ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

小林誠の「ヘイト」発言に対してヤマトファンの多くがだんまりな理由

※別の記事を配信する予定でしたが、タイムリーなのでこちらを先に投稿します。

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「二度目の人生を異世界で」作者、中韓へのヘイトスピーチ認め謝罪 TVアニメのキャスト降板(2018年6月6日)|BIGLOBEニュース

このニュースには驚きました。こういう事案(声優降板まで)が起こることにびっくりしたのです。

この件の是非は論じませんが、ヤマトファンの端くれとしてやはり気になるのは、最近話題となった副監督・小林誠さんに対する批判です。

またもや炎上する小林誠 - ymtetcのブログ

これが「宇宙戦艦ヤマト2202」に飛び火しないか、という懸念はあります。

また、ネット上では「何故小林誠を批判しないのか」「自浄作用がない」という、ヤマトファンに対する批判も見られますね。

もちろん、小林さんの発言あるいはリツイートが「ヘイト」であるかどうかはここで論じません。(故に、標題についても「」付きとしています。)多様な議論がありますし、私はその方面に疎いので、そこに関しては論じることができません。

しかし上述のヤマトファンに対する「何故批判しないのか」「自浄作用がない」という批判は、いささか行き過ぎているのではないでしょうか。

ヤマトファンの多くが何故小林さんの思想に対してだんまり(非難も支持もせず)、なのかと言うと、ヤマトファンはあくまで『宇宙戦艦ヤマト』のファンなのであり、小林さんのファンではないからだ、と私は考えます。

ここで、『宇宙戦艦ヤマト』の歴史に目を向けてみます。第1作は1974年、シリーズが一旦の完結をみるのは1983年の『完結編』です。それに対して、現在話題になっている小林さんがヤマトに関わるようになったのは、1993年の『復活編』および『YAMATO2520』から。しかもそれらの作品が頓挫して以降、ヤマトは2009年の『復活篇』に至るまで、制作されることはありませんでした。

つまり、ヤマトファンが愛好している『宇宙戦艦ヤマト』シリーズとは、小林さんの参加していない作品が大半なのです。非常に悪い言い方ですが、小林さんはヤマトの長い歴史においては所詮「ポッと出」。『復活篇』、そして今回の『2202』で、ようやくその存在が強く意識されるようになった程度でしょうか。

逆にいえば、だからこそ小林さんは今現在"ヤマトファンから"批判されている、という側面もあるわけです。

現在の『2202』副監督としての小林さんに目を向けると、決して多くのヤマトファンが彼を積極的に支持しているわけではありません。全く無関心な人もいますが、批判している人も少なくありません。

特に、その批判の多くは、メカに集中しています。

「旧作との乖離の激しいメカや美術を小林誠が(ポッと出のくせに)真っ当な理由もなく雑に本編へ混ぜ込んでくる」。つまり、非常に個人的な作風のメカや美術で『宇宙戦艦ヤマト』を侵しているという判断で、批判しているのです。

そして、小林さんのいわゆる「ヘイト」とされる思想は、管見の限り今の所、まだ『宇宙戦艦ヤマト』には入り込んできてはいません。

これが、今回のラノベ騒動と大きく違う点です。今回は主人公の設定における「中国大陸」云々が「ヘイト」ではないかという点が、批判の対象でもありましたから。

小林さんは、今回の騒動のように原作者でもないし、脚本家でも監督でもありません。言うなれば「ただの」副監督、その思想が作品に侵食していないのも当然といえば当然ですよね。

また付け加えると、ヤマトファンにとっては、「自分の愛するヤマト」を侵す存在こそが敵なのであって、それは小林さんに限ったことではないのです。例えば、「2199」の出渕裕さん(総監督)に対する一部からの批判もすごいものがありました。

小林さんの思想がどうであろうと、それで「ヤマト」が侵されていないのであれば、極端な話「ヤマトファンとしては」どうでもいいのです。だから、「小林誠レイシスト!ヤマトファンも一緒に叩かないと同調者と見なす!」と言われても、ヤマトファンとしてもピンと来ない。でも、メカに関しては今も激しく小林さんを批判している人がいます。

ですから無論、彼の「差別的」と批判されている言動についてファンが批判しないのは、「ヤマトファンとヤマトのスタッフ」という関係性の中に限定されたものです。「人間と人間」の関係で、彼の思想を批判することは場合によっては必要なことかもしれません。しかし、そうなると、それはもう『宇宙戦艦ヤマト』とは別の話だと私は考えます。

彼は決して『宇宙戦艦ヤマト』の作者ではないのですから。

 

この騒動の煽りを受けて、羽原監督以下奮闘してきた現場スタッフさんや声優さんたち、その他製作委員会のスタッフさんたち、それを応援し支えてきたファンの努力が水の泡となることがないよう、祈ります。