ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

『2202』は「『2199』の2期」ではなかった問題

こんにちは。ymtetcです。

ブログを休止していた昨年、色々なアニメを観るようになりました*1。それまでは、福井さんの言う「普段はアニメを観ないけれど『ヤマト』なら観る」層だった私にとっては、一つの大きな転換点でした。

それから1年が経ち、様々な引き出しが増えてきた中で、私が一つ感じていることがあります。それは、「私は基本的に、2期の方が好き」ということです。

「普段アニメを観る人たち」の間で有名な作品というといくつかあります。大抵の場合、こういった作品には「2期」と呼ばれる続編、もしくは派生作品があります。

実際のところ、世間的には「1期」と呼ばれる方が評価は高いことの方が多いです。ちょうど、『宇宙戦艦ヤマト』(1974)と『さらば宇宙戦艦ヤマト』の関係を思い出していただければいいかもしれません。やはり、新しい世界を切り開いた「初代」が最も高く評価されるのですね。

ところが私自身のフィーリングはどうか。私はどうしても「2期」の方がお気に入り、むしろ「1期」の最初の頃はモヤモヤしながら観ていた記憶の方が強いのです。

初めは、「2期の方が自分の中で、キャラクターや世界観への愛着が深まっているから気に入るのかな」と考えていました。ですが仮にそうであれば、再度「1期」を観返した際は、「2期」と同じように「1期」を気に入るはずです。

私はそうではなかった。これについて考えていくと、『2202』は、世間的にはともかく私の中では、非常にもったいないことをした作品のようにも思えてきたのです。

作り手自身の迷い

「『宇宙戦艦ヤマト2199』を観る」と題して『2199』を振り返っている現在、私が繰り返し用いている言葉があります。それが、「迷い」です。

『2199』第1話ですが、特にAパート部分において、セリフの数と演出のテンポが一致していない印象を受けました。例えば旧作『宇宙戦艦ヤマト』と同じように演出するのであれば、冒頭の冥王星における戦いは、どちらかと言えば”静”の演出の方がメインに据えられるはずです。あるいは現代アニメ的にスピード感とスペクタクルをつくり出すのであれば、個々のセリフ間を詰めて戦闘シーンは派手にカメラを動かし、ミリタリー用語運用の”かっこよさ”や、地球艦隊が殲滅されてゆくパニック感も強調されるでしょう。『2199』の冒頭にはその双方が中途半端に盛り込まれています。ここが、私が「迷い」を感じたポイントです。

スランプではなく/#1『宇宙戦艦ヤマト2199』を観る メモ書き - ymtetcのブログ

私はこの「作り手の迷い」こそが、私が「2期」を気に入る最大の理由だと考えます。

すなわち、私自身がアニメの世界観に慣れるとほぼ同時期に、作り手自身も「この作品はこの方向性で行く」と「迷いなく」作品を作れるようになる。そして完結後、改めて作り手が「1期」の魅力を整理して、「2期」では第1話から存分に魅力を発揮する。

その結果、私にとっては「第1話から最終話までお気に入り」の「2期」が完成する。こういった論理です。

具体的な事例:『響け! ユーフォニアム』『てーきゅう

長期連載の漫画ですと、第1話と最新話の絵柄が全然違う、なんてことはよくありますよね。キャラクター性が異なることもしばしばあります。

では、アニメとして何か具体的な事例はないか。探してみました。

一つは『響け! ユーフォニアム』(2015年)です。ソースはwikiです。

絵コンテ・演出を山田が担当した1話や石原の担当回である2話など、初期の話数ではコミカルな演出も目立っていたが、作品全体としてはリアルな青春ドラマとしてシリアス寄りの作風に仕上がっている[24]。制作開始当時、監督の石原や脚本の花田十輝がよりコミカルな作風も視野に入れていたのに対して、音響監督鶴岡陽太は当初からリアリティ重視の演出を志向しており、石原は本作の方向性を見定めたのは最初のアフレコ時だったと述べている[25]。脚本の花田は第5話から第8話の時点でシナリオ執筆の方針が定まったと語っている[25]

響け! ユーフォニアム - Wikipedia

まさに「石原・花田案」と「鶴岡案」の間の「迷い」があったようですね。

そして、もう一つ。こちらは公式で動画が上がっているので紹介します。

てーきゅう3期 第28面 先輩とシザーハンズ

https://www.youtube.com/watch?v=0xgZaLB1jsE

お時間ある方はどうぞ。『てーきゅう』はマシンガントークが売りのショートアニメですが、初めからここまでの早口だったかと言えばそうではなく、「1期」では

てーきゅう 第1面 先輩と一期一会』

https://www.youtube.com/watch?v=s4haH0CAK48

コメント欄で「速さが圧倒的に足りない」「1.25倍速がちょうどいい」などと指摘されています。

「2期」はそもそも、「1期」がヒットしなければ存在しません。すなわち、”「迷い」を振り切って完成させた「1期」が世に受け入れられた”、との事実が作り手の認識の中にはあります。であれば、もう「迷い」は要りませんよね。「1期」の魅力を整理して、より洗練させて「2期」を作ればよいのです。

『2199』の2期が観たかった

この文脈で考えると、一つの事実に辿り着きます。

「2期」のスタッフは、「1期」と同じスタッフでなければ意味がない。

この事実です。ただし、「私が『2期』として『1期』以上に作品を気に入るためには」との限定的な話ということには留意していただければと考えます。

あくまで空想でしかありませんが、もし仮に、『2199』のスタッフが継続した「『2199』の2期」が登場していたならば、『2199』ファンだった私にとっては、『2199』以上に魅力的な『宇宙戦艦ヤマト』を観ることになっていたかもしれません。

 

これは、あくまで私自身の論理です。

そして、何より『2199』が『宇宙戦艦ヤマト』であること。『2199』から『2202』へのスタッフ交替は、『2199』が『宇宙戦艦ヤマト』だったからこその出来事だったと考えます。

あり得ない話ですが、『宇宙戦艦ヤマト2199』が『宇宙戦艦ヤマト』でなかったら、(『けものフレンズ』のような経緯を辿りでもしない限りは)当然のように『2199』スタッフが続編も続投をしていたことでしょう。

ですが言うまでもなく、『2199』は『宇宙戦艦ヤマト』です。『宇宙戦艦ヤマト』であるが故に、「もっとやれるはずだ」「こんなものではない」「こういう作風ではない」と考える人々が現れ、『2199』は『2202』へと「軌道修正」(『2202』の方向性に舵を切った人々から見れば「修正」)されたわけです。

『2202』が嫌いなのではない

もちろん、何度もこのブログで書いてきましたように、私は『2202』も(種々の問題点はあれど)好きです。しかも『2199』ファンにしては珍しく(?)、『2202』は「『2199』の続編」だと考えています。ですが、「『2199』の2期」ではないとも考えています。微妙な違いなんですが、私の中では「劇中人物の連続性があるから続編である」「作風の連続性がないから2期ではない」と整理しています。

さらには、『宇宙戦艦ヤマト』の未来を考えて「『2199』後」の作品を考えた時に、『2202』の路線が一つの有力な選択肢となることにも納得はしています(小林さんをめぐって色々とあったのは誤算だったでしょうが)。福井晴敏を起用する実験的な試みも面白いと思っています。

ですがその一方、『2199』を楽しんで観ていた人間としては、また他作品の「2期」を「1期」以上に楽しんで観ている人間としては、存在していたかもしれない、存在していたとしたら『2199』以上に気に入って観ていたかもしれない「『2199』の2期」の存在にも、多少は想いを馳せたくなるものです。

さて、先ほど「2期」と「続編」を区別しましたが、これはあまり私が深く考えずに定義したものです。実際のところ「続編」は「2期」以降を含む概念として用いられているようですね。つまり、「3期」も「4期」も「続編」なのです。また調べてみると、「2期」であっても「続編」ではない作品もあるようですし*2、劇場版の続編はテレビではないので、「2期」(=セカンドシーズン)にはならないそうです。ここで使われた「2期」や「続編」は、あくまで独自の用語として処理していただければと思います。

さて、この「2期」と「続編」の区別で言えば、『2205』は「『2202』の2期」だと言えるでしょう(福井晴敏・岡秀樹の続投)。私は『2202』を「『2199』の2期」として楽しむことができなかった反面、きっと『2205』は「『2202』の2期」として楽しむことになる(間違っても「『2199』の3期」ではない)。

何とも複雑な気持ちを抱きますね。

*1:もちろんアニメ以外の娯楽作品もよく観るようになりましたが、このブログと関連する部分で言うと、やはりアニメです。

*2:引用:タイトル通り「りぴーと」ということで、1期で過ごした春夏秋冬をより深く掘り下げた構成になっています。「2期の1話は、1期1話の前の話」「2期の2話は、1期2話の前の話」といったように、大まかに1期の合間に挟み込むことのできるストーリー構成になっているのですが、原作マンガのさまざまなエピソードを組み合わせてシナリオを作っていることもあり、その時の人間関係や季節感、時系列などに矛盾ができるだけ発生しないよう心がけています。

アニメ質問状:「のんのんびより りぴーと」 2期の「にゃんぱすー」は自然にさらっと - MANTANWEB(まんたんウェブ)