ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【ヤマト2202】原作との乖離を招いた「エピソードの”付け足し”」

こんにちは。ymtetcです。

『さらば』を原作とする『ヤマト2202』。

ですが、この作品を観て真っ先に「この作品は『さらば』をそのままリメイクしたものだね」と評する人は少ないのではないでしょうか。さらに言えば、多くの人が「この作品は『さらば』を大きく改変している」との印象を抱くのではないでしょうか。

この点は福井さんも気にしているようで、2020年には「『2202』のときは、序盤はともかく後半へ進むにつれ、どこに『さらば』や『ヤマト2』(の要素)があるんだ? っていう展開になっていきました」と述べています。福井さん自身、2016年時点では「基本は『さらば宇宙戦艦ヤマト』を原作として……(略)テーマの再話を目的としたストーリーおよび設定の改変、再定義」と述べており、『2202』の原作『さらば』との乖離は、福井さんにとっても本来意図したものではないことが分かります。

では、これはなぜ起こったのか。羽原さん、小林さんのいわゆる「演出チーム」に目を向けてもよいところですが、今日は福井さんたち「脚本チーム」に目を向けます。

「付け足し」不可避の『さらば』テレビシリーズ化

当ブログの基本スタンスは、「『2202』は表面的には『さらば』とは異なるが、そのテーマ性(少なくとも福井さんの主観の上では)『さらば』を引き継いでいる」です。私としては、『2202』は、そのテーマについては、『さらば』を丁寧にリメイクした作品だと考えます。

しかしながら、『さらば』をリメイクする際につきまとう問題が、「原作が2時間30分の映画である」点です。つまり、テレビシリーズではないため、テレビシリーズに置き換えた時に、間延びしてしまう。これは、広義の『さらば』リメイクと言える『ヤマト2』の段階で指摘されていた問題でした。

『2202』も、『さらば』をテレビシリーズ化するにあたって、『さらば』を再現するだけでなく、何かを”付け足す”必要に駆られました。

「テーマは同じだがストーリーが違う」エピソードの投入

『2202』が「原作と乖離している」との印象を抱かせた原因は、この”付け足し”の進め方にあります。

『2202』は”付け足し”に、オリジナルのエピソードを投入しました。

その象徴が「悪魔の選択」です。

「悪魔の選択」は、”愛”の矛盾を描くという点で、福井さんの考える『さらば』のテーマに通じるエピソードではありました。しかし、そのストーリーは『さらば』でも『ヤマト2』でもない、完全オリジナル。

また、プロデューサー注文のタスクとはいえ、デスラーの過去エピソード、それに付随するキーマンのエピソードも原作にはありません。

”付け足し”のために、『ヤマト2』から引用したテーマを別に立て、そこに『ヤマト2』や『さらば』のエピソードを組み込んでいく進め方もあったでしょう。

しかし『2202』は、あくまで『さらば』のテーマ性を守ることにこだわり、そのためには、オリジナルエピソードを設定することも厭わなかった

『2202』スタッフの主観としては、「我々は本質的な意味で『さらば』をリメイクした」ことであったでしょう。しかし、それが結果的に、『2202』を「原作と異なる」作品であるとの印象を抱かせることに繋がったことも否めませんね。

「テーマは同じ」?

今後に向けては、もう少し議論を深めたいところです。

ポイントになるのは、私が前提として書いた「テーマは同じ」の部分でしょう。

『2202』のシナリオには、この点に関して、以下の論点があると考えます。

  1. 『2202』のオリジナルエピソードは、観客に「このエピソードのテーマは『さらば』と同じである」との印象を抱かせるような工夫がなされていたのか
  2. 『2202』のテーマは、原作『さらば』のテーマを本当に受け継いでいると言えるか

この2点は、恐らく受け手によって評価も変わってくると思います。特に後者は、『2202』理解以上に『さらば』の理解が問われますから、広く議論されてもいいテーマのように思いますね。