前書き
〇「悪魔の選択」について
――全ての命には定めがあります。でもそれは、自らの選択の結果。(テレサ)
『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』を語る上で「選択」という言葉は欠かせません。中でも「悪魔の選択」は福井晴敏(シリーズ構成)による一大の仕掛けであり、この作品のテーマが端的に反映されていると言えます。
目次
- 前書き
- 第9話「ズォーダー、悪魔の選択」
- 第17話「土星沖海戦・波動砲艦隊集結せよ!」
- 第18話「ヤマト絶体絶命・悪魔の選択再び」
- 第20話「ガトランティス、呪われし子ら」
- 第22話「宿命の対決!」
- その他:第7話「光芒一閃!波動砲の輝き」
- 後書き
- 【参考資料】について
第9話「ズォーダー、悪魔の選択」
場所:惑星シュトラバーゼ 古代アケーリアス文明遺跡内
主体:ズォーダー
客体:古代進
選択肢A:第11番惑星避難民(森雪含む)
選択肢B:第11番惑星避難民
選択肢C:第11番惑星避難民
古代の選択:選ばない
解説:ヤマト2202最初の「悪魔の選択」。「お前の愛が何を救い、何を殺すのか」というズォーダーの言葉通り、人間のエゴによって人間の生死が左右される問いかけになっている。福井晴敏の手になる『第三章までのダイジェスト』映像*1は、古代の選択をこう総括した。「命が、命を選ぶような真似をしてはならない」と。
第17話「土星沖海戦・波動砲艦隊集結せよ!」
場所:ノイ・デウスーラ艦内
主体:ミル
客体:デスラー
選択肢A:ガミラス人の移住可能な惑星
選択肢B:ヤマト
解説:アベルトの甥、ランハルトはヤマトを選んだ。アベルトはそれを「理想」「美しい」と表現した。だが「現実」にガミラスは滅亡の淵に立たされている。その二つの愛に、悪魔はつけ込む。ガミラスの未来を保証して欲しければ、ヤマトを倒せ――。「お前の愛を選べ」と、悪魔は迫った。
第18話「ヤマト絶体絶命・悪魔の選択再び」
場所:ヤマト艦内
主体:桂木透子
客体:加藤三郎
選択肢A:子供の命
選択肢B:ヤマト(地球の命運)
加藤の選択:A 子供の命
解説:自分の命よりも遥かに重い、妻子の命を背負ったヤマトクルー・加藤三郎。しかし、宇宙放射線病の二次発症を患った息子の病状は日々悪化するばかり。そんな加藤に、悪魔は囁く。「ヤマトを沈めれば、子供は助ける」と。時あたかも、ヤマトは地球の命運をかけて白色彗星に立ちはだかろうとしていた――。
第20話「ガトランティス、呪われし子ら」
場所:ゼムリア
主体:ゼムリア人
客体:ズォーダー
選択肢A:妻子の命
選択肢B:ガトランティス軍の集結地
ズォーダーの選択:A 妻子の命
解説:ゼムリア人がタブーを犯して作り出してしまった「人間」。「人の姿をした家畜」と蔑まれたガトランティスを率いて、彼は反乱を起こした。ゼムリア人は彼の妻子を人質に取り、迫る。「お前の愛を選べ」と。それは彼に、千年もの間続く絶望を植え付けた「悪魔の選択」だった。
第22話「宿命の対決!」
場所:ノイ・デウスーラ艦内
主体:ミル
客体:キーマン
選択肢A:地球とガミラス
選択肢B:デスラー
キーマンの選択:?
解説:この「悪魔の選択」は第22話の終盤にして、未だ謎が多い。「信号」とは何か、デスラーはキーマンに向けてどんなメッセージを送ったのか。だが、一つだけはっきりしていることがある。悪魔は、選択を強いる相手を瞬時に切り替えた。「お前の愛を殺せ」と。「選んじゃだめだ!」とは、第23話予告編における古代のセリフである。第七章において注目すべき点だと言えよう。
その他:第7話「光芒一閃!波動砲の輝き」
場所:第11番惑星
主体:ズォーダー(?)
客体:古代進
選択肢A:地球
選択肢B:約束
古代の選択:A 地球
解説:これを「悪魔の選択」に含めることは難しい。何故なら、メーザー率いる第八機動艦隊の集結はヤマト襲来以前より計画されていた様子が窺えるからである*2。しかし、結果としてズォーダーは古代に選択を強いている。地球の命運という現実を守るか、約束を守るか。過程はともかく質的に言えば「悪魔の選択」と呼んで過言ではない。
後書き
「お前の愛を選べ」
ヤマト2202の選択は、「悪魔の選択」に限らず徹頭徹尾このように描かれています。例えば、第16話においてキーマンが逡巡した「ヤマトかデスラーか」も、愛の選択であることは間違いありません。というよりむしろ根本的に、「人間」の選択は愛を選んでいることと均しいのではないでしょうか。
今回は「悪魔の選択」について、その主体、客体、選択肢、そして客体の選択という部分の整理に挑戦してみました。「解説」部は本編を既に鑑賞している人向けに、私なりに再整理してみたものです。よって、「解説」というよりは「粗筋」に近くなっています。
さて、この【参考資料】を作る作業は私としても恰好の復習の機会です。今後も期を見て継続していきたいと思います。
【参考資料】について
第六章が終わり、いよいよ残すところは第七章「新星篇」のみとなった2202。最終章を前に、今一度この作品が何を描いてきたか、見つめ直す作業が必要であることは言うまでもありません。そんな現在において、今回のこの記事が一端の参考資料として活用していただけることを願っております。
また、参考資料としての質を向上させるため、本文中の誤字脱字、誤解ある点等については積極的なご批判を賜りたく思います。