ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【リメイク・ヤマト】保守的なファンが求めるのは「原因」の変化

こんにちは。ymtetcです。

宇宙戦艦ヤマト』に限らず、リメイク作品は旧作を作り直す、あるいは再構築する、あるいは再生することを求められます。その中で、時代に合わせて変化していかなければならないものも当然あるでしょう。しかしそれは、保守的なファンによって「改悪」とのレッテルを貼られるリスクと、隣り合わせの行為でもあります。

リメイク・ヤマトは、恐らくは多くのリメイク作品もそうであったように、旧来のファンからの少なからざる批判を受けました。

私はヤマトファンの代弁者ではありません。なので今日は、自分自身のことを保守的なファンであると考えている私の、個人的な見解から記事を書いていきます。

今日の記事の軸として置いておきたいのが「様子」と「原因」の枠組みです。まずはこれについて、具体例を提示しながら説明しておきましょう。

例えば、旧作第一作では沈没した戦艦大和の中から宇宙戦艦ヤマトが出現し、宇宙に旅立ちます。そして『2199』でも、戦艦大和の中からヤマトが出現し、旅立ちます。これは「様子」にあたります。見た目の映像やビジュアル、シーンの流れがどのようであるか、という意味です。

しかし、旧作と『2199』には変化している部分もあります。旧作のヤマトが戦艦大和の中から出現するのはヤマト自体が戦艦大和を改造したものだからです。一方で、『2199』のヤマトが戦艦大和の中から出現する理由は明かされず、ただ擬装であることのみが言及されています。なぜヤマトは戦艦大和の中から出現するのか。これは「原因」にあたります。映像やビジュアル、シーンの流れがなぜそうなっているのか、という意味です。

この枠組みは、『2199』や『2202』を旧作と比較する上で一つの有力な立脚点になるかもしれないと考えています。旧作と『2199』『2202』では変化している部分が圧倒的に多いわけですが、その「変化」とは一体、何が変わっているのか。 これを考えることで、よりよいリメイクを作ることができるのではないかと私は予感しています。

先ほど出した戦艦大和とヤマトの関係性で言えば、戦艦大和の中からヤマトが出現する「様子」は変わっていません。しかし、なぜそうなるかという「原因」は変化しています。これは「様子」が変化せず、「原因」が変化している例だと言えます。

一方、「様子」が変化している例もあります。『2199』で言えば、イスカンダルで古代守が既に死んでいる、これは「様子」の変化にあたります。

ここで『2202』を例にすると、また興味深いものが見えてきます。

例えば、ガミラス戦役からわずかな時間で完成するアンドロメダ、これは旧作から受け継いだ設定でありますから、「様子」は変化しているとは言えません。しかし、その理由である時間断層は『2202』の新規設定。つまり『2202』序盤時点アンドロメダは、「様子」が変化せず、「原因」が変化していることになります。

『2202』は全体を通して「様子」の変化が多い作品でした。ニードルスレイブに始まり、ズォーダーの性格、アンドロメダ空母、250万隻の大戦艦、完全新規ストーリーの「悪魔の選択」、機動甲冑、イーター、都市帝国、波動実験艦銀河、最終決戦仕様……映像やビジュアル、シーンの流れの変化で言えば、まだまだたくさんの例が挙げられるかもしれません。

興味深いのは、ここで「様子」の変化として挙げた要素たちが、いずれも保守的なファンから厳しく批判されている点です。これは『2199』でも同様の傾向があると言えます。先ほど挙げた古代守の死はもちろん、デスラーの行動、イスカンダルでの海水浴などは、「様子」が変化している例です。そしてこれは保守的なファンから厳しく批判されました。もっと急進的な人であれば、さらに第9話の絵本や第14話のスパイ回も、厳しく批判していたかと思いますが、これも「様子」の変化です。

ここで私の中で、一つの仮説が浮かびました。”保守的なファンが求めるのは「様子」の変化ではなく、「原因」の変化なのではないか?”と。

ビジュアルやシーンの流れを変化させるのではなく、そこに至るまでの理由を変化させる、もっと言えば、補完する。それこそが保守的なファンの求めることではないでしょうか。

このようにまとめると、なんだ当たり前じゃないかと思われるでしょう。実際、私はそう思いましたから(笑)。

ただ、もしも若い世代のヤマトファンの中に、将来『宇宙戦艦ヤマト』のリメイク作品(あるいは二次創作)を作りたいと考える人がいるならば、この「様子」と「原因」の枠組みを念頭に置くと作業が進めやすくなるかもしれません。

自分が改変しようとしているものは「様子」なのか、「原因」なのか? この問いを意識しておけば、”何を改変したら怒られるのか、何なら改変しても怒られないのか”という途方もない問いについて考えるコストが、少しだけ軽減されるのではないでしょうか。少なくとも、「原因」を改変することに対する躊躇は、意識する前よりもずっと小さくなるはずです。

『2199』『2202』のシナリオは、プロフェッショナルが何を改変し、何を改変しないでおいたのかを克明に記した文字通りの記録だと言えます。『2199』のシナリオはプレミア値がついていますが、『2202』はまだ5000円未満で手に入れることができます。若い世代にとっては決して安いものではないかもしれませんが、創作の道を志しているヤマトファンの方々には、ぜひ手に取っていただきたい一冊です*1

この流れだと、アフィリエイトサイトみたいですね(笑)。残念ながら(?)私には一円も入ってこないので、安心して(??)リンクを踏んでいただければと思います。

*1:なお「あらゆる手段」とはバイト代はもちろん、お年玉、貯金、お小遣い、クリスマスプレゼント、誕生日プレゼントなど若い世代が動員し得る全ての方法を指しています。