こんにちは。ymtetcです。
このシリーズ、覚えている方はいらっしゃるでしょうか?「下書き」一覧の最下層部にタイトルが転がっていましたので、久々に、この作業をやってみたいと思います。
この企画「福井晴敏の『ヤマト2202』語り」は、『2202』シリーズ構成・福井晴敏さんのインタビューやコメントから、ひたすら「『ヤマト2202』とは何か」に関する語りをメモして、蓄積していくものです。前回の記事はこちら。
もう4か月も前ですか……。
そして、ここまで蓄積してきた「『ヤマト2202』とは何か」に対する答えがこちらです。
- <『さらば』として>
- 『さらば』が訴えていたものを「解体」し、時代的な違いを反映させた作品。
- 「『さらば』に触れた人」が、それを「もう一度体験する」作品。
- 「『さらば』のリメイク」を筆頭としたお題に100%答えた作品。
- 当時『さらば』を見た人たちが「どう感じたかということを今風に読み解いて」作った作品。
- 「自分たちの中の古代進と向き合って」、「意思疎通」する作品。
- 40年前と今の「違い」という「ストレス」を抱えている「あなたの物語」。
- 「40年前の旧作に対して、今の日本はどうなんだ」という作品。
- <『愛の戦士たち』として>
- 愛をヒューマニズム(人間性)として描き、肯定した作品。
- 「愛の戦士たち」という「タイトルに恥じない現在の作品」。
- 「愛のために人間がどれだけ自分自身を裏切らなくてはいけないか」を描く作品。
- <『宇宙戦艦ヤマト』として>
- 「戦艦なのに反戦」という「矛盾」を「真正面から受け止めた」作品。
- <現代のアニメーション作品として>
- 「人が生きていく中で、誰もが経験すること」を描いた作品。
- 「生きていく上で」の「辛いこと」を「ぶちまけて共有」する作品。
- 「思っていた未来と全く違う」状況からどう脱却するかを描きつつ、脱却した先の苦労をも描き、その苦労を乗り越える意味はあったのか?を描く作品。
- 「今いるアニメファン層とは別に、今迷っていることや悩んでいることがある人に向けて、何らかの道筋が見えるような作品」。
- 「失いたくない」「と思える何かに出会えた」という「幸せ」を描く作品。
- <商業作品として>
- 『宇宙戦艦ヤマト2199』が逃した「潜在顧客」を掘り起こしていく作品。
- 『宇宙戦艦ヤマト』が「一度上った高みまで上り詰めて、そこを越え」ることを目指す作品。
- <本編の描写について>
- 「力の論理」が「ぶつかり合った」「バカバカ」しさを描く作品。
- <福井さんと作品の関わりについて>
- 「最初に思ったものをしっかり形にできた」作品。
- 福井さんが「絵コンテまでは手取り足取り」携わった作品。
改めて見ると、色々な言い方をしてくれているものですね。
今日も前回に引き続き、福井さんのインタビュー・コメントを読んでいくとしましょう。
まずはこれです。
非常に短いですね。ここには、
福井さんは「(作品では)鋭いことを、今という時代にガチッと刺さることをやっていますので、あらゆる世代の方が楽しんで見られると思います」と語った。
とあります。ここから導き出されるのは、
- 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』とは、「今という時代にガチっと刺さる」作品である。
- 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』とは、あらゆる世代の人が楽しめる作品である。
この二つです。いかにもPR用のコメント、という感じがします。
さぁどんどんいきましょう。次はこちら。
福井:
古代を見ていただければお分かりになると思いますが、古代は今回、ひどい目にたくさん遭います。それを「ひどい」と感じるのは、皆さんも同じ経験をどこかでしてきたからこそです。子どもたちがターゲットの作品ならまた違うのですが、人生経験を積んだ人がメインターゲットの作品であれば、アニメとはいえ演出力も画力も上がっているから、こういった話がやれるんじゃないかと考えました。(略)40年前の古代進は「こんなに苦労し、絶望する未来に汲みするぐらいなら死ぬ」と、森雪とともに理想に殉じたわけです。でも今回、古代進に対して「生き続けるならこういう奇跡があるかもしれないよ」と立証できれば、「さらば」に対する返答になるかという気持ちでした。受け取られる方は様々だと思いますが、何をしたかったかというと「さらば」に対して40年ぶりに返事を書いたというのが自分の答えです。『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』最終章舞台挨拶レポート、「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」への40年越しの返事 - GIGAZINE
この記事の要点は、こちらのコメントに集約されていますね。ここから導き出されるのは、
- 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』とは、人生経験を積んだ人がメインターゲットの作品である。
- 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』とは、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』に対する(福井晴敏なりの)返答である。
です。特に後者はしっくりくるかなと思います。『2202』は福井さんの「俺『さらば』」だったと見てもいいかもしれません。
ただ、前者の「人生経験を積んだ〜」は、先述の「あらゆる世代の人が〜」と矛盾しないのでしょうか。福井さんの脳内では矛盾していないのだと思いますが、少し考えてみたい問題です。
どんどん進みましょう。次に読みますのはこちら。
前編のリンクも貼っておきます。前編から引用する言葉はなかったのですが、この一連のインタビューは、インタビュアーの方が熱心だったのか、第二章時点だったからなのか、『2199』関連の話題が他に比べて出ています。
では、後編から。
福井 「2199」って「世界」を描こうとしていたと思うんですね。前作では世界観を作り込んでいって、その世界観に浸って楽しむという描き方が大きかった。でも、一般層に向けた映画って、やっぱりお客さんは「誰が何をやったか」に興味が向くんですよ。なので、今回は人間を描こうと。より普通の人が見やすい感じにしようと考えていくと、基本的に「古代進という男の物語」をきちんとやろうということで。それは、前とは明らかに違うところだと思いますね。
ここから導き出されるのは、
- 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』とは、「一般層に向けた映画」である。
- 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』とは、「古代進という男の物語」である。
です。ちなみに、古代について福井さんは「多くの人が社会に出れば直面するようなことを、1人で片っ端から引き受けている状態」だと表現しています。
やはりこのインタビュー記事のいいところは、『2199』の話題がいくつか振られていることです。引用部でも、福井さんは「『2199』って『世界』を描こうとしていたと思うんですよね」と述べていますね。
実は、福井さんによる『2199』評はとても少ないんです。福井さんが論じるのは常に『さらば』でした。そこがまた、『2202』の印象を「『2199』の続編」から遠ざけている要因だったのかな、と私は思います。その意味では、この時のアキバ総研様のインタビューは特別な価値のあるインタビューだったと言えるでしょう。
また、「『世界』を描こうとしていた」との言葉は映画『ヤマトという時代』にも繋がる表現で、興味深いものがあります。
では、さらに進みます(こんなにサクサク進むシリーズだったかな?)。
制作発表時の記事ですね。こちらも短いので、
- 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』とは、「希望」や「指針」を提示する作品である。
としておきます。『2202』は第25話まで古代を苦しめ、最終話でその苦しみから一挙に解放するという少し歪な構成をとっていました(もちろん、その途中で山南や早紀や加藤が解放されるドラマもありましたが)。色々と言われてしまった『2202』ですが、「苦しみからの解放」を丁寧に描くことは十分にできていたと思います。その意味では、有言実行ですね。
(作業時間的に)次がそろそろ最後になりそうです。
ここでは作品論はあまり語られていない(というより、作品論は岡さんが語っている)のですが、一つ面白い表現を福井さんが使っていたので、引用します。
- 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』とは、(特攻=自爆テロ、特攻≠神風になりつつある時代に)「もう一度、愛を描く」作品である。
福井さんが何度も使っている「特攻=自爆テロ、特攻≠神風」の図式です。私はこれを初めて見た時、「怒られるんじゃないかな?」と心配していました。「特攻が神風じゃない」と言ってみたって、結局「特攻」とは「特別攻撃」の略なんですから、神風と切り離すことはできませんよね。保守的な人は「特攻と自爆テロを一緒にするな!」と怒るんじゃないかな?と心配していたわけです。
実際は福井さんよりも小林さんが怒られる時間の方が長かったので、あまり大きな議論にはなりませんでしたが……。怒っていた人はいたんじゃないかな? と思います。
恐らく福井さんは、「神風特攻隊」と「自爆テロ」を”人間性ゆえの行動”と解釈することで、「人間は(人間性を持っているがゆえに)人間として死ねないこともある」との表現がしたかったのではないでしょうか。これは深く考えてみてもいい話題かもしれませんね。私が保守的な方に怒られることになってしまうかもしれませんが……。
さて、今日はこの辺りにして、最後にまとめておきましょう。
〇まとめ
今回読み取ったのは、こちらでした。
- 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』とは、「今という時代にガチっと刺さる」作品である。
- 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』とは、あらゆる世代の人が楽しめる作品である。
- 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』とは、人生経験を積んだ人がメインターゲットの作品である。
- 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』とは、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』に対する(福井晴敏なりの)返答である。
- 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』とは、「古代進という男の物語」である。
- 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』とは、(特攻=自爆テロ、特攻≠神風になりつつある時代に)「もう一度、愛を描く」作品である。
アキバ総研様のインタビューが面白かったので、かなり時間を使ってしまいました(笑)。
ではこちらを、最初のまとめと結合させておきましょう。
『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』とは……
- <『さらば』として>
- 『さらば』が訴えていたものを「解体」し、時代的な違いを反映させた作品。
- 「『さらば』に触れた人」が、それを「もう一度体験する」作品。
- 「『さらば』のリメイク」を筆頭としたお題に100%答えた作品。
- 当時『さらば』を見た人たちが「どう感じたかということを今風に読み解いて」作った作品。
- 「自分たちの中の古代進と向き合って」、「意思疎通」する作品。
- 40年前と今の「違い」という「ストレス」を抱えている「あなたの物語」。
- 「40年前の旧作に対して、今の日本はどうなんだ」という作品。
- 『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』に対する(福井晴敏なりの)返答。
- <『愛の戦士たち』として>
- 愛をヒューマニズム(人間性)として描き、肯定した作品。
- 「愛の戦士たち」という「タイトルに恥じない現在の作品」。
- 「愛のために人間がどれだけ自分自身を裏切らなくてはいけないか」を描く作品。
- (特攻=自爆テロ、特攻≠神風になりつつある時代に)「もう一度、愛を描く」作品。
- <『宇宙戦艦ヤマト』として>
- 「戦艦なのに反戦」という「矛盾」を「真正面から受け止めた」作品。
- 「古代進という男の物語」。
- <現代のアニメーション作品として>
- 「人が生きていく中で、誰もが経験すること」を描いた作品。
- 「生きていく上で」の「辛いこと」を「ぶちまけて共有」する作品。
- 「思っていた未来と全く違う」状況からどう脱却するかを描きつつ、脱却した先の苦労をも描き、その苦労を乗り越える意味はあったのか?を描く作品。
- 「今いるアニメファン層とは別に、今迷っていることや悩んでいることがある人に向けて、何らかの道筋が見えるような作品」。
- 「失いたくない」「と思える何かに出会えた」という「幸せ」を描く作品。
- 「今という時代にガチっと刺さる」作品。
- 人生経験を積んだ人がメインターゲットの作品。
- 「一般層に向けた映画」。
- <商業作品として>
- 『宇宙戦艦ヤマト2199』が逃した「潜在顧客」を掘り起こしていく作品。
- 『宇宙戦艦ヤマト』が「一度上った高みまで上り詰めて、そこを越え」ることを目指す作品。
- あらゆる世代の人が楽しめる作品。
- <本編の描写について>
- 「力の論理」が「ぶつかり合った」「バカバカ」しさを描く作品。
- <福井さんと作品の関わりについて>
- 「最初に思ったものをしっかり形にできた」作品。
- 福井さんが「絵コンテまでは手取り足取り」携わった作品。
かなり充実してきましたね。
このシリーズを始めた時に、福井さんの発言が載っていると思しきネット記事をまとめてブックマークしていました。今回紹介した記事の時系列がバラバラだったのは、その時バラバラにブックマークしていたからです。
その時のブックマークはかなり消化してきましたので、もう数回やれば、今回のチャレンジは一応完遂ということになるのかなと思います。どこかのタイミングで、また「パート6」をやりますので、よろしくお願いします。
今回は淡々と作業をしました。何だか悔しいので、以前「福井晴敏の『ヤマト2202』語り」の成果として書いた記事のリンクでも貼っておきます。食い足りないなーという方は、久しぶりに読んでみてはいかがでしょうか。