こんにちは。ymtetcです。
先日(6月10日)、ついに『宇宙戦艦ヤマトNEXT スターブレイザーズΛ』が始まりました。毎月第二金曜日に公開で、次回は7月10日とのことです。
ひとまず読む前に、本作に向きあう上での問いを念頭においておきたいと思います。
それは単純に、「どんな作品か」という問いです。「『宇宙戦艦ヤマト』として、どんな作品か」という問いは無意識にでも浮かんできますから、敢えて意識的に、その先入観を取り払う試みをしたいと思います。言い換えるならば、『宇宙戦艦ヤマト』以外の作品に向きあう時と同じような出発点で本作に向きあう、ということですね。
ということで、第1話に際しては「第1話として、どう評価するか」という問いを立てておきます*1。なるべく先入観を取り払って読み進めていくつもりです。
<第一話:世界の終わりだって遠くから見れば美しく見える>
結論から言えば、ほぼパーフェクトな第1話だったのではないでしょうか。
主人公であるユウ・ヤマトの視点から始まる物語は、まず6年前の「美しいショー」を描きます。地球はこの出来事で、10億人の命を失います。そして、この悲劇の中心にいたユウの母親は、「二度と地球に戻ってくることはなかった」。
導入はこのように描かれました。21世紀末の地球は既に我々の知る地球の姿ではなく(我々がよく知る別宇宙の2199年の地球の姿でもなく)、人も自然も、6年前の「セイレーネス」の出現によって大きな影響を受けているということが分かります。
物語はそこから時間軸を戻し、主人公であるユウと、物語に大きく関わってくるであろうキャラクターたちとの出会いを描きます。
- ヴィマーナ(対セイレーネス前線基地)の保全ロボである”ミフネ”、
- ナーフディス(対セイレーネス艦隊)マーク2のトップネス(専属搭乗者)であり、ユウの「ゲームメイト」でもある”レイン・ミズーリ”、
- ナーフディス(対セイレーネス艦隊)作戦部人的資源管理官である”アビー・ヤン”、
- レインも知らないという謎の女性”リンネ・アイギス”
との出会い。
特に太字で記したキャラクターは今後も中心になってきそうだと感じた存在です。
また、それ以外にも、
- ナーフディス(対セイレーネス艦隊)総司令”カルロス・ジョーンズ”、
- ナーフディス(対セイレーネス艦隊)マーク1のトップネス(専属搭乗者)である”ニーナ・ネルソン”、
- ナーフディス(対セイレーネス艦隊)マーク3のトップネス(専属搭乗者)である”ヒューゴー・リシュリュー”、
- ナーフディス(対セイレーネス艦隊)マーク4のトップネス(専属搭乗者)である”マリナ・フレーザー”、
- ナーフディス(対セイレーネス艦隊)マーク5のトップネス(専属搭乗者)である”アイシャ・メジディエ”、
といったキャラクターたちが登場しました。
特に司令官のカルロス・ジョーンズは、第1話を読んでも第2話を読んでも「怪しい」、というか、色々と含んだところのあるキャラクターに見えました。
また、それぞれのキャラクター名(ネルソン・ミズーリ・リシュリュー・フレーザー・メジディエ・ヤマト)は実在の艦艇の名をベースにしていることが分かりますね。
その分、”アイギス”の名を持つ謎の女性リンネは、実在の艦艇名ではなく、何らかの特別な存在として構想されていることが分かります。
ちなみに”アイギス”とは、”ギリシア神話に登場する防具”であり*2、皆さまご存じ「イージス艦」の「イージス」の語源となったギリシャ語です。第2話の戦闘でマーク7たるリンネが担った役割を思えば、なるほどど思わされる命名です。また、”リンネ”は「輪廻」を思わせてくれます。
第1話では、この他にも主人公であるユウの生い立ちも少し明かされました。
ユウは冒頭(6年前)、戦艦大和と思しきシルエットを持つ軍艦を持っています。また、実家はどうやら「鮨やまと」を経営しているようです。この「大和=やまと=ヤマト」という生い立ちが意味を持ってくるのかこないのか。「ヤマトミュージアム」なる施設の存在にも(小ネタか伏線か)言及されています。この辺りがどんな意味を持ってくるのかは、気になる点ですね。
そしてユウの母親は、6年前の「ショー」の中心となった「超巨大加速器ディヤウス」の研究主任。ちなみにディヤウスとは、古代インドの聖典・ヴェーダの天空神とされています*3。
また、突如として謎の巨大生命体セイレーネスが出現した6年前の悲劇は、地球では「ディヤウス」の研究そのものがその原因ではないかと噂されています。
ユウは自分の母親がこの悲劇の原因ではないか?という疑心と、そんなはずはないと母を信じる心の狭間で苦しんでいるように見えます。
そして重要なのが、ユウは「地球なんか大嫌いだ」「アイツらみんな死ねばいいのに」と語っていることです。ユウはナーフディス(対セイレーネス艦隊)に加入したことで名目上地球人類を守るために戦うことになるのですが、彼自身が戦う動機は恐らく地球人類を守ることにはなく、あの6年前の出来事、母親を失ったあの事件にあります。6年前の出来事の真相を解き明かしたいのか、母親にもう一度会いたいのか、母親は悪くないということを解き明かしたいのか、この辺りはまだ分かりませんが、いずれにせよユウは個人的な動機から戦っている、という点は抑えておきたいところです。
もちろん、今後明らかになってくることの方が多いとは思いますが、ユウの経験、そしてユウが第2話時点で戦う動機のようなものは、十分語られたかと思います。
また第1話では、「スターセイラー」など本作を支える世界観の説明も盛り込まれていました。
「スターセイラー」とはトップネス(専属搭乗者)を選抜するためのゲームで、冒頭ユウがプレイしているものが、それです。そして、スターセイラーのトップランカーが木星に集められ、テストを受けているシーンが描かれましたね。ゲームのキャッチコピーは”世界中の仲間と共に人類の未来を救え‼”。ゲームのプレイヤーにも、トップネスを選抜するというゲームの目的が周知されていることが分かります。
また、本作の肝となる「時空結晶体」。
SF的な説明は専門家に委ねるとしても、本編では、セイレーネスはこの「時空結晶体」に反応してこの宇宙に現われているかもしれない(そういう意見がある)、ということが示唆されています。このシーンです。
カルロス:セイレーネスはこちらの動きを察知したと推測される
リンネ:ダウト!
リンネ:時空結晶体を兵器転用した戦艦だろーが… ここに時空結晶体のコピーがいくつあると思ってんだテメー…
ユウの母親の研究テーマも「時空結晶体」とのことで、6年前の出来事とも密接に関わっている可能性がありそうです。このあたりは今後明かされていくはずなので、読み進めて理解をしていきたいと思います。
そして第1話はセイレーネスの出現でエンド。これが、次回への引きになります。
世界観を説明しつつ、キャラクターを紹介しつつ、伏線のようなものも残しつつ。
やはり振り返ってみても、ほぼパーフェクトな第1話だったと私は考えます。
最後に私の雑感です。
第1話にしても第2話にしても、SF用語がふんだんに盛り込まれているようです。一見するととっつきにくそうにも見えるのですが、適宜セリフでスマートに説明が付加されており、説明も非常に自然かつ簡潔で分かりやすかった印象です。
私やSFや科学は専門ではないので不安でしたが、問題なく読めましたね。SFや科学に詳しくなくてもとっつきやすい……というよりは、そこからさらに一歩進んでSFに全く詳しくなくても大丈夫なように物語が組み立てられており、「SFファン向けかな?」と思っていた事前の想像よりも、かなり普遍性が確保されているなと感じました。
もちろん、SF作品としてどう評価すべきかはSFファンの評価を待ちたいと思いますが、私自身は”SFモノ”の作品として、ワクワクしながら読むことができましたね。
ただ横文字が多く、非常に苦労しました(笑)。今回”トップネス(専属搭乗者)”のようになるべく意味を添えて書きましたが、それは途中で意味を忘れないようにするためです。この辺りは慣れていくしかないのかなと思います。
今日は第1話を中心にしつつ、今回公開された『宇宙戦艦ヤマトNEXT スターブレイザーズΛ』の雑感を述べました。第2話についてもまとめられる部分はまとめていきたいと考えておりますが、これはやってみなければわかりません。現状、SF設定やその方面に深く入り込んでいくことが私にできないのが、もどかしいですね。
とはいえ繰り返しになりますが、本作はSFに精通していないからといって楽しめないという代物ではありません。むしろSFに精通しておらずとも楽しめるものと思いました。
最後に『宇宙戦艦ヤマト』の文脈からお話をすれば、もしかすると、保守的なファンの方からは不満もあるかもしれません。また、『ヤマト』には様々なファンの方がいらっしゃいますから、シンプルに本作の内容に不満を覚えておられる方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、本作の一番の問題は、事前の宣伝に力が入っていなかったことです(笑)。公開されてからいくつかの記事は出ましたが、事前の宣伝は作者の吾嬬先生に丸投げの状態でした。
ですから、とにかく我々は本作を話題にしましょう。「面白い」でも「つまんない」でも「あー」でも「いー」でも何でもいいと思います。とにかく話題にする。コミックWebNewTypeには「感想をツイートする」ボタンがありますので、ツイッターをされている方はとにかくこれを押して呟きましょう。
現状であれば、恐らく『宇宙戦艦ヤマト』のファンと吾嬬先生のファンにしか読まれません。もっと読者層を広げて議論が深まっていくことが、『宇宙戦艦ヤマト』の未来のためにも大切なことだと私は思います。
とにかく、とにかく話題にすることが重要ですね。
*1:テレビアニメであれば、「第3話(中盤の起点)としてどう評価するか」「第6話(折り返し地点)としてどうか」「第13話(折り返し地点もしくは最終回)としてどうか」などといった個別の論点があるのですが、それをそのままコミックに応用はできないと思います。
*2:ソースはお察し⇒
*3:お察し2:ディヤウス - Wikipedia