前回の記事を作る作業の中で、2019年10月に書いていた下書きが出てきました。ほぼ完成していたので、投稿します。その時点の内容である点、ご了承ください。
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お久しぶりです。ymtetcです。
2019年10月14日、『宇宙戦艦ヤマト』シリーズ最新作『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』のスタッフが公式発表されました。
今日はそれを改めて振り返りつつ、「雑感」つまり「私がどう思ったか?」をまとめてみたいと思います。
『2205』スタッフ布陣振り返り
原作:西﨑義展
製作総指揮/著作総監修:西﨑彰司
監督:安田賢司
シリーズ構成/脚本:福井晴敏
脚本:岡秀樹
キャラクターデザイン:結城信輝
メカニカルデザイン:玉盛順一朗/明貴美加/石津泰志
音楽:宮川彬良
さて、これが、来年秋公開予定の『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』のスタッフ布陣です。皆様も、お馴染みのことと存じます。
ちなみに、安田賢司監督のツイートから*1、制作スタジオは「サテライト」でほぼ確定。
安田監督はこちらに所属している方のようですね。また、結城さんが「古巣」と呟いていたことにも合致すると言えるでしょうか*2。
さて、この『宇宙戦艦ヤマト2205』スタッフ、私自身は非常に興味深い布陣だと感じました。
「興味深い」布陣、その理由は?
では、それはなぜでしょうか。
ひとことで言うならば、「これで『2202』にケリがつけられるから」です。
これを詳しく説明するために、このメンバーをさらに分類してみましょう。
○「2202路線の継続」
以下のように、「2199からの継続組」「2202からの新規組」「2205からの新規組」と、2199を起点に整理してみます。すると、おおよそ2205のスタッフは
- 2199からの継続組:キャラクターデザイン(結城信輝さん)、メカニカルデザイン(玉盛順一郎さん・石津泰志さん)、音楽(宮川彬良さん)
- 2202からの新規組:製作総指揮(西﨑彰司さん)、シリーズ構成・脚本(福井晴敏さん・岡秀樹さん)
- 2205からの新規組:監督(安田賢司さん)、メカニカルデザイン(明貴美加さん)
と分類できます。
こうしてみると*3、『宇宙戦艦ヤマト2205』の大方針は「2202路線の継続」が基本線になっていることがわかりますね。
というのも、監督の交代(羽原信義さん→安田賢司さん)とメカデザイナーの新規参加(明貴美加さん)を除いては、2202の中核スタッフが名を連ねています。
○「2199路線への再転換」はなさそう
私が密かに期待していた2199スタッフ(「2202での離脱組」:例えば西井正典さんなど)の帰還……はなさそうですね。
また、(スタッフ如何ではなく)作風としての「2199路線への再転換」も期待薄ではありますが、こればかりは完成した2205を見てみないと分かりません(高島雄哉さんの起用など全体として方針の変化が見られることが、ささやかな希望でしょうか)。
○「復活篇組の離脱」がもたらすもの
また、重要な変更点として「復活篇組の離脱」も挙げられるでしょう。具体的には2202監督の羽原信義さん、2202副監督の小林誠さんです*4。
2202をめぐる環境が混沌としていた背景には、一つに副監督・小林誠さんの問題がありました。例えば「メカデザインをやっているのにクレジットされていない」問題や、「SF設定・小倉信也さんとの(一方的かもしれないけれど)確執」問題が、2202という作品に少なからず陰を落としていたことは事実でしょう。
さらに、ツイッター上において「小林副監督を支持するか否か」という争いが起きたことで、2202の評価に新たな論争点が生まれ、かえって『宇宙戦艦ヤマト2202』という作品そのものの評価軸を狂わせてしまったと私は考えています*5。
2199の時にも「出渕総監督を支持するか否か」という争いが起きましたが、出渕さんの場合、彼は「総監督」であり「シリーズ構成」でした。劇場版では「脚本」も務めました。実態がどうあるかは別として、肩書き上、出渕さんは『宇宙戦艦ヤマト2199』という作品の大部分に対して責任を負ったスタッフだったのです。
その一方で、小林さんの場合、肩書きは「副監督」ですが、その職務内容は曖昧でした。よく言えば「何でも屋」的な側面が強かったために、「陰の総監督」と揶揄されたり、シナリオ集の内容が本編と異なることが分かると、そのことへの批判が彼に集まったりすることもありました。果たしてどこまでが「副監督」たる彼の責任で、どこまでが彼の責任ではないのか、曖昧なまま論争だけが過熱していったのです。
結果として、本来論争の題材として取り上げられるべき「監督」「脚本」「シリーズ構成」「SF考証」の責任が曖昧な形でしか問われぬまま、2202は終わってしまいました*6。
○2205スタッフ布陣はどうか――ある懸念
曖昧な「副監督」のポストが見られない、という点で、現状の2205スタッフの責任は2202よりも遥かに整理されています。『宇宙戦艦ヤマト2205』では、より明確な形で「監督」「シリーズ構成」「脚本」の責任を議論の俎上に載せることができるでしょう。
反面、一つの懸念として挙げられるのが、本編の制作を支える「便利屋」役の不在です。結果的に批判の対象となりましたが、2202では「副監督」の小林さんが「何でも屋」として色々なところに手を出してぐいぐいと引っ張っていった結果、制作上の大きな問題はなく最終章を迎えることができた側面もあります。もちろん私としても本編のあの様子に納得がいくわけではありませんでしたが、それでも「完成させる」ということに重きを置いた場合、小林さんの役割は非常に大きかったとも思います。
安田監督を羽原監督の後継役とみなした場合、小林副監督の後継役は誰かと考えると、いないのが現状の2205スタッフ布陣なのです。小林副監督が手を入れていたのは、決して(明貴さんの)「メカニカルデザイン」だけではありませんからね。
2205が、批判とか称賛とかの以前の問題として「完成した作品」になるためには、何らかの形で「便利屋」小林副監督の実務的な「穴」を埋めていく作業が必要となるでしょう。この問題をどうするかは、今後も注目していきたいと思います。
*1:Twitter:安田賢司https://mobile.twitter.com/tekamyan/status/1184268680781160448
*2:『ヒートガイジェイ』http://www.tbs.co.jp/heat-guy/index2.htm
*3:西﨑彰司さんは「製作総指揮」の役職に就いたのが2202以降であることから、「2202からの新規組」と分類しています。
*4:とはいえ、2199にせよ2202にせよ小林さんはある程度制作が進行してから招聘されています。今後、何らかの形で参加する可能性も否定できません。
*5:この辺りの過去記事が参考になるでしょうか⇒副監督礼賛はヤマトファンのすることなのか? - ymtetcのブログ
*6:最近では状況も変わってきており、「シリーズ構成」である福井さんや2202本編のSF描写について批判的な面も含めて検討した議論も見られるようになっていますが