ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

「構成メモ」から見る『ヤマト2202』の『2199』要素

こんにちは。ymtetcです。

今日は、『ヤマト2202』の「構成メモ」から『ヤマト2199』に関係する要素を抜き出す、という作業ノート的記事を書いていきます。

「続編」としては不思議なことに、『ヤマト2202』にとって『2199』ファンは必ずしもメインターゲットではありませんでした。とはいえ、売り手にとっては前作たる『2199』との連続性は必要不可欠であり、プロデューサー的思考を得意とする福井さんの中に、『2199』との連続性という意識が全くなかったとは思えません(だからこそ、2199ファンの岡さんと手を組んだ)。

そこで今日は、本編には盛り込まれなかったものを中心に、大きなオマージュから、細かな設定の引き継ぎまでを見ていきたいと思います。

またそれぞれに私から簡単なコメントを添えています。そちらを読むにあたっては、予め、私ymtetcが「羽原・小林・福井体制で描かれた映像作品としての『2202』をあまり高くは評価せず」「福井・岡体制で書かれた『2202』シナリオを高く評価している」ことを承知していただきたく思います。

「『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』構成メモ➀」(2015年7月31日)

  • 波動コアの装填

徳川ら旧クルーの協力を得て、三年ぶりに波動コアが装填されるヤマト。

「第一章 西暦2202年(一・二話)」『シナリオ編』227頁。

『2199』新設定「波動コア」。波動コアの設定は頻出。

  • ヤマトクルーの憤り

ヤマトの大航海はこんな地球を取り戻すためのものだったのであろうか。他の星の人間たちとも手を取り合える、その可能性を携えてヤマトは帰ってきたのではなかったか?

同上、『シナリオ編』228頁。

『2199』のメインテーマ「たとえ生まれた星が違っていても俺たちは理解しあえる」が、”異星人への信頼”と逆行した政策である波動砲艦隊への、ヤマトクルーの憤りの原点になっている。

一万隻もの波動砲艦が進宙し、最強無比の力を手に入れるその時まで……。

それは、イスカンダルのスターシャが語った過去の破滅の再現。

「第二章 未知への発進(三~六話)」『シナリオ編』231頁。

時間断層で建造中の波動砲大艦隊を目の当たりにした古代は、『2199』第24話で語られたイスカンダルの過去を思い出し、強い危機感を覚える。

  • 異星人とも理解しあえる

助けを求める誰かのため、すべての星間国家が手に手を取れる可能性を示すために、ヤマトは再び起たねばならない。

同上。

古代進率いる宇宙戦艦ヤマトは、「異星人とも理解しあえる」ことを証明するために再び飛び立つ。

  • 南部の覚悟

実家が時間断層をめぐる汚職事件に深く関わっていたことを知り、勘当覚悟で乗り組んできた南部。

同上。

南部の実家・南部重工が、時間断層を巡る汚職事件に関与。波動砲艦隊の整備にも関係か。

  • 古代への想い

いまだ古代への想いを捨てきれずにいる自分に気づいてしまう玲。

同上。

『2199』設定の継続。なお、「構成メモ」で玲はキーマンに兄の影を重ねる。

  • 百合亜のラジオ

岬百合亜は軍の広報局かなにかでラジオ放送を任されていて、やはり地上からの援護組とする

同上。

『2199』設定のラジオを小ネタ的にインサートする案。なお直後、岬と星名は「ヤマトの空気にそもそもそぐわない」とdisられる。「彼らを艦から降ろした分、徳川やガミラスクルー、斉藤ら空間騎兵隊の面々の描写を厚くする」という理屈は理解できるが、率直に言ってかわいそう。

  • 『2199』とは関係がないが 1

地球からはアンドロメダと、完成したばかりの主力戦艦、護衛艦からなる初の波動砲艦隊がヤマト追撃のために発進。

『シナリオ編』232頁。

こういった艦隊編成ならば、ある程度『2199』ファンを満足させられたのではないか。

  • 構成上のオマージュ

ここは2199に照らし合わせれば冥王星基地潰滅作戦に相当する見せ場としたい

同上。

第11番惑星救出作戦のこと。戦闘シーンのクオリティを比較してはいけない。

スターシャへの愛に狂い、自国の民をも殺しかけた己の醜さを、ズォーダーの中に見出して自己の人格を矯正してゆくわけだ。

「第四章以降」『シナリオ編』234頁。 

『2202』なりに、『2199』を補完しようとする試み。デスラーについては、「設定メモ」が詳しい。

「『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』構成メモ②」(2015年)

  • 第六話~第九話まで。該当なし。

本編第八話には「篠原の偵察」などの『2199』要素が盛り込まれている。⇒「2202第8話Aパートは再評価されるべきだと思う - ymtetcのブログ

「『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』構成メモ③」(2015年11月4日)

地球に戻って襲来に備えるということは、ヤマトを波動砲艦隊に加えるのをよしとするということ。そんなのは嫌だと南部が言えば、もうそんなことを言っている場合ではないと太田が言う。

「第十話」『シナリオ編』246頁。

アンチ波動砲キャラへと成長した南部。「でも、もうそんなこと言ってられないですよね……」と気まずそうに言う太田の顔が浮かぶ。

「『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』構成メモ④」(2015年11月20日

  • 種まく方舟と対をなす

あの白色彗星は、遠い昔に古代アケーリアス人が残したもの。その目的は、宇宙に播かれた人型知的生命の種が悪しき進化を遂げた時、それらを残らず刈り取ることにある。

「第十四話」『シナリオ編』254頁。

本編にも登場した設定。「星巡る方舟」として知られる「恒星間播種船」と対をなす「滅びの方舟」。

デスラー……呆然と呟いた古代の顔を、デスラーは忘れていない。先の大戦で、ヤマトに白兵戦を仕掛けた際に見かけた顔だ。あの時の自分は冷静さを失い、愛に狂っていたが、いまは違う。

『シナリオ編』255頁。

『2199』第25話の出来事を思い出すデスラー

  • 異星人とも……

我々は、人間は、あらゆる意味で独りではない。異星の者たちとでさえ”縁”の力で結び合っている。そう、それがかつての宿敵であっても――。是非もなく、それを再確認するためにヤマトはテレザートに呼ばれたのかもしれない。宇宙の愛、か……と真田が呟き、それを否定するガトランティスとの決戦を全員が各々に覚悟する。彼ら愛の戦士たちを乗せ、ヤマトは地球へ進路を取った。

「第十六話」『シナリオ編』259頁。

例え、生まれた星が違っていても……。

『2199』で何度も語られたテーマが、デスラーとキーマンのドラマを通じて再話される。その『2199』的命題を否定する悪役としてガトランティスが描かれていることも高く評価したいが、『さらば』のセリフである「宇宙の愛か……」も回収されていることにも注目したい。ここでは『2199』と『さらば』が重なっている。

「構成メモ」における第十六話ラストは、『2199』の続編であり『さらば』リメイクでもあった『2202』を象徴するシーンだった。本編でも、(『2199』第二十四話の「約束してください」「お約束します」のように)「生まれた星が違っていても理解しあえる」という『2199』のセリフをリフレインしてもよかったのではないか。

  • 『2199』とは関係ないが 2

同じ頃、地球からアンドロメダを旗艦とする波動砲艦隊が出撃する。重力変動から、白色彗星のワープアウト地点が割り出せたからだ。主力戦艦や護衛艦、パトロール艦、空母も含めた大艦隊。

「第十七話」『シナリオ編』260頁。

『2199』ファン、『ヤマト2』ファンを満足させられそうな艦隊編成。

  • 『2199』とは関係ないが 3

その圧倒的な数を担保に、四方から押し包むように地球圏への侵攻を開始するバルゼー艦隊。対して地球軍は、主戦力を正面に展開する一方、枝分かれした敵艦隊を各個に側面から奇襲する手に出る。

「第十八話」『シナリオ編』260頁。

それなりに手の込んだ艦隊戦を想定していたと思われる記述が。 

「『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』構成メモ⑤」(2016年5月20日

時間断層がもたらした果てなき軍拡。イスカンダルの歴史を再現するかのごとき波動砲艦隊。

「第二十三話」『シナリオ編』272頁。

ミルに向きあい、地球の波動砲艦隊とイスカンダルの過去を重ね合わせる古代。「人間は繰り返す」という意味で、『2202』における波動砲艦隊の異常さは『2199』におけるイスカンダルの過去と重ねられていたということ。

「『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』構成メモ⑥」(2016年5月20日

  • 山本明生への憧れ

(略)沢村がフィニッシュを決めるべく前に出るが、仲間の仇討ちにこだわる彼は肩に力が入り過ぎている。千載一遇の掘削弾投下はあえなく失敗に終わり、代わりに前に出た篠原が生還を期さない爆撃コースに機を委ねた。

恨みだけで飛ぶな、おれたちはもっと自由に飛べるのだから……と沢村に語り掛ける篠原の目には、玲の亡兄の幻が映っている。

「第二十四話」『シナリオ編』278頁。

憧れだった山本明生を思い出す篠原。『2199』第18話ネタ。 

  • 『2199』第18話の逆?

強力な爆弾――波動掘削弾は、まだ一発だけ残っている。篠原機に搭載された不発弾だ。(略)行動しようとした古代の隙をついて、キーマンが篠原機を奪って発進してしまっていた。

「第二十五話」『シナリオ編』280頁。

恐らく偶然だが、キーマンが篠原のコスモタイガーに乗る構図。キーマンの乗機はツヴァルケ。コスモファルコンが乗機だった篠原は、『2199』第18話でツヴァルケに乗った。

  • 滅びの方舟と対をなす?

我々の宇宙にテレサを引き出すための器……ヤマトが選ばれた真の理由は、この瞬間にこそあったのかもしれない。真田の言葉に、煌々と輝くヤマトを見つめる島たち。テレサと”縁”で結ばれた艦――それは”滅びの方舟”の対となる存在、人が人のために編み上げた命の方舟か。

『シナリオ編』284頁。

私にはまだ意図がよく分からない。ただ、超巨大戦艦とヤマトを対比させようという意図は伝わる。

  • 以降、該当なし。

おわりに

『2202』の「構成メモ」から『2199』の要素を見つける。

この作業は、”『2199』と『2202』の連続性”を見つけるために始めました。

ですが正直なところ、「構成メモ」を追う限りでは、『2202』に『2199』の要素が積極的に盛り込まれていたとは言えません。あくまで『2202』にとってはのメインは『さらば』であり、『2199』要素は”続編としての体裁を保つためのフィルター”として、あるいは”便利なネタ”として使用されていた感も否めません。

事実、『2199』ファンが一定の愛着を持っていたであろうキャラクターの一部は「ヤマトの空気にそぐわない」という、ファンとしてはあまり心地よくない理由でメイン・ドラマから排除されたのです。推測ではありますが、福井さんが岡さんを『2202』チームに組み込んだのも、自分自身だけでは『2199』キャラを前作との連続性をもって動かす自信がなかったのではないでしょうか。だから『2199』に詳しい岡さんを参謀として招いた……とすれば、その狙いがピンときます。

とはいえ、決して一概に”『2202』は『2199』を否定していた”とも言いきれません。

前向きな気づきもありました。

それが『2202』シナリオに盛り込まれていた『2199』のテーマ「相互理解」です。

ここから、むしろ『2202』は『2199』を否定していなかった、と考えます。

これについては、次回の記事で考えていきたいと思います。