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偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

#5『宇宙戦艦ヤマト2199』を観る

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こんにちは。4年目のymtetcです。

ほぼ200日ぶりに、『2199』を観てみました。今日はその際のメモ書きを公開します。

〇充実したキャラの掘り下げと説明

この第5話は、『2199』を現代的なテレビアニメに押し上げた一つの画期となる回だったと考えます。

『2199』は、第3話で主役メカ・宇宙戦艦ヤマトの機能を明らかにし、第4話で古代進を主人公にした回をやりました。そして、この第5話は、登場人物のキャラクター性を一気に掘り下げていきます。全体として、登場人物のセリフ・会話を通した世界観・人間関係の説明がしっかりしている印象を受けました。

冒頭の冥王星基地での会話では、シュルツ・ガンツ・ヤレトラーとゲールの会話を通して、ガミラス側が地球の新型艦を「ヤマト」と認識したこと、シュルツらがガミラスの二等臣民であること、シュルツらはかつてドメルの部下だったことが明かされます。この時点でドメルは謎のキャラクターですが、第11話以降『2199』の中心キャラクターになる人物であり、ドメルのザルツ人に対する信頼は七色星団戦にも関わるため、この時点で名前だけでも出しておくことには意義があります。また、ここではゲールの「わかりやすい」キャラクター性が、設定の説明をスムーズに演出していますね。

第5話はさらに、真田と古代、古代と雪、山本と加藤、加藤と原田、古代と島といった、キャラクター同士の会話シーンを多く描きました。そこでは、キャラクターの関係性を深めたり(真田と古代、古代と雪、加藤と原田)、既存の関係性(山本と加藤、古代と島)を説明したりしています。特に加藤と原田、古代と島の会話は、張り詰めた緊張感を緩める役割も果たしています。後半からはメ二号作戦の緊張パートですから、緩急を巧く配置していると思います。

会話劇をベースに、集団劇である『2199』の作風を観客に知らしめた。ある種の『2199』らしさが、この序盤において最も反映されたのがこの第5話だったと考えます。

〇第5話の課題

ただし、それと表裏一体になった課題もあると考えます。

例えばAパート、解析室で古代が真田に食い下がるシーンはいい場面でした。しかしここでは、真田のキャラクター(合理的思考と、ゆきかぜへの想いという二面性)を説明することに重点がおかれており、古代が真田に食い下がることは、真田のキャラクターを説明するための手段になってしまっています。古代は、真田からキャラクター性を引き出す役割を淡々とこなしているだけなのです。ここに、古代のキャラクター性やドラマを絡めることができればもっとよかったと考えます。

これは作り手のミスではなく、意図的に行われていることでしょう。なぜなら『2199』は、古代進だけの物語ではないからです。それでも私は、せめて第6話までは、古代進の物語を腰を据えて描いてもよかったのではないかと思っています

例えば、沖田は古代に航空隊の指揮を委ねます。もしかしたら、沖田の意図を古代進と守の関係性に求め、ドラマチックに仕上げることも可能だったかもしれません。

まぁこんなにシンプルなドラマを配置する必要はないと思いますが、それにしても、第5話の古代からは空虚な印象を受けました。この回で古代はよく喋りますが、その背後にはこれといったドラマがないのです。真田に食い下がったこと、山本を転属させようとしたこと、メ二号作戦の説明中、南部に毅然とした態度を取ったことなど、一つ一つの判断や言葉の背後には、彼なりのバックボーンがあったはずなのです。ですが、そこはほとんど描かれていません。

この反面、きっちりとしたドラマを与えられているのが山本玲です。そうした『2199』スタッフの判断そのものを責めようとは思いません。ただ、山本玲の兄に対する想い、そこに流れている彼女のバックボーンは、実は冥王星とはあまり関係がありません

彼女のドラマが本格的に動き出すのは第7話以降。であれば、ここでは山本に関する掘り下げは最低限にしておいて(転属はさせておく、程度)、浮いた尺を古代のドラマに再配置し、古代の想いを多少なりとも観客が汲み取れるようにしておいた方が効果的だったような気がします。

〇まとめ

やはり『2199』はいいですね。メカ描写についてもかなりレベルが高いと感じました。これが2012年のアニメとは驚きです。

第5話は、キャラクター同士の会話で人間関係を表現したり、人間関係を組み上げていったりする構成がとても洗練されていました。キャラクター描写がぐっと深まったことで、『2199』の集団劇としてのクオリティをかなり高めた回だったと考えます。

課題で述べたように、惜しむらくは古代進に目立ったドラマが見られず、随所に兄・守への言及はあるものの、言及がある以上の深まりが見られなかったことでしょう。少なくとも第6話までは、古代進の物語を作っておいてもよかったのではないかと思います。

例えば、第6話を最終回として兄をめぐる進のドラマを作っておき、古代を主人公としたドラマは一旦そこで終結させる。そして第7話以降、山本や島のドラマ、沖田とドメルのライバル関係、真田の過去回、雪のドラマと展開していく。

こうすれば、古代進だけを主人公としない『2199』の方針は貫徹されたはずです。実際の第5話では山本のドラマも少々入ってきていますが、山本のドラマは第7話と第10話、第11話で回収すると腹を決めて、思い切ってカットしてもよかったかもしれませんね。

この他にも、ラストシーンの完結編オマージュは逆効果だったかな、など細かく気になった点もありますが、全体で見れば非常に洗練された回だったと思います。