ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

宇宙戦艦ヤマト2202について その9 ―3話:岡さんの案と2202―

この季節は何だか眠たい日々が続きますね。今日は3話です。

「衝撃・コスモリバースの遺産」

と題されたこの3話は、第二章のオープニングエピソードとしてはバッチリだったのではないでしょうか。

基本的に舞台となったのは地球・月・第11番惑星。

駐在武官・キーマン中尉に誘われ月の大使館へ向かう……所で終わった前話からすれば、月から始まるのが親切です。

しかし3話は、第11番惑星から始まります。

劇場上映をリアルタイムで追いかけていると忘れがちなのですが、

本来、お客さんは2話の一週間後に3話を観ます。

いくら第一章を観た後”続きが観たい!”と悶え苦しんだとしても、四か月も経てばその気持ちもかなり薄れるのではないでしょうか。

一週間後に3話を観ると仮定すると、この11番惑星から始まるという演出もなかなかにオツなものです。

「前回のラストを『引き』で終えた際、次回は別の所からスタートさせる」というのは(上手くまとめられなかった……)結構ベタなやり方です。最近だとスターウォーズの「フォースの覚醒⇒最後のジェダイ(オクトー⇒レジスタンス基地)」なんかも該当するでしょうか。

ともあれ、地球・ガミラス融和の象徴とも言えるこの第11番惑星へのガトランティス軍の侵攻、というのがこの3話の大きなイベントの一つです。

旧作を知る人だと、はっきり言って11番惑星が襲撃されることなど予定調和のようにも思えてくるのですが、だからこそ、異なる点に注目してみましょう。

いつもの手順は既に踏んだ。

これ、何なんですかね。

多分公開直後から議論されていたと思いますが、未だに答えが出ないという。

シリーズが完結してもいまいち答えが出ないなどという前作みたいなことは起こして欲しくないのですが(念のため、2199も大好きですよ)。

とはいえ、ヒントとなりそうな部分は第四章までに出ていますね。

斉藤蘇生体説は恐らく6話「生きているのか?」以降ですから、ここでは関係ない可能性が高いです。

となると、やはり桂木透子かなと(結局それかい)。

小説版等では既に明かされていた(多分)のですが、ガトランティス軍による襲撃の前、太陽系全域で通信障害が起きて防衛軍の行動が遅れた、という事実が第四章で明かされます。

ピキーンみたいな音とミステリアスな雰囲気で桂木透子は\(^o^)/してた訳ですが、おそらくこれによって通信障害が引き起こされたのでしょう。ただし、

桂木透子はどうやって11番惑星に忍び込んだのか?

という疑問は残りますので、そのあたりは何とか公式に見解が欲しい所ですね。

明かされてたらすみません。

さて、月・地球では時間断層という存在が明かされ、ヤマトクルーが地球への謀反を決意するのですが、この辺りはいまいちヤマトクルーが突っ走り過ぎてついていけない所もあります。

地球への不満どうこうというよりは、テレザートに行きたいという思いの方が突っ走っている印象です。

何しろ私はコスモウェーブを食らってないので真意は分かりませんが、救難信号だと心で理解した、という旨を何度も言っているということは、この辺りも意図的にヤマトクルーを突っ走らせている可能性があります。

最近、思い出すんですよね。高木弘樹さんが仰ってたこと。

皆結論を急ぎたがるのはナゼ?

肝に銘じておきたいです。

 

では、時間断層に関連して標題の件を考えてみましょう。

岡秀樹さんは、2202で福井晴敏さんと共に「脚本」でクレジットされている方です。主に、福井さんのプロットをシナリオに起こすお仕事などをされているとか。

akiba-souken.com

この岡秀樹さん、羽原監督が連れてきた方なのですが、当初は羽原・岡チームでもシリーズの全体像のような案を持っていたそうです。

↓羽原・福井・岡 スペシャル鼎談

http://yamato2202.net/sp/special/special1_3.html

この案は、全26話の内13話で「さらば」の要素を使い切り、残り13話でガミラスイスカンダル・ガトランティスの因縁対決にヤマトが関係していく、という全体像だったようです。(第三章パンフより)

「2199の続編」という部分をメインに据えつつ「さらば」のネタを使っていくというスタイルを取るのであればこの案も結構面白そうですよね。

 

福井さんはこの案を「今これをやる意味がない」と否定したそうです。

これもある意味ごもっともだと思います。

以前の記事で述べましたが、ヤマトは既にカビの生えたコンテンツであり、「今この時代にヤマトをやる理由」っていうのが後付けでも存在していないと、ただの古参ホイホイでしか無くなるんですよね。

(※その点では、2199は震災を受けてシナリオを全面改訂するくらいのことが出来る状況だったら尚良かったなと思っています。エヴァQは震災の影響強かったですし)

こうして否定された岡・羽原案ですが、その中に含まれていた時間断層は、福井さんの判断で再利用されます。

 ● 時間断層に限らず企画書全体に「今、これをやる意味はない」とハッキリ言われましたね(笑)。僕もそう言われてカチーンときたので説明を求めたら、福井さんは待ってましたとばかりに身振り手振りを交えながら『2202』の話をし始めたんですけど、その話がとても面白かったんですよね。さすがだな、よく考えてらっしゃるなと感心してその気持ちを素直に伝えました。それでダメなものはダメと頭を切り替えていたところ、その翌々日に福井さんから電話が掛かってきて「時間断層を使いたい」と言われた。ちょっとリアクションが取れなかったです(笑)その電話で「時間断層を社会の暗部として使いたい」と説明されたんですが、それを聞いて「なるほど!」と膝を打ちました。古代が『宇宙戦艦ヤマト2199』(以下『2199』)から地続きのキャラクターである以上、過去のシリーズよりも理性的な人物なのは間違いない。そのせいで、反乱覚悟の出航を先導する彼の姿というのはどうしてもイメージしづらかったんかったんです。そこに関しては羽原さんと意見が一致していたので、そのことを福井さんにもお伝えしていました。解決策はその場では出なかったんですけど、「時間断層」はその問題を乗り越える起爆剤になるかもしれないと感じました。世の中の歪みの真相を知った古代は今までになかった憤りややるせなさを抱え込むことに絶対なる。ならば動機付けを補強する材料になるんじゃないかと感じました。

今日は、この岡・羽原案にヒントはないかな?と考えてみます。

以前他の所でも述べたのですが、私が気になったのは「13話でさらばの要素を使い切る」というアイディアです。

岡秀樹さんもプロフェッショナルな方であり、福井晴敏さんも当然そうです。

同じようなことを考えていても不思議ではありません。現に2202でも「あ、さらばの要素使っちゃった」というエピソードが早い段階から登場します。

ではここで第五章「煉獄篇」のキャッチコピーを振り返ってみましょう。

ラスト五分──涙とともに、あなたは衝撃の結末を目撃する。

第一章:帝星ガトランティス、前進!

第二章:ヤマトが……!(インフェルノ・カノーネに巻き込まれて消滅)

第三章:感謝の極み。

第四章:久しぶりだね、ヤマトの諸君。

以上に列挙したのはこれまでの各章の「結末」です。

びっくりした「結末」も少なくありません。

しかしここにきて、あろうことか公式が「衝撃の結末」と煽ってきやがりました。

一体、何が待っているのでしょうか?

私は「さらば」の何かしらの要素が、その趣を変えて我々に襲い掛かって来るのではないか、と推測しています。

何せ「涙」なのですから。

さらばで皆泣いた、2202ではそれを再現して差し上げよう――

公式にはそんな姿勢が見え隠れしています。

果たして第五章で我々は「涙」するのか?

第3話を振り返りながらそんなことが楽しみになってきた、今日この頃です。