ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

「話し言葉」と「書き言葉」とSNS

こんにちは。ymtetcです。

前回の記事で、最後に小林さんのTwitterを引用しました。これを見た時に思うところがあったので、今日はそれを語ってみたいと思います。

小林さんのTwitterを見て改めて思ったのは、話し言葉調の書き言葉」と「話し言葉」はまるで違う、ということです。この二つの違いをきちんと、意識的に区別していきたいと思いました。

話し言葉調の書き言葉

話し言葉」と「書き言葉」が異なるのは自明です。

ですが、SNSやブログ・掲示板に溢れているのは、一見すると「話し言葉」に見える「書き言葉」。これを今日は「話し言葉調の書き言葉」と呼んでおきます(専門的な呼称があるかもしれません)。

話し言葉調の書き言葉」と言えば、まさにこのブログがそうです。「です」「ます」調でこのブログは書いていますが、私は日常こんな話し方はしません(笑)。声に出して読んでみると分かりますが、「話し言葉」としては少しまどろっこしいですよね。このブログで用いているのは「書き言葉」、すなわち「話し言葉調の書き言葉」です

この「話し言葉調の書き言葉」、もちろん我々は潜在的に「これは話し言葉とは異なる」との認識を持っています。ですが、あまりに「話し言葉」として脳内に入り、あるいは脳内から出されていくがために、ついつい「書き言葉」であることを忘れてしまいがちなのです。

私も、小林さんのTwitterを見て久々に「これは話し言葉ではない」ことを思い出しました。そこで、改めて意識的に区別をしたい、と考えた次第です。

〇インタビューはひとつの「話し言葉

前回引用した小林さんのツイートは、まさに「小林誠節」と言ってもいい彼独自の語り口でしたね。

ところが、ブログの記事を書く中で(これまた久々に)『航海日誌』の小林誠インタビューを読んで、あることに気が付きました。『航海日誌』のインタビューとして掲載されている小林さんの言葉は、『復活篇DC』コメンタリーで実際に話しているのを聞いた、まさにあの口調なのです。「話し言葉」から文字起こしされたインタビューなのだから当然ですが(笑)。

そこで思い至りました。小林さんは相当、Twitterでの「話し言葉調の書き言葉」によって損をしている、と。小林さんは一人です。考えていることそれ自体は、インタビューでもTwitterでもさほど変わりはありません。

『ヤマト』や『ガンダム』が大ヒットした作品だという事実を「それは過去の話」と冷静に処理してみたり、劇場版『ヤマト』を「面白いものではなかった」、『さらば』を「もう結構冷めていた」などと評してみたり。「『復活篇DC』がきっかけで『2199』は軌道修正できた」や「『2199』はヤマト版『ガンダムセンチュリー』」なども、Twitterで読んだことのある話です。それなのに、受ける印象はまるで違う。

なぜかといえば、Twitterで見られる「高圧的」に見える言動や「マウントをとる」ように見える言動が「話し言葉」にはないからです。もちろん、SNSが本性を暴いたのだ、自業自得だと言ってしまえばそれまでですが、事実として、同じ考えを主張しているツールなのに、Twitterは『航海日誌』よりもはるかに、小林さんの評判に悪影響を与えていると言えます。

〇「話し言葉調の書き言葉」の落とし穴

こうなってしまった背景に、「話し言葉調の書き言葉」の落とし穴があると考えています。

これはあくまで私の実感ですが、「書き言葉」はしばしば暴走するのです。

自分の考えがスムーズに画面へ入力されていくと、どこかで自分の考えや言葉が「真っ当なもの」に見えてきて、言葉が暴走してしまったり。あるいは、自分の感情を”盛った”表現で書き込んでしまったり(例:不必要に暴力的な表現を用いたり)。

それは、「書き言葉」は言葉を客観視できるがゆえに、「修辞的」なものを書こうとする意識が強くなってしまうからだと考えています。

これは、口に出しては言えないような言葉も簡単に入力できてしまう、ワープロ時代の「書き言葉」がもつ大きな落とし穴ではないでしょうか。単に表現が過激になってしまうだけならまだしも、「思ってはいるけど面と向かっては言えないようなこと」まで送信してしまうこともありますからね。

日々ブログを書きながら私が感じている「危うさ」と、小林さんの『航海日誌』とTwitterにおける「言葉」のあまりの違いに、改めて気付かされるものがあったわけです。

〇「話し言葉」と「話し言葉調の書き言葉」の違い

一つ、小林さんが紡いだ「言葉」から、「話し言葉」と「話し言葉調の書き言葉」が異なる例を紹介します。

特に声に出して読んでみると、その「口調」の違いがよく分かるかと思います。

Twitter

又、数年前、1974をガンダムセンチュリー的に解析しつつ、物語を広げる2199企画の全貌を見たとき、原作者を始め、ネットをはじめ、全てが否定的な意見だった空気に立ち向かって、本当に良かったなぁと、思っています。

https://twitter.com/makomako713/status/334614430287556608

<航海日誌>

(略)『2199』の第1話、第2話ができた時点では「本当にこれでいいのか」って話が内側からも出てましたけどね。(略)でもそうやってみんなが『2199』という作品に対して悩んでいるなか、出渕さんは「ガンダムセンチュリー」を『ヤマト』でやりたいんだ、と言ったんです。(略)たしかに『2199』が始まる前、なんでまた『ヤマト』なんだって思われていました。(略)でも『2199』の成功が『ヤマト』を変えてくれたんです。

(『宇宙戦艦ヤマト 航海日誌 Vol.15』16ページ)

例えばここでは、「全てが否定的な意見だった空気」との表現なんかが、『航海日誌』よりも少し”盛られて”いる表現だと言えます。

そして、これはあまり関係ありませんが、おまけです。

<『復活篇DC』コメンタリー(ymtetcによる文字起こし)>

こんにちは、監督、えーと、ヤマト復活篇、ディレクターズカットの監督代行をやらしていただきました、小林誠です。

(略)

で、今回は、この画を見ながら、羽原君に、ちょっとこういうところを工夫してみましたみたいなとことかを、細かく言ってもらいつつ、みたいな話なんですけど。どうです、よろしいですか。

(羽原:がんばります。)がんばんなくていいよ(笑)。

(略)

この字幕入れるの僕、ねぇ、ヤマトっていうと僕やたら字幕あるなぁみたいなのがあって。なんか、もともとそういうはじめの古代、髭の古代がいるあの中継ステーションみたいなやつね。あそこに字幕入れて、これで(他の人も)ついてくるんだろうなと思ったんだけど俺のとこだけになっちゃって(笑)。それはちょっと(DC版で)色々(字幕を)入れて欲しいなと。うん。

(略)

だいたいみなさんが思っているヤマトらしさの共通点っていうのがないとややもすると「俺ヤマト」になっちゃう。(羽原:そこが難しいですよね。)うん。

〇意識しておきたいこと

話し言葉」「書き言葉」については、調べれば色々と研究があると思います。今回はそこまで深追いせず、私個人のレベルで止めておきましょう。

途中、「書き言葉は暴走する」と書きましたが、「SNSと実際の印象が違う」人はまさに、この「暴走」によって生まれるのだと考えています。「暴走」していなくても、少なからず誰しも、SNSと実際の印象は少しずつ乖離していますが。

いますよね、メールやSNSでは饒舌なのに実際に話すのはあまり得意ではなかったり、あるいはSNSやブログになったとたん自信ありげに大風呂敷を広げるような発言を繰り返していたり。私のことです(笑)。

もちろん、SNSが本性を暴露するツールであることも間違いありませんから、それで印象が悪くなったとしても、本人の責任ではあります。

話し言葉と書き言葉は、違っていていいものです。ですが、乖離しすぎて人格があたかも分裂したかのような状況を生みだすのも、これまたいいことではありません。

文字を書くときも読むときも、これが「話し言葉調の書き言葉」であることを意識しながら、バランスをとって言葉を捉えていきたい。そう改めて思いました。

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