今日は突然ですが、モータースポーツ、F1のお話をしてみたいと思います。
日本のF1ブームというと、1980年代から90年代前半のアイルトン・セナ人気によるブームを指し、そのセナの不幸な死によってブームが終焉した、と言われるのが一般的です。
しかし、2010年代の「モータースポーツ冬の時代」を迎えるまで、その人気が衰えていたかと言われるとそうではありません。
2000年に復帰したホンダ、フェラーリと手を組んで世界を席巻したブリヂストン、満を持してF1に参戦したトヨタ、日本のプライベートチーム・スーパーアグリ。
2000年代は、第二次F1ブームというよりは、セナ時代のブームから「ファン」へと定着した、ある意味では健全な時期だったと思います。
2010年代から、F1は「オタク」のコンテンツになってしまったのですから。
今でこそ「オタク」すなわち熱心なファンの方々に批判される「地上波中継」も、2000年代は上手く機能していたと思います。
ともすれば「同じところをグルグルしているだけ」といわれかねないF1を、「過激な程に煽るOP演出」と「V.S演出(バトルをしているドライバーのテロップを出す)」で盛り上げたのです。
無論関係のない芸能人起用は批判されるべきことかもしれませんが、それもまたF1が社会で一定の地位を得るためには必要なことだったでしょう。
しかし2008年、リーマンショックの波が日本のF1を襲います。
08年、スーパーアグリ、ホンダ撤退。
09年、トヨタ撤退。
10年、ブリヂストン撤退。
スーパーアグリとは直接関係がありませんが、毎年のように日本企業がF1から手を引いていくという事態が、2010年にかけて発生します。
そして2011年、F1の地上波中継が終了。
2012年に小林可夢偉が表彰台を獲得し、2015年からはホンダがF1に復帰する中でも、F1というコンテンツは再び表舞台に立つことはなく、今も下火の現状が続いています。
今のF1が下火であるという象徴として、音の問題を挙げておきましょう。
「F1の音」というと、今でもストレートを駆け抜ける際のファーンという甲高い音を想起する人が多いと思います。
しかしもう、F1の音は甲高くありません。今のいわゆる「エンジン」はパワーユニットと呼ばれ、「ターボエンジン+電気回生」で動いています。音はスポーツカーのそれに近く、ブーンといった感じの低いものです。
それでも「F1の音」といえば、未だに00年代の甲高い音なのです。
これは、日本人一般の「F1」認識が、00年代のまま止まっていることの表れだと思います。
リーマンショックを機に撤退した日本企業。テレビ地上波中継の終了。日本人ドライバーの不在。
今や日本のF1は熱心なF1ファン=オタクのものになっており、一般層から生じる「一般ファン」はほとんど消え去っています。
そんな中、私が新たなファン層として期待しているのは「スポーツファン」達です。
F1も今はフジテレビだけでなく、DAZNでの中継を行っています。
DAZNはサッカー、野球という観客の多いスポーツの中継でも存在感を発揮しており、それを目的としたアカウントでも、F1など他のスポーツを観ることができます。
F1は日曜日の夜という決して悪くはない時間のスポーツですから、他のスポーツを観る層から何気なく「F1も悪くない」という声が聞こえてくることに、かすかな期待をかけています。
しかしそれは、DAZNにおけるF1中継が面白いということが条件でしょう。
今やF1は必ずしも面白いレースばかりではありません。そこをどう面白く伝えるか。
GAORAのインディカー中継のような「居酒屋」中継もアリでしょうし、ブーム時代のプロレス型中継も反発は買うでしょうが悪くはないと思います。
フジテレビは川井一仁という、ヨーロッパのF1界でも顔の広い専門家を起用できているのですから、専門路線を突き詰めていくのが良いと思います。
しかしDAZNの場合は小倉さん中野さんといったライトファンにもフレンドリーな解説陣を起用しています。楽しいレースではなくとも、楽しげに中継することは可能でしょう。
新しい中継枠であるDAZNでこそ、既存のファンやスタイルに囚われず、様々な取り組みを積極的に行って欲しいと思います。
せっかくホンダがF1で毎年改善を続け、福住や松下といった若手ドライバーもF1を目指して恥ずかしくない成績を残しているのですから、広くその努力が伝わって欲しいと私は思います。