こんにちは。ymtetcです。
『宇宙戦艦ヤマトNEXT スターブレイザーズΛ』第17話「最強のトップネス」が公開されました。
今日は、この第17話について、考えていきます。
温かく力強い、決意の話。前進を続けるサスペンス。ユウは受け継がれた想いを胸に、愛する人の尊厳を守るため、もう一度戦うことを決意する。
(メモ)
〇現実に向き合うユウと『Λ』の哲学
第17話中盤、ユウが祖父と散歩に出かける場面では、第16話のラスト以来、記憶が曖昧になっているかのように振舞っていたユウが、ついに「レインの死」に向き合います。第16話ラストで、ユウは「母親の死」の記憶を失っていましたが、あの場面は記憶が曖昧になっていたのではなく、「大切な人の死」を受け止められずに、そこから目を背けていたと解釈した方がいいかもしれません。
ここでのポイントは、ユウの祖父がユウに語る「親友がユウを守ったのはユウがかけがえのない存在だったから」とのセリフだと思います。『Λ』ひいては吾嬬さんの哲学が反映されていると考えるからです。
「生き残ってしまった者は皆自分を責める」
「お前の命は親友が命をかけて守った…そのレインっていう子にとってかけがえのないものだってことだ…」
「…ユウ 誰もがたくさんの人に守られて生きている…」
これ以上私から多くは語りませんが、この言葉は吾嬬さんが紡ぐからこそ、重みのある言葉だと思います。
〇ゆきむすめ
ユウが、マヤと住むはずだったマンションを訪れる場面では、やはり『ゆきむすめ』がポイントになるでしょう。ここにも、『Λ』の哲学、そして宇宙観が反映されています。
この『ゆきむすめ』、実在の童話です。あらすじは以下の通り。
子どものいないおじいさんとおばあさんが、ある冬、雪で女の子を作ると突然動きだしました。おじいさんとおばあさんは大喜びして娘としてかわいがります。でも、春がきても、娘は家の中に閉じこもって外では遊びたがりません。やがて夏になり、娘はおじいさんやおばあさんにすすめられて、女の子たちと森に遊びに出かけますが……。
そして結末は、今回『Λ』に引用されている通りです。
この『ゆきむすめ』のラストシーンに対して、マヤはこう述べています。
カーチャはまた雪になっておじいさんとおばあさんのもとに帰ってくると思うの…季節がめぐるように想いも命もめぐる…ママはそう思うな
ここでも、『Λ』の宇宙観につながる「くりかえし」の要素が出てきます。命も想いも、受け継がれてまた戻ってくる。たとえ命が失われたとしても、想いは消えない。そんな『Λ』の哲学がうかがえますね。
〇決意するユウ
ユウはマヤのパソコンで、リンネとマヤが会話している様子を目にして驚きます。ここで、「マヤの死」=6年前の事故の真相を突き止めるという原点を思い返したユウは、木星、トップネスに戻ることを決意します。
具体的なきっかけとしてはマヤのメモ書きが落ちたことですが、やはり、この場面は「マヤの想いがユウに受け継がれた」と解釈しておきましょう。マヤの想いを受け取って、ユウはもっとはっきりと強く、トップネスに戻ることを決意します。
〇総括
今回のサブタイトルである「最強のトップネス」とはミハイル・レトヴィザンのことですが、物語の主題はユウの方にありました。そう考えると、「最強のトップネス」はユウにもかかっている表現なのかな、と思いました。
一般的に、物語ではクライマックスの前に、一度主人公を「どん底に落としておく」ことがとても重要だとされています。『Λ』にとっての「どん底」が今なのであれば、『Λ』を通じたユウの目的は、やはり「母親の尊厳を取り戻す」ことにあると言えそうです。ここ数回の物語は、第1話で提示されていたこの枠組みを再確認するために、展開されていたものだったと解釈するのがいいかもしれません。
では、「母親の尊厳を取り戻す」ことの先には一体なにがあるのでしょうか。
私は、その先には「ユウがマヤの死を受け止める」ことがあると思います。すなわち『Λ』は、「主人公が大切な人の死を受け止める」物語なのではないでしょうか。
「母親の死」に始まった第1話、そして「大切な人の死」を受け止められなくなった第16話、再び「死」が渦巻く宇宙へ戻る決意を固める第17話。
この一連の流れを見て、私はそう考えました。