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偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

『ヤマト2202』第1話は素晴らしい導入だった(はず)

こんにちは。ymtetcです。

前々回の記事で『マクロス』に学ぶ「ヤマトらしさ」を、前回の記事で『2202』の「わかりにくさ」について考えました。今回はそれに続いて、『2202』第1話について考えてみます。『2202』第1話を、どう評価すべきでしょうか。私も従来あまり高く評価していない回ですが、今回は別の角度から考えてみます。

『2202』第1話は、『宇宙戦艦ヤマト』新作の導入としては申し分ない構成でした。

〇『2202』第1話の構成

第1話のAパートでは艦隊戦と波動砲が描かれ、Bパートでは、新たな脅威ガトランティスの印象付けと、ヤマトの復活が描かれます。Bパートのラストでは「大河ヤマトのテーマ」「夕日に眠るヤマト」と主題歌の変奏曲が連続して流れます。

〇「ヤマトらしさ」の三カ条(仮)から見る『2202』第1話

前々回の記事では、『マクロス』にならって「ヤマトらしさ」を

  • 洋上艦をモチーフとした宇宙戦艦のメカ・アクション
  • ライトモチーフで構成される音楽
  • 疑似家族(あるいは師弟関係)

の三点にまとめました。

Aパートの艦隊戦は、洋上艦モチーフのヤマトらしい戦闘シーンを描く格好の機会になり得ます。第1話冒頭の戦闘シーンは、新規ファンにとっては「はじめまして」、既存ファンにとっては「おかえりなさい」の挨拶のようなものです。ここで洋上艦の戦闘をモチーフにした艦隊戦を描くことができれば、新作『宇宙戦艦ヤマト』の掴みとしては間違いないものだと言えるでしょう。また、あくまで小手調べのようなものなので、高度な戦術やドラマも必要ありません。『2202』のリソースでも十分に可能だったはずです。

また、Bパートの「大戦艦V.S.ヤマト」の戦闘は、音楽的に見れば「白色彗星」の変奏曲と「宇宙戦艦ヤマト」の変奏曲のぶつかり合いでした。「白色彗星」のモチーフは第1話の冒頭で提示していますし、「宇宙戦艦ヤマト」のモチーフはお馴染みのものです。ガトランティスとヤマトの戦いを描く『2202』の導入としては、間違いのない組み合わせでしょう。テーマミュージックで彩られたヤマトらしい戦闘シーンを作ることが可能な構成だったと言えます。

〇現実の『2202』にあった課題

ただし、実際の『2202』がこの構成上の利点を活かしきれたとは言い難いです。

例えば艦隊戦で、福井さんは《ゆうなぎ》を戦闘機のように飛ばそうとしました(脚本)。

実際の映像では、戦闘機チックな動きではなく、『2199』第1話の《ゆきかぜ》と似たような動きを《ゆうなぎ》にさせていました。これは前作へのオマージュだったのかもしれませんが、かえって前作とのメカ・戦闘シーン演出の違いを浮き彫りにし、既存ファンに違和感を抱かせることになってしまったと考えます。

そもそも『2199』第1話の冥王星沖海戦はスピード感と立体感があるものであり、『宇宙戦艦ヤマト』史の中では珍しいタイプの艦隊戦でした(元々、第一作の第一話の艦隊戦自体がシリーズでは異色なものだったかもしれません)。つまり、『2199』第1話自体が、旧来の「ヤマトらしさ」を少々欠いていたわけです。『2199』の場合はそれが新味を醸しだしていてよかったのですが、『2202』は旧来の良さに立ち返ることが脚本・演出のテーマであり、その意味ではチグハグになってしまっていると言えます。

〇現実の『2202』第1話を改変するとすれば

このように、『2202』第1話の構成は、新作『宇宙戦艦ヤマト』の導入としては間違いのないものでした。ですが、実際の『2202』は構成の良さを必ずしも活かしきれていなかったと考えます。

そこで、その構成の良さを活かしつつ、後出しで改善案を出してみます。

例えば、冒頭の艦隊戦ですが、『星巡る方舟』をオマージュしてもよかったのではないかと思います。

具体的には、まず火焔直撃砲に対して、地球・ガミラス連合艦隊が見事に連動して回避運動をとってみましょう。これは『方舟』で真田が開発した火焔直撃砲対策です。それを艦隊規模に広げたものをここで見せてはどうでしょうか。ミリタリー的には「2年も経っているのに対策が進化していない」ということでリアリティがないかもしれませんが、前作を観ているファンに少し喜んでもらう手段としては、かなり有力なのではないかと思います。

また、『2199』の艦隊戦と言えば、雲海を海面に見立てた「沈没」の描写です。『2202』冒頭の舞台はちょうど惑星の近辺で、しかも架空の惑星でした。ですから、なんとでもなるわけです。ガトランティス艦隊と連合艦隊が戦闘を行い、攻撃を受けた艦は雲海に沈んでいく。そうすれば、前作のファンに懐かしんでもらいつつ、新規ファンに「ヤマトらしさ」をアピールすることができますよね。

繰り返しになりますが、第1話はあくまで「はじめまして」と「おかえりなさい」のための時間です。高度な戦術やドラマがなくても、このあたりのポイントを抑えて艦隊戦を行うことができれば、導入としてはまずまずだったのではないかと考えます。

さて、先述した三カ条の「ヤマトらしさ」の中で、一つだけ触れていないものがありました。「疑似家族(あるいは師弟関係)」です。

『2202』における「疑似家族(あるいは師弟関係)」の要素としては、「沖田の子供達」や古代と山南の対立がこれに相当します。沖田より10ほど年下の山南は、沖田の部下としてキリシマに乗艦していた仲であり、弟子か、少なくとも後輩にあたる立場でしょう。また、沖田より35ほど年下の古代は、沖田の弟子にあたると考えていいと思います。

この古代と山南は、今は亡き沖田の後を継いで生きているところに共通項があります。だからこそ、波動砲をめぐる二人の対照的な考え方が、ドラマチックになり得るわけです。

そこで、例えばこのように構成してはどうでしょうか。

山南の声「こちら地球連邦防衛軍、艦隊総旗艦アンドロメダ艦長の山南修だ。八番浮遊大陸の消失を確認した。続いて掃討戦に移行する。地球・ガミラス連合艦隊は、引き続き静観されたし。これまでの健闘に敬意を表する」

相原「山南さん……

アンドロメダ艦橋

戦況を厳しい表情で見つめる山南。

南部の声「沖田さんの後輩が、こんなことを……!

山南の背後に掲げられた、沖田のレリーフにピントが合う。

本編の方がいい部分もありますが、狙いとしては、山南に名を名乗らせ、相原と南部に応じさせることで、山南が沖田の後を継いでいることを示すことにあります。そこで、山南の部屋にあったレリーフを艦橋に移動させ、ここで登場させてみました。

旧来のファンは、「沖田のレリーフ=ヤマトの艦橋にあるもの」という意識が強いと思います。それがアンドロメダの艦橋にあればちょっとしたサプライズになりますし、旧作・2199と観てきたファンにとってはいい皮肉になるのではないでしょうか。

このようにして、第5話をピークにした古代・山南対決の前振りを、この第1話で行ってもよかったかもしれません

〇おわりに

いずれにせよ、改善案というのはただの後出しでしかありません。

今回の記事で重要なのは、最も大切な構成の面で、『2202』第1話はとてもいいものを持っていたということです。特にこの第1話は、演出チームのアイデアが豊富に入ってきています。つまり、必ずしも脚本チームだけの功績ではありません。

『2202』では脚本チームのアイデア、演出チームのアイデア双方が賛否両論を呼びましたが、特に演出チームのアイデアは、大戦艦の十字架といい批判を受けやすいものでした。その中で、『2202』第1話Bパートを作る上での演出チームの功績は見逃せません。第1話はその意味で、再評価すべき余地のある回なのではないでしょうか。

 

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鮫乗り様に当ブログの記事を引用していただきました。ありがとうございます。