『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』には大小の差異が存在しています。本編こそ、福井さん自身も関わった<決定版>ではあるのですが、その一方で、福井さんにとっての<本来の姿>も軽視できませんよね。

こんな風にして、『ヤマト2202』には「本編を重視して考える」か「シナリオを重視して考える」か、という二つの大きなアプローチがあると思います。

一見すると、シナリオ重視のアプローチの方が効果的なように見えます。本編も、シナリオをベースに作られているため、結局本編だけを見ていても、シナリオでの裏付けが必要になってくるからです。

ですが、シナリオだけを見ていても気が付かないことはいくつかあります。その一つの例が、私が個人的に手ごたえを感じている(笑)、この記事です。

ガミラスの現状について - ymtetcのブログ

なにせ「バーガーの登場」は羽原さんの意向で付け加えた要素なので、第一稿が掲載されている『シナリオ編』で、このあたりの記述は(私が現在読む限りでは)見られません。これは、本編を中心に考えていたからこそ、書けた記事だと思います。

とはいえ、今後は『シナリオ編』を重用して記事を書いていくことが増えていくと思います。『シナリオ編』を読むと、福井さんが『2202』に込めようとしたドラマの骨太さを感じますし、随所にシナリオの意図が本編で十分に表現できていない部分が見受けられます。それに私の中では、本編よりもシナリオの方が読んでいて面白く、感動するような内容でしたから。

 

最後に、週末の予告をします。今週末は

2月29日(土曜日)17時:「人を選ぶ『ヤマト2202』の価値判断──『国民投票』編」

3月1日(日曜日)17時:「人を選ぶ『ヤマト2202』の価値判断──『ガトランティス』編」

を投稿する予定です。リハビリ的な内容ですが、今日の「つぶやき」が随分長くなってしまったので、今から完成するかとても不安になります(笑)

これらを含めて12本くらいの記事のネタ(下書きにタイトルだけメモしたもの)が溜まっていて、『シナリオ編』の恐ろしさをひしひしと感じているところです。

私一人では到底この『シナリオ編』をポテンシャルを活かすことができないので、様々なヤマトファンによる検討が進むことを願います。。

ということでざっと調べてみたところ、いくつか先輩ブロガー様のブログがヒットしました。その素晴らしい考察もさることながら、何より続けていらっしゃることに尊敬するばかりです。私としても、毎日は難しいですが、続けていきたいと思います。