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偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【宇宙戦艦ヤマト】中心キャラで4人組を作ろう

こんにちは。ymtetcです。

宇宙戦艦ヤマト』を復権するためにはどうすればいいか。その問いはあまりにも遠大で、『さらば』リメイクの試みが挫折した今となっては現実味に乏しいものです。

ですが、原作ファンをしっかりと固め、アニメファンの心をも掴む『宇宙戦艦ヤマト』を目指して新作を生み出し続ければ、いつかは復権する未来がやってくるかもしれません。その意味で、現代を生きる他のコンテンツから『宇宙戦艦ヤマト』が学ぶべき点も多いと考えます。

今日は、キャラクターという要素に絞って、宇宙戦艦ヤマト』をより魅力的にする方法を考えてみます。

〇「中心キャラクター=4人」論

宇宙戦艦ヤマト』は中心となるキャラクターを4人に定め、その4人組を中心に物語を組み立てるべきではないでしょうか。

一般的なアニメには、ストーリーを進める上で中心になるキャラクターを複数人置いているケースが少なくありません。例えば、アニメ制作の現場を描いたテレビアニメ『SHIROBAKO』は5人のキャラクター(宮森あおい、安原絵麻、坂木しずか、藤堂美沙、今井みどり)を中核に置き、それぞれに制作進行、原画、声優、CG、脚本といった役割を与えています*1。いわゆる「戦隊もの」と似たような配置をとっているケースですね。

今回は、特に中心キャラクターを4人としているケースに注目して*2、そのメリットを考えてみましょう。前半は一般論として、後半は宇宙戦艦ヤマトに即して考えていきます。

〇「中心キャラクター=2~3人」のデメリット

まずは、中心キャラクターが4人よりも少なかった場合のデメリットです。

テレビシリーズであれ2時間の劇場版であれ、シナリオとしては長編に分類されます。作業としては、長い物語の中に個々のエピソードを組み込んでいくことになります。

長編の物語の中でエピソードを組み立てる時、最もシンプルな方法としては「バディ」を組ませることでしょう。主人公が1人であっても、単独でエピソードを組み立てることはとても難しい。そこで、主人公の傍にいるキャラクターがいれば、物語を展開する余地が一気に広がるのです。

ですが、ここで中心キャラクターが2人だったらどうでしょうか。局所的にはいいかもしれませんが、物語がその2人以上に広がることはありません。つまり、単調になりやすいのです。

では、3人だとどうでしょうか。3人では、2人で「バディ」を組んだ際、特定の誰かが余ることになります。その場合、観客の視線が必ずしも画面上の2人に集まらず「あと1人はどこで何をしているのか?」に向いてしまう可能性が高くなるのです。これを避けるために常に3人で物語が進めるとなれば、これまた単調になるリスクが付きまといます。

〇「中心キャラクター=4人」のメリット

続いて、中心キャラクターが4人だった場合のメリットを考えてみましょう。

まず3人の時と比べて、「バディ」の選択肢が格段に増えます。これは、物語の展開の余地が一気に広がることを示しています*3

さらに、特定の2人で「バディ」を組んだとしても、誰か1人が余ることはありません。画面上に「いる」人数と「いない」人数が対等であるために、観客の視線が画面上に「いる」2人に向く可能性は相対的に高くなります

同じような理由で、4人全員が揃うエピソードの中で1対1の会話が作りやすい点も、魅力的でしょう。3人のうち2人だけが会話をする局面がある場合、残った1人を何らかの形で黙らせておく(?)必要が生じますが、4人であればごく自然に会話を展開できます。

なお、5人だとバリエーションが増えすぎてしまうのが難点です。誰か特定のキャラクターの掘り下げが不足したり、個々人のキャラクターの掘り下げに時間を割きすぎてしまうリスクが生じてきます。

〇『宇宙戦艦ヤマト』の中心キャラクターを4人に!

以上のことから、『宇宙戦艦ヤマト』の新作においては、今後、中心キャラクターを4人に絞る方法をとるべきなのではないかと考えます。

今回の記事では、特にリメイクシリーズに即して考えてみましょう。

例えば『2199』は、2~3人で中心キャラクターを作る傾向にありました。古代と島の2人、古代・雪・山本の3人や、真田・新見・古代守の3人などです。結果、古代と雪が「2人組」となるに従って、山本は物語の中心から距離を置くようになりました

この観点からいくと、『方舟』で島と山本の関係を深めたのはファインプレーだったと思います。古代・島・雪・山本の4人組が作られたことで、古代と島、島と山本、古代と雪、古代と山本、島と雪、雪と山本(『2202』では「ヤマト女子部」となった)といった多様な「バディ」が、違和感なく作れるようになったのです。

とすれば、今後のリメイクヤマトは、古代・島・雪・山本の4人を中心に物語を組み立てるのが、最もシンプルでやりやすいのではないかと思います。

なお、この4人組を作った場合、中心キャラクターであるはずの真田が余ります。ですが、真田は世代が古代たちとは異なります。よって、別の4人組の一部にするのがいいのではないかと考えます*4。例えば、真田・新見・桐生の技術科3人組にもう1人を加えてみるのはどうでしょうか。『方舟』の続編であれば、桐生と斉藤の関係性を利用して、真田・新見・桐生・斉藤の4人組を作る手もあったかもしれません。真田と斉藤は「慌てず急いで正確に」のコンビでもありますから、収まりはよかったと思います。これは『2202』とは矛盾するので、あくまで妄想ですが*5

なお、『2205』では、古代たちよりも下の世代が登場します。そこでも4人組を意識してキャラクターを配置すれば、「バディ」が作りやすくなると考えます。

〇おわりに

コンテンツを生存・発展させるためには、キャラクターの魅力を推進力として確保しておくことが欠かせません。特に、小さなエピソードから大きなエピソードまで使える「バディ」の関係性はとても便利であり、うまく機能すれば二次創作の余地も広げられる、非常にありがたい存在だと思います。

中心キャラクターを4人組とすることで、「バディ」のバリエーションを増やすことが可能となります。古代と島の関係性が好きなファン、古代と雪の関係性が好きなファンは既にたくさんいますが、ここに古代と山本の関係性、島と山本の関係性、山本と雪の関係性が好きなファンを付け加えられると考えれば、そのメリットは大きいと言えます。『宇宙戦艦ヤマト』は、より多様なキャラクタードラマを展開できるようになることでしょう。これはラジオドラマなどにも応用が利くものです。

宇宙戦艦ヤマト』は集団ドラマです。ひとつの4人組だけでは不十分でしょう。であれば先述したように、たくさんの4人組を各所に作ればいいのです。4人組を重層的に積み重ねていくことで、SF・海洋・ミリタリー・戦闘・メカ・人間ドラマといった『宇宙戦艦ヤマト』が持つ従来の魅力に、キャラクターの関係性が持つ「尊さ」、という新たな魅力を付け加えられると考えます。こうしてキャラクターの関係性や配置を工夫することも、これからの『宇宙戦艦ヤマト』には必要な観点なのではないでしょうか。

*1:キャラクター|TVアニメ「SHIROBAKO」公式サイト

*2:例えば、サブブログで取り上げた『のんのんびより』、『響け!ユーフォニアム』はいずれも4人のキャラクターを中心に置いています。

*3:のんのんびより りぴーと』第六話「ホタルと仲よくなった」では、それまでのシリーズでなかなか見られなかった組み合わせを「バディ」としたエピソードを盛り込むことによって、中心キャラクター4人の関係性を更に深めることに成功しています。

*4:例えば、『響け!ユーフォニアム』では、主人公を取り巻く「北宇治カルテット」なる4人組に加え、主人公の先輩たちで構成される「南中カルテット」なる4人組が存在し、複数の「バディ」が連動することで、二次創作の多大な余地を作りだしています(参考⇒「南中カルテット - Twitter Search」)。

*5:もしも、『2202』とは異なる『方舟』の続編があったとしたら、古代・島・雪・山本の4人組に真田・新見・桐生・斉藤の4人組、さらに航空隊では山本・篠原・加藤・沢村の4人組を作るなどすれば、非常にバランスのとれたキャラクタードラマが展開できた可能性もありますね。その意味で、『方舟』が提示したキャラクター間の関係性は、捨てておくには惜しい存在だったとも言えるでしょう。