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交差する過去と現在:第7話『スターブレイザーズΛ』

こんにちは。ymtetcです。

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『Λ』第7話を読みました。読んで最初に思ったのは「すげー」でした。『Λ』ってこんな話もあるのか!と。では今回も、自分なりに『Λ』を考えてみます。

吾嬬竜孝宇宙戦艦ヤマトNEXT スターブレイザーズΛ』第7話「第一番目の適合者」

〇振り返りメモ

前回の例にならい*1、まずはストーリーを振り返っておきましょう。今回は少し、感想も含めて書いていきます。

第7話の物語は、「トップネスのリーダー」を自任するニーナ・ネルソンを中心に進んでいきます。冒頭、抱えきれない想いをぐっとこらえるニーナが描かれました。間に挟まれているカットは、前回第6話で「セカンドサイト(ドローン)」を全て墜とされた際のモニター画面です。前回の戦いでは、セカンドサイトを失ったことで、ニーナは艦隊の情報収集役としての役割を失いました。「トップネスのリーダー」としての自覚と自負を持っているニーナには、思うところがあったのでしょう。細かな心情描写が光ります。

次に、視点は一年前のロンドンへと移行します。ニーナがナーフディスにスカウトされる場面です。ここでは、

  • ナーフディスはトップネス候補のカスタマイズ艦に合わせて宇宙戦艦を建造していること

が明かされています。第1話冒頭でユウが不思議がっていたものが、ここで確定されたような形ですね。

ニーナは危険な任務に不安を覚えますが、地球上のどこかにいるであろう、突然いなくなってしまったかつてのゲームメイト「forty-nine」を自分が守るのだと覚悟を決めて、ナーフディスへ参加することにしました。

回想はさらに時間軸を進めます。次は、ニーナがナーフディスへと参加する場面です。ニーナは、管理官のアビーから、自分が「艦隊の要」であることを伝えられます。そして、いよいよナーフディス計画が始動します。この説明場面では、

  • 時空結晶体とトップネスの接続によって生み出されるエネルギーでしか、セイレーネスには対抗できないこと
  • 時空結晶体とパイロットの接続技術は、汎用化(トップネス以外の人間でも乗れるようにする)が進められていること
  • 時空結晶体のオリジナルは失われており、量産が不可能であること
  • 人類が所有している時空結晶体はコピー8つのみであり、マーク9以降の建造は予定されていないこと

が語られています。この説明を受けたニーナは「私たちが死んだらもう後がない」と使命感を抱きます*2

回想はさらに、ニーナのシミュレーション訓練シーンに移ります。この場面では、

  • マーク6は、セイレーネスに狙われやすい

ことが明かされます。アビーは、作戦上、マーク6を守ることよりも自分が乗るマーク1を守ることが必要だとニーナに説きます。マーク1が艦隊の要だからです。マーク6を守ることよりも艦隊の全滅を避けることが大切だと語るアビーに、ニーナは「私は大人になんて絶対にならない」「私がトップネスを守る」と誓います。

ここで、回想は終わりです。時間軸は冒頭のシーンに戻ってきます。

思い詰めていた様子のニーナに対し、アイシャは「まさか……ユウ?」と訊ねます。第5話での二人(サイクリック宇宙論を語っていた場面)の様子を、アイシャは目撃していたようです。この一言でスイッチの入ったマリナがちょっかいを出し、場面はコメディタッチに変わっていきます。ハード路線だった回想シーンとは対照的に描かれていますね。「茶碗蒸し」は、第5話から繰り返し取り入れられている、ニーナとユウを繋ぐものの一つです。

第5話でニーナは、自分の大切な大切なゲームメイト「forty-nine」がユウ・ヤマトその人だったことを知りました。しかも「forty-nine」は、ニーナのトラウマであるマーク6のトップネスだった。「まさかマーク6のトップネスだったなんて」の一言には、ニーナの二重の驚きが表現されています。「おいなりさん」(リンネの寝言)と「茶碗蒸し」(ニーナの思い出)を巡って繰り広げられる「そういうの」にヒューゴーが言った「結婚しちゃえば?」は、ニーナにとってはちょっとしんどい一言かもしれません。

「気にしないで 私はトップネスのリーダーだから」「ごめんな そういうの全部押し付けちまって」。楽しげなトップネスの輪から一人離れていくニーナ。一年前と違って7人の仲間を得た今も、ニーナは”孤独感”を覚えているようですね。

かつてニーナは、「forty-nine」と「ユメクジラを捕まえて一番大きい水族館を作ろう」と約束をしていました(第5話)。ですが突然、「forty-nine」はゲームから姿を消してしまう。結局ニーナは一人でユメクジラを捕まえ、水族館を作ったようです。

「私ここにいるよ?」

ニーナが今も抱えているのは孤独なのか、あるいは孤独への恐怖なのか。ニーナの葛藤をどう克服するかが、次回以降の注目ポイントになりそうです。

〇雑感

今回はニーナ回でした。これまでの『Λ』は、特定のキャラクターに焦点を当てつつ、別のドラマも並行して積み上げていくスタイルをとっていました。今回も回想シーンの中でいくつか明かされた設定がありましたが、それでも、場面の主役は常にニーナに設定されていましたよね。限られた紙幅の中でニーナを描ききろう!との強い意志を感じました。

今回私がとても良かったと思うのは、ニーナの想いと過去が入り乱れている点です。

彼女の想いは、とても純粋でまっすぐなものとして描かれています。ですが、純粋でまっすぐなリーダーとしての自覚と、純粋でまっすぐな彼女自身の想い交差してしまっています。それがグッときますね。以下に、少し整理してみましょう。

  • ニーナには、かつてオンラインゲームで毎日遊んでいた友人「forty-nine」がいたが、「forty-nine」は突然消えてしまった。
  • ニーナは「forty-nine」の帰りを待ちながら、二人の約束であった「ユメクジラを捕まえて一番大きい水族館を作ろう」を一人(?)で叶える。
  • 時が経ち、ニーナは「人類を守る」ための組織・ナーフディスに加わる。ニーナの動機は、地球上のどこかにいる「forty-nine」を守ること。ニーナは艦隊の司令塔となった。
  • だが、ニーナはシミュレーションでさえ、仲間を見捨てることができない。特にセイレーネスの標的になりやすいマーク6については、場合によっては見捨ててでも作戦行動を優先しなければならないが、ニーナはマーク6を見捨てることができない*3
  • ニーナは自分なりに、「トップネスのリーダー」としての自覚を持っている。

ここまでは、まだ「かつてゲームメイトがいた過去」と「トップネスのリーダーになった現在」は交差していません。ところが事件が起きた。

  • ニーナはトップネスの一人、それもマーク6のトップネスが、かつてのゲームメイト「forty-nine」であったことを知る。

これによって、ニーナの過去と現在は入り乱れていきます。

ニーナにとって「forty-nine」の存在は、我が身の危険を冒してまでセイレーネスと戦う理由でした。それほどまでに、「forty-nine」は大切な存在だったのです。

そしてニーナは、艦隊の司令塔として常に冷静でいることを求められています。ニーナに求められているのは戦場を俯瞰すること、艦隊の損害を最小化し、セイレーネスの損害を最大化するための判断を下すことです。そこに私情が入ってはいけません。場合によっては、艦隊の中でも特に危険な立場に置かれるマーク6を見捨てることさえ、求められるでしょう。

しかし、「forty-nine」であるユウはマーク6に乗る。訓練でさえ仲間を見捨てることのできなかったニーナが、マーク6のトップネスは自分の大切な人なのだ、ということを知った時、果たして冷静な判断を下すことは可能なのか……。

ここに葛藤が生まれています。

仮に次回以降、ニーナが作戦行動中に「自分の大切な人を守る」ためだけの行動に出たならば、それはニーナが「トップネスのリーダー」としての自分を捨てることを意味します。その行動は、ニーナが言い聞かせてきた「トップネスのリーダー」としての自分を崩壊させる行動になるかもしれませんが、同時に、「私は私のために生きる」という新たな自分自身の解放をもたらす行動になるかもしれません。

〇楽しみが広がる

次回以降、ユウを守ることが艦隊のリスクに直結するような局面が訪れた時、果たしてニーナはどのような決断を下すのでしょうか。これを考えるだけでもワクワクが止まりません。

それは決して、ニーナが苦しんでいるのが云々といったサディズム的なものではありません(笑)。私がワクワクしているのは、この苦しみの先に、必ずニーナにとっての”新しい自分”が待っていると思うからです。

それが次回なのか、もっと後なのかは分かりませんが、ニーナには必ずどこかのタイミングで自分自身の殻を破るタイミングが訪れるはずです。しかも今回は、ヒューゴーやマリナの時と違って、まさに主人公たるユウその人、あるいはトップネスの仲間たちに葛藤の矢印が向いている。

ニーナのドラマによって、トップネス全体の物語が一歩前進するのではないか。そう考えていくと、『Λ』の今後に対する楽しみも広がってくるわけです。

今回の第7話は、それだけの局面に『Λ』を運んだ回だと思います。

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*1:どんな人生も武器になる:第6話『スターブレイザーズΛ』 - ymtetcのブログ

*2:とはいえ、仮にトップネスが失われたとしても時空結晶体が失われていないのであれば、「汎用化」次第では戦力の維持が可能です。この「汎用化」がどこまで進んでいるのかは、ポイントになるかもしれません。ところでマーク8とは(現時点ではマーク7までしか登場せず)!?

*3:とすると、第2話ラストで「マーク6の力」に驚いているのはニーナ? なお、第7話ではマーク6が「49回」墜ちている。