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偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

ヤマト2202と銀河:⑥銀河登場の背景

〇銀河登場の背景

  •  はじめに

 今日は、地球政府が「官製人類最後の希望」すなわち波動実験艦銀河を用意するに至った理由について、2202と「さらば」を簡単に比較することによって明らかにしてみたいと思います。

  •  2202と「さらば」の比較:危機感

 2202と「さらば」の違いとして挙げられるのが地球政府の危機感です。これまで指摘してきたように、「さらば」においては前提として地球政府の慢心と、波動砲装備の艦隊に対する過信が存在しています。

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 2202の地球政府は時間断層という魔法の箱を持っており、第2話の時点でアンドロメダ級を5隻完成させています。ガトランティスの脅威をガミラスとの同盟関係の中で認識しているとはいえ、アンドロメダは初陣で大戦果を挙げていますから、慢心と過信があってもおかしくありません。ですが、第五章をご覧いただければ分かるように、2202の地球政府は決して慢心をせず、時間断層をフル稼働させて規格外の波動砲艦隊を装備した上、その波動砲艦隊すらをも過信しないで、背後に<G計画>と<銀河>を用意しています。2202の地球政府がこれほどまでに危機感を抱いている背景には、何があるのでしょうか。私は二つの要因が考えられると思います。

 まず一つ目は完全な推測ですが、「地球はガトランティス以外の危機にさらされている」(かもしれない)ことです。第18話の絵コンテ集には本編でカットされたセリフがいくつか存在していますが、その中に藤堂早紀(銀河初代艦長)の「コスモリバースの奇蹟は消えた」というセリフがあります。コスモリバースとは前作2199で地球を元の姿に戻したコスモリバースシステムを指していると思われますが、これは既に、時間断層というとんでもない副産物を発生させています。副作用的に地球へ新たな危機をもたらしている可能性も否定できません。

 ただし、この可能性はまさしく2202の「未来」に関わる部分なので、2202の「過去」から銀河について論じていく本シリーズの論点からは少しずれています。2202の地球政府がこれほどまでに危機感を抱いている背景として、もう一つは「過去」から指摘することにしましょう。

 何故、地球政府はこれほどまでに危機感を抱いているのか。それは

 レギオネルカノーネ

 との出会いがあったからだと私は考えます。7話でヤマトは250万隻の大戦艦と対峙しました。その大艦隊は一つの大砲を形成し、照準を地球へと合わせます。ズォーダーはこれによって波動砲を撃つか否かという選択を古代に強いていて、こちらの方がむしろ本編では重要な部分なのですが、一方で、地球政府から見れば、あっという間に滅亡の危機へと陥ったということを意味しています。政府としては、このレギオネルカノーネに対抗するだけの戦力を仕立て上げ、これだけの戦力を待つガトランティスに対抗するだけの国力を持つ必要があったのです。

 また、本編中にしばしば「状況は伝えた」というセリフがあるように、ガトランティスの情報が逐一ヤマトから地球政府へと送られています。インフェルノカノーネの情報があったからこそ重力子スプレッドでそれを無効化することが出来た訳ですし、蘇生体の情報がもたらされていたからドレッドノートの艦名は伏せられている訳です。第一話の激おこ大戦艦の襲撃も併せて、地球政府は序盤からガトランティスを脅威と認識することができた。これが時間断層をフル稼働させ、銀河を建造した地球政府の抱く危機感の背景だと私は考えます。

  • おわりに

 銀河の担うG計画とは何か、その目的とは何かはまだ分かりません。明らかになっているのは、銀河がコスモリバースシステムを搭載していること。コスモリバースシステムの全容すら明らかになっていない現状ですから、果たしてそれを用いて何をするのかというと、何とも予想しがたいものがあります。よって銀河が登場した真の背景は第六章回生篇を観ずして知ることは出来ませんが、今回の記事では銀河登場の背景を地球政府の危機感に求め、その危機感の要因としてレギオネルカノーネの存在を指摘しました。逆に言えば、銀河登場の背景を考えることによって、レギオネルカノーネの意味を考えることにもなりましたね。地球政府の危機感という一点において「さらば」との違いを出させる、という重要な役割をレギオネルカノーネが担っていたと言うことが出来ます。

 さて、次回の「ヤマト2202と銀河」記事はとうとう終章になる予定です。終章では、「過去」を振り返ってきたこれまでの議論をまとめつつ、「人類最後の希望」という概念に基づいて、これからの2202の「未来」へも目を向けていきたいと思います。

次回:ヤマト2202と銀河:⑦終章:「過去」と「未来」 - ymtetcのブログ