ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【アクエリアス・アルゴリズム】が描く2021年の”リアル”

こんにちは。ymtetcです。

今日は、『アクエリアスアルゴリズム』が描いた、地球社会と「宇宙戦艦ヤマト」の関わりについて考えていきます。

〇17年前の戦艦が「人類の希望」になる物語

かつて『さらば宇宙戦艦ヤマト』は、たった1年で宇宙戦艦ヤマトの存在を忘れてしまった地球の社会を描きました。これは語義そのまま意味で「忘れる」のではなく、「戦争の時代を忘れた」ことの比喩でしたが、誰も宇宙戦艦ヤマトの航海を顧みなくなった点では、実質的にはやはり「ヤマトの存在を忘れた」と見てもいいでしょう。

『黎明篇』は、(『さらば』とパラレルとはいえ)そんな地球社会で、17年間眠っていたヤマトが「人類の願いがあって復活」(『復活篇』)するほどの存在になっていく過程を描くミッションを与えられています。その過程とは「忘れ去られたヤマトが、再び人類の希望になるまで」ですから、私はもっとシンプルな物語になると予想していました。

ですが、『アクエリアスアルゴリズム』が見せてくれたものは違いました。ある意味、2020年代なりの”リアル”を私たちに見せてくれたと思います。

〇『アクエリアスアルゴリズム』における「宇宙戦艦ヤマト

アクエリアスアルゴリズム』は宇宙戦艦ヤマトについて、「歴史の授業で教えられている」との設定を付加しました。さらに、伝記映画やドラマの形で社会にリフレインされている、との設定もありました。前者については深める余地があって、例えば私たちはあまり歴史の授業で現代史を学ぶ時間はないのですが、2199年に地表を破壊されて”リセット”された地球社会にとってはこの20年の歴史が本当に大切だったのだろう、との想像もできますね。

さて、『アクエリアスアルゴリズム』におけるヤマトはどんな存在かというと、上述したように、決して忘れ去られているのではありません。むしろ、「今の世界を作った(守った)功労者」としてリスペクトされている。

ところが、『アクエリアスアルゴリズム』におけるヤマトは、ただひたすらに「過去」の存在。それが、本作の描く地球社会における「宇宙戦艦ヤマト」像です。

過去を忘れ去ったり、虐げたりするのではなくリスペクトする、でも「過去」として扱う。そこが2021年のリアルなのかもしれませんね。

 

ちなみに本作のラストでは、「宇宙戦艦ヤマト」が疑似的に復活します。忘れたわけでも虐げているわけでもない、しかし「過去」になった存在を「現在」に再現する、あの式典です。これは、忘れたわけでも虐げているわけでもない、しかし「過去」になった旧作を「現在」に蘇らせようとする、本作の性格とよく似ているなと思います。