こんにちは。ymtetcです。
今日は『2199』第4話を振り返った際のメモ書きを公開します。
プロットの美しさ
ネットフリックスで配信されているのはテレビ版です。故に本編に「命落とすな敵落とせ」はありませんが、アバンパートにはナレーションがあります。
このアバンパートでは、”『2199』はどんな話か?”が端的に語られています。
西暦、2199年。地球は、ガミラスとの戦いに敗れ、人類滅亡まであと1年と迫っていた。国連宇宙軍は密かに、恒星間宇宙船《ヤマト》を開発。大マゼラン銀河にある惑星・イスカンダルに、地球環境の再生システムを受け取りに行くのである。宇宙戦艦ヤマトは、ついに十六万八千光年の大航海へと旅立った。
『2199』のプロットは言うまでもなく、旧『宇宙戦艦ヤマト』から引き継いだもの。それ故に、とても「古典的名作」感のあるあらすじに仕上がっています。
このように、『2199』は(「今っぽさ」よりも)こういった「名作っぽさ」を強調した方が新規層を惹きつけたのではないか……と、最近考えているところです*1。
古代と島の対立
第4話ではいきなり、古代と島の対立が描かれます。二人の主張はこうです。
- 古代進:冥王星へ向かうべき(兄の仇を取りたい?)。後顧の憂いを絶つ意味で、冥王星基地は叩いておくべきだ。
- 島大介:冥王星へ向かうべきではない。航海日程に余裕はなく、最短ルートで太陽圏を脱出するべきだ。
最中、相原が土星の衛星・エンケラドゥスからの救難信号をキャッチ。二人の対立はさらに発展します。
本編では、土星が古代案(冥王星攻略)とも島案(最短ルートでの太陽圏脱出)とも異なる方向にあると語られています。当時「これは正しいのか?」とファンの間で話題になっていたような記憶がありますが、結局どうだったんでしょうか……。
結局ヤマトは、エンジントラブルの修理のため(「コスモナイト90」の補給のため)、エンケラドゥスへと向かうことになります。
古代の真意
次は食堂です。先ほど口論をした古代と島が共に食事をします。
古代は主張の真意を語ります。救助そのものに反対したわけではない、と。これに島が「冥王星を叩きたい気持ちは分かる」と応じますが、古代は否定も肯定もしません(故に、古代が兄の仇をとりたいのかは本編では不明瞭)。
島は古代に、自分の父親が船乗りだったこと、そして幼い頃から「船乗りの心がけ」を教えられ、父親に憧れて育ってきたことを明かします。これに対して古代が拳を差し出したのは、先ほどの対立が、互いの「大切」が交差した故の結果だったことに気づいたからなのかもしれません。
そういえば、『2199』第4話のこの対立構図は『2202』にも引用されましたよね。
- 古代進:テレザートへ向かうべき。船乗りが救難信号を見捨てていいはずがない。
- 島大介:テレザートへ向かうべきではない。もっと現実を見るべき。
こんな風に。敢えて入れ替えてある辺り、心憎い演出です。
古代は、島の「幻」に父が登場したことを知りながら、「お前の親父さんだって(そう言ったはずだ)」と訴えかけています。説得としてはなかなかズルい(=情に訴える)手法を使っていますね(笑)。
「ディテール」たち
ヤマトはエンケラドゥスへと向かいます。この降下シーケンスがとても『ヤマト』っぽく、そして現代風に作り変えられていて、雰囲気がよいです。
沖田:エンケラドゥスに上陸する。降下始め!
島:進入角よし。両舷前進微速。赤15。下げ舵16。
(降下するヤマト)
島:艦首やや下げ。接岸準備。
太田:準備よし。
(停止するヤマト)
ここは丁寧に時間をかけて描かれており、スピード感を演出した第3話からの緩急が効いています。
その後は榎本さんの台詞やメディックの三人のやり取りを通じ、キャラクター(ここでは、古代進)に焦点を当てていきます。こちらも第3話から「一歩進んだ」感が出ています。
またもう一つ、『2199』のディテールが発揮されている場面が第4話にはありました。
メディックの三人に危機が訪れ、相原、南部、岬のセリフが矢継ぎ早に続いていきます。「バッカヤロー」という榎本さんの台詞が緩急を利かせています。
そして山本の独断専行ですが、この時の名もなきクルーの台詞がいいんです。
「ちょっと! 発艦命令下りたのかよ!」
些細なセリフではあります。ただ、これがとてもいい。第一艦橋から末端(?)の名もなきクルーまで、「上」から「下」までの上意下達のシステムが存在していることが、たったのこの一言で表現できているんですね。これを「ディテール」と呼ぶのだと私は思います。
そういえば
雪を連れ去ろうとするガミロイドの後ろで上がる水柱は、エンケラドゥス降下前の真田のセリフ「間欠泉のような水の噴出」が回収されているのですね。今さら気づきました(笑)。
総評
第4話はディテール、演出、全てにおいてクオリティの高い、『2199』全体の中でも質の高い回の一つでした。
ただ一点気になるのは、「地球をゆきかぜのようにしたくはないな」のセリフ。
これは旧作においては、ある意味で古代と沖田の対立の一つの着地点に位置づけられます。旧作ほど古代の兄に対する想いや沖田との対立が描かれていない『2199』は、同じセリフを使っていながらも、仕掛けとしては少し物足りません。
ただ、第4話単体で考えれば、辛うじて冒頭で、「古代の兄への想い」が「冥王星に行きたい」との主張として描かれていると解釈することもできます。
ギリギリのところで、『2199』は「地球をゆきかぜのようにしたくはないな」とのセリフをなんとか機能させた、と言えるかもしれません。
ちなみに、今回に関してもコミカライズ版『2199』の改変が上手かった。これについては記事を改めたいと思います。
次回は『2199』本編とコミカライズの違いに着目しながら、「地球をゆきかぜのようにしたくはないな」に至るまでの古代の物語を簡単に追いかけてみます。