こんにちは。ymtetcです。
今日は『ヤマト2205』の挿入歌「別離」の、主題歌としての側面について考えていきます。
〇「別離」の歌詞
いまも心にのこる いとしいおもかげ
ひかる泪のなかの 優しい微笑み
挿入歌「別離」の歌詞は、歌い手である”わたし”が、遠い宇宙に旅立っていった”忘れ得ぬあなた”との「別れ」を追憶する場面から始まります。”いまも心にのこる いとしいおもかげ”とは、”わたし”が”あなた”の姿を忘れていないことを示しています。
”ひかる泪のなかの 優しい微笑み”については、やや立ち止まって解釈しなければなりませんが、文字通りに情景を思い浮かべると、その意味が見えてきます。
この時”わたし”は泣いていて(ひかる泪)、その目には”あなた”の笑顔(優しい微笑み)が映っています。涙を流しているのは”わたし”。優しく微笑んでいるのは”あなた”。そして、最後に別れた時の記憶が、”いまも心にのこる”。というのが、このフレーズの語っている場面なのです。
ここで描かれているのは、「愛する人と最後に心を交わした記憶」だと言えます。
そしてこの曲は、クライマックスとなるサビでこのように歌い上げます。
永遠の愛を胸に秘めて
生きつづけます わたし
”あなた”への”永遠の愛”を胸に秘めて、”わたし”は生きつづける。「愛する人と最後に心を交わした記憶」があるからこそ、”わたし”は「明日」に向かって生き続けることができる。
この二つのフレーズは、まさに『ヤマト2205』のテーマを象徴しているわけです。
〇流れた場面と薮の存在
福井さんは、「別離」は脚本段階から流すと決めていたといいます。
もちろん、流した場面が場面(スターシャがイスカンダルの自爆を決意した場面)であるため、福井さんがどのようにこの曲を再解釈したのかは議論の余地もあるでしょう。ですが、このように歌詞を解釈した時、別離は確かに2205の主題歌たりえるのです。
ところで、『2205』の薮は、当初案では物語の中心にはいなかった(何となれば登場しなかった)キャラクターであったと言われています。『2205』で薮が担ったのは、『2205』のテーマの一つである「家族」、そして、主題歌「愛は今も光」が描いている「どん底の次には、きっと素晴らしいことが」を描く役割でした。
この薮がいなかったとなれば、当初案の『2205』は、デスラーが担った「愛する人と最後に心を交わした記憶があるからこそ、人は明日に向かって生きることができる」というテーマが中心になっていた可能性もあります。とすれば、あるいは「別離」こそが、当初の『2205』の主題歌だったのかもしれませんね。