こんにちは。ymtetcです。
『ヤマトよ永遠に REBEL3199』の構想期間は、西﨑彰司さんがイントロダクションで述べたように、5年以上にわたります。というのも、2019年付で提出された福井さんの企画書の段階で、既に「『2205』+『3199』」の形で『3199』が言及されているからです。
この期間、諸種の事情により制作が順調には進まなかったことが示唆されています。それはもちろん望まれていたことではありません。
ただ、これにはメリットがないわけではないと考えます。
制作中断がクオリティアップにつながった『ヤマト2199』
制作が順調に進まなかったリメイクシリーズ作品と言えば、シリーズの第1作となった『宇宙戦艦ヤマト2199』です。『2199』は『復活篇』『実写版(SBヤマト)』と連動した企画として、同時期にテレビでの放映が想定されていた作品でした。
しかし、『2199』も諸種の事情により制作が中断しました。
ただ、それは結果的に、『2199』の「UC方式(先行上映&BD販売)」への転換のチャンスと、長きにわたる制作期間に裏打ちされた設定のディテールへと結実しました。テレビシリーズよりも豊富なリソースを投入できるUC方式が、『2199』の映像作品としてのクオリティアップに直結したことは、言うまでもありません。
構想期間そのものが短かった『ヤマト2202』
一方、「福井ヤマト」の第1作となった『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』は、『2199』ほどに準備期間があったわけではありませんでした。
福井さんが『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』を「俺がヤマトをやるのかなぁ」との思いで観ていた2014年から構想が始まったとすると、2015年企画書提出、2016年特報公開、2017年第1章公開と、足掛け3年しかありません。
こうして『2202』は、序盤のアニメーション制作を進めながら終盤のシナリオを構想する、『2199』と比べて余裕のないスケジュールを余儀なくされました。
私はこのことが、シナリオと本編の意図のズレや、映像作品としての完成度のムラに繋がったと考えています。
「頭の中で整理する」重要性
『2199』公開時、全話のシナリオがネット上に流出したことがありました。それは今思えば正真正銘の「リーク」だったわけですが、しかし、あくまで準備稿であり、実際の本編とは異なるものでした。
とはいえ、この事実は、『2199』のシナリオが本編よりもかなり早い段階で仕上がり、またさらにブラッシュアップが行われていたことを示しています。制作中断によって結果的に転がりこんできた準備期間が、シナリオの整理に繋がったと私は推測します。
これと同じことが、『3199』にも言えるのではないでしょうか。
『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』のように「映画×2本」分のシナリオであれば、福井さん率いる脚本チームならば容易にこなせるでしょう。しかしながら、「映画×7本」分のシナリオを組み上げていくことの難しさは、『2202』の歴史が示しています。
それでも、潤沢な時間があればどうでしょうか。
映画『宇宙戦艦ヤマトという時代 西暦2202年の選択』における『2202』パートの再構成は、『2202』制作時点のシナリオとは視点の異なる角度で行われていました。
これはまさに、『2202』完結後の2年間が、福井さんたちに「『2202』を再構成する」時間を与えたからに他なりません。(制作が中断しなかった”模範生”の『2202』にかけるべき言葉ではありませんが)もしも『2202』にもう2年間の準備期間が与えられていたならば、あるいはもっと洗練された映像作品のシナリオに仕上がっていたかもしれません。
そう考えると、『3199』には、既に、その準備期間があると言えます。
制作が中断すれば、映像面での制作は基本的に進まないでしょうから、映像作品としての品質は、7月19日になってみないと分かりません。
一方で、シナリオ面では、『2202』と比べて、間違いなく福井さんたちのなかで「整理された」シナリオが、私たちのもとに届けられることは確実だと考えます。