ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【ヤマト2205】「初めて」の試み……?

こんにちは。ymtetcです。

先日のオールナイトニッポンでは、福井さんがたくさん興味深い話をしてくれました。中でも『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』に向けた福井さんの話は、これまで『ヤマトマガジン』でも、その他インタビューでも明かしてこなかった情報を含んでおり、とても興味深いものでした。福井さんによれば、『2205』は「初めて」の試みを行うといいます。今日はその話から、『2205』への期待を膨らませていきます。

〇ANNにおける福井さんの『2205』情報

私は放送を聴きながら、以下のようにメモをしていました。

『新たなる旅立ち』というタイトル。旧『新たなる旅立ち』をベースにした物語。

今回、初めて映像尺に合わせて曲を作る。「新コスモタイガー」。

+彬良さん情報 速いテンポで4分くらい、すごい映像

福井さんは、『2205』で「映像尺に合わせて曲を作る」場面があると明かしました。

いわゆるフィルムスコアリングですね。映画音楽の手法の中でも定番の一つと言えるでしょう。予め作曲された音楽を映像に割り当てていくのではなく、映像に合わせて音楽を作曲するやり方です。

そして、これを福井さんは明確に「初めて」と称しました。ですが、フィルムスコアリングと聞けば、『2199 星巡る方舟』を思い出すファンも少なくないと思います。福井さんのいう「初めて」とは何なのか? 単に福井さんが『方舟』を知らないだけかもしれませんが、彬良さんがその場にいたことにも鑑みれば、そこには何らかの意味があるのかもしれません。そこで、もう一歩踏み込んでみたいと思います。

〇『方舟』との違いを考える

宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟 - Wikipedia」によれば、『方舟』は厳密なフィルムスコアリングではなく、「伸び伸びとしたフィルムスコアリング」だったようです。

まず映画の絵コンテがあり、その長さに合わせて宮川彬良さんが作曲をする。完成映像では、音楽に合わせて映像を調整する。音楽は「絵コンテ」という制約こそ受けるものの、却って決められた長さの中で音楽の魅力を余すところなく表現できる。さらに、細部では映像よりも音楽が優先される……。

フィルムスコアリング風でありながら、音楽の自由度もある程度担保されている点が、彬良さんをして「伸び伸びとした」と言わしめる要因であったのでしょう。

今回、福井さんは明確に「フィルム」を「編集」して(彬良さんに渡す)と述べていました。つまり、今回は映像がある程度完成しているのだと思われます。映像がある程度完成しているとすれば、そこが『方舟』との違いだと考えられます。

こうして見ると、今回はより厳密なフィルムスコアリングに近いのではないでしょうか。音楽の自由度は『方舟』よりも低くなりますが、それはそれで、音楽家としてはチャレンジングな環境でしょう。『2199』『2202』とも違う「縛りプレイ」の中で、新たな宮川彬良サウンドを楽しむことができるのではないでしょうか。

〇「新コスモタイガー」と言えば

『方舟』の音楽は、一部例外はありますが基本的にはすべて「伸び伸びとしたフィルムスコアリング」でした。しかし今回、フィルムスコアリングが一体どのような範囲で行われるのかは、まだ分かりません。

ラジオで、福井さんは「新コスモタイガー」のイントロを口ずさみました。ゆえに「新コスモタイガー」が用いられる場面は確定していますが、敢えてそこだけを挙げたとすれば、それ以外はフィルムスコアリングではないのかもしれません。

個人的には、映画の中の一部分だけにフィルムスコアリングがある、というのも面白いと思います。例えば、『ヤマトよ永遠に』の敵中間補給基地戦は、映画の評価とはまた別に、名シーンとしてファンに記憶されていますよね。見せ場を敢えて映画の中で独立的に描くことによって、それが名シーンと見なされることもあるわけです。

「新コスモタイガー」が流れたシーンと言えば、まさに『永遠に』の敵中間補給基地戦か、『新たなる旅立ち』の新乗組員訓練シーンです*1。フィルムスコアリングでリメイクした敵中間補給基地戦は是非観てみたいところですが、今回は『新たなる旅立ち』ですから、新乗組員の訓練シーンだと思います。新たな乗組員の頑張りにも期待したいですが、メタ的には安田監督の演出にも期待したいところです。彬良さんの語る「4分間」が、新たな『宇宙戦艦ヤマト』の名シーンになったらいいなと思います。

〇欲

さて、私は欲張りなので、新乗組員の訓練シーンをやるのであれば、サプライズ的に「ヤマト新乗組員のテーマ」を使ってもいいなと思ってしまいます。

『2205』ではコスモハウンド、土門竜介と『ヤマトⅢ』の要素が垣間見えています。また、楽譜がさっぱり読めないので分かりませんが、

彬良さんが作曲した旧作の音楽と言えば、「第18機甲師団」が代表作の一つでしょう。これは『ヤマトⅢ』の音楽です。なので、ついでに「ヤマト新乗組員のテーマ」を使ってもいいのではないか……と思うわけですね。

特に、訓練内容が旧作通りであれば、まずコスモタイガーの訓練が一通りあって、次にヤマトの訓練に移行するはずです。訓練の前半を「新コスモタイガー」で、後半を「ヤマト新乗組員のテーマ」で演出すれば、私が喜ぶことになるでしょう(笑)。

ただ、これはあくまで懐古的な話です。「交響組曲」を聴いても分かるように、リメイクヤマトの音楽は宮川彬良さんの作品なのです。今回も懐かしいメロディは使いつつも、彬良さんの作品として仕上げてくるでしょう。それもまた楽しみにしておきたいと思います。

〇おわりに

フィルムスコアリングとは一般に映画で使用される手法で、テレビアニメで使用されることは少ないとされています*2。福井さんの口ぶりから考えても、やはり今回は単作の映画と考えていいのではないでしょうか。『新たなる旅立ち』のリメイクを真っ当にやるのであれば、それがいいと私も思います。

「新コスモタイガー」は『2199』で既にリメイクされていますが、最初以外は使われないという不遇な曲でもありました。今回そのメロディが、本来の役回りで本領を発揮するのであれば、とても嬉しく思います。コスモファルコンからコスモタイガーに変わることで、『2199』よりも軽快なアレンジになる可能性もありますが、音楽的には『2199』のアレンジが引き継がれるのかな? と想像しています。ただ、ワンダバはほぼ確実にオミットされるはずです。

敵中間補給基地戦が名シーンと言われるのは、当然金田さんの演出が評価されているからですが、「新コスモタイガー」と「未知なる空間を進むヤマト」の二曲が果たした役割も大きかったと思います。スピーディーな映像と共に、軽快な音楽に乗ってコスモタイガーが宇宙を舞う。想像しただけでも、楽しみになる映像です。『2205』が、時に「ミュージカル」とも言われた後期『宇宙戦艦ヤマトの良い所を引き継いでくれたら、とても嬉しいですね。

*1:『復活篇』もありますが。

*2:当然ないわけではなく、近年でも『鬼滅の刃』などがフィルムスコアリングで音楽を作っているようです⇒「サントラ千夜一夜 / 腹巻猫(劇伴倶楽部)第185回 フィルムスコアリングの復活 〜バジリスク 甲賀忍法帖〜 | WEBアニメスタイル