こんにちは。ymtetcです。
今日は、この記事の続編を書いていきたいと思います。
#宇宙戦艦ヤマト
— ymtetc (@ymtetc) 2021年11月28日
【ヤマト2205】「反乱」によって戦争を避ける - ymtetcのブログhttps://t.co/Ir4oRUEFFG
○「反乱」までの流れを整理する
まずは、「反乱」が成功するまでの流れを逆算する形で整理しておきましょう。
- 「反乱」が成功し、ヤマトはイスカンダルに向かう。
- ↑ 先輩ヤマトクルーたちが芹沢・山南・バレルを艦外に出す。
- ↑ 古代も「反乱」を起こす。なぜなら古代たちも、「反乱」を起こしたかったから。
- ↑ 土門たちの「反乱」が失敗する。
- ↑ 土門たちが「反乱」を起こす。
- ↑ イスカンダルを救おうとする古代の再提案が否決される。芹沢たちを乗せてイスカンダルに向かうことは、地球を星間戦争のリスクに晒すことになるから。
- ↑ 第65護衛隊のイスカンダル救出が否決される。戦争のリスクを最小化するため。
- ↑ イスカンダルに向かおうとしない艦隊に、土門たちが不満を持つ。
- ↑ ガミラスとイスカンダルの状況が判明する。
- ↑ 艦隊が亜空間ゲートに迫る。
- ↑ ガミラスが消滅する。
- ↑ ガミラスがデザリアム軍の攻撃を受ける。
- ↑ 第65護衛隊、訓練を行う。
- ↑ 第65護衛隊、「軍備よりも人命を重んじた地球の平和主義を体現する」ヤマトを旗艦として、イスカンダルに向かう使節団を乗せて旅立つ。
- ↑ ヤマトが高次元宇宙から帰還する。
- ↑ 国民投票の結果、時間断層を破棄して古代と森を救出することに決まる。時間断層の維持という、地球の利益にかなう合理的な判断を否決した形。
- ↑ ヤマトが滅びの方舟を消滅させる。
- ↑ ガトランティス戦役。時間断層を活用した大波動砲艦隊による、終わりなき持久戦。
このように整理すると、『2205』の「反乱」はガトランティス戦役にまでさかのぼることができます。
○地球社会の矛盾
ガトランティス戦役で国民の間には厭戦気分が広がりました。このまま軍備を拡大しつづけても、ロクなことが待っていない(気がする)。そんな山南と同じような気分を国民の多くが共有していたからこそ、地球社会は、(僅差だとしても)非合理的な「時間断層を犠牲にして古代と森を救う」選択をした。それほどまでに「戦争」というものを嫌っていたのが、『2202』最終話の地球社会であったと思います。
時は流れて西暦2205年。同盟国ガミラス本星の消滅とイスカンダル星の危機に、地球が選んだのは「介入しない」という選択肢でした。それどころか地球社会では、「(介入せざるを得なくなるから)ガミラスとの安保条約も解消しよう」との議論までなされていたようです。なぜ、地球社会はここまでイスカンダル問題への介入に消極的なのか。それは、「戦争」を今の地球社会は極端に嫌っているからです。
この厭戦気分は、間違いなくガトランティス戦役から続くものでしょう。かつて古代進を救い出した厭戦気分が、今度は古代進の意見とは真っ向から対立したわけです。
ここに、地球社会は矛盾を抱えていると考えます。
軍備より人命を重んじると言いながら、イスカンダルは救わない。ガミラス国民も救わない。どんな手を使ってでも、戦争のリスクを最小化しようとする。なぜなら戦争が起これば、大多数の地球市民が苦しむことになるから。より多くの犠牲を払うことになるから。ガトランティス戦役のような思いは、もう絶対にしたくない。だからイスカンダルは救わない。地球は地球の利益を守る。
ガミラスやイスカンダルの利益より地球の利益を優先するのは、ある種地球市民とすれば当然の判断で、間違っているとは言えないでしょう*1。でもそれは、「人命を重んじる地球の平和主義」という看板……地球が掲げる理想像とは矛盾しています。かつて古代進を救い出した、あの国民投票で体現したものとも矛盾するものです。
「人命を重んじる地球の平和主義」は、間違っているとは言えません。しかしイスカンダルを救わない地球政府の選択も、間違っているとは言えません。
”正しい”理想を掲げていたはずなのに、日々続く現実の中で”正しい”判断を下していけば、いつしか理想と現実が矛盾してしまう。そんな『2202』から続く福井さんの社会観は、『2205』で物語の主軸が変わっても、脈々と受け継がれているのではないでしょうか。
少数(古代進、イスカンダル/ガミラスの人々)の利益と多数(時間断層、地球の平和)の利益。『2202』ラストで地球市民は前者を選びましたが、『2205』で地球政府は後者を選びました。その根底にあるのは、いずれもガトランティス戦役に対する強烈なアレルギー、国民の厭戦気分です。同じものが根底にあるのに、全く異なる選択をする。土門のいう「ポピュリズム」との批判は、核心を突いているかもしれませんね。