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偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

ガトランティスの強大さと綻び:『2202』第12話シナリオを読む

こんにちは。ymtetcです。

今回は「元気な古代──『ヤマト2202』第11話シナリオを読む」の続き……というと恐ろしい感じがしますね。一年近くこのシリーズを放置していたのは、第12話のシナリオがおおよそ本編と似たような要素で構成されていたからです。

ところが、ふと何かあるのではないかと思い読み直してみると、本編とほぼ同じとはいえ細かな部分で差異があり、さらに、シナリオだからこそ第12話で伝えたかった要点が見えてくる側面もありました。今日はそれを共有していきます。

 

〇第12話ポイント①:ガトランティスの綻び

『2202』が第12話で描きたかったものに、「愛」を否定するガトランティスの矛盾がありました。

〇大帝玉座の間

サーベラー「私と、あの人……ズォーダーを苦しめてきたもの……」

涙を流し続けているサーベラー。その背後に立ち尽くすズォーダー。

ズォーダー「なぜ……くり返す……」

振り向き、ズォーダーを仰ぎ見るサーベラー。千年を経て再会できた万感の笑み。

サーベラー「大帝……ミル・ズォーダー……」

立ち上がり、ズォーダーと向き合うサーベラー。その手がおずおずと持ち上がり、ズォーダーに触れる。

ズォーダー「おまえは裁定者。白銀の巫女だ」

サーベラー「私はシファル・サーベラー」

ズォーダー「愛こそが人間を間違わせると知る者だ」

サーベラー「そう、私は愛を知っている。あなたも――」

ズォーダー「違う!」

第12話で、ガトランティスはヤマトを殲滅するべくヤマトの眼前に出現しますが、その際、「愛」を思い出しつつあったヤマト艦内の透子と白色彗星内部のサーベラーが接触してしまい、ズォーダーの予期せぬ事態が起こります。透子との接触により「愛」を思い出したサーベラーは、敢えてヤマトと戦おうとはしなくなっていくのです。

これは、「愛」を否定してきたガトランティスが見せた綻び。「愛」を否定しながら、それを否定し尽くすことのできない矛盾が露呈した形であり、我々視聴者からすれば、ガトランティスの持つ思想的な弱点が一つ明かされたことになります。

これが、第12話の一つの柱です。

〇第12話ポイント②:強大な白色彗星の力

反面、第12話ではガトランティスの強大な力も明らかになりました。

本編でも、ヤマトが大艦隊に遭遇する形でガトランティスの強大さを描いていましたが、シナリオの場合、それを白色彗星内の複数の惑星で表現しようとしています。

〇第一艦橋

雪「大きい……惑星サイズです!」

真田「メインパネルに投影!」

メインパネルに映し出される惑星らしきものの影。

古代「これが、ガトランティスの……」

真田「いや、待て。一つじゃないぞ!」

惑星の影から、別の惑星がじりじりと姿を現す。息を呑む古代たち。

〇ヤマトの前に広がる彗星のコア

三つ、四つと滲み出てくる惑星群。

太田の声「三つ、四つ……他にもなにかの影が見える。途方もない大帝国だ!」

大艦隊も複数の惑星群もどちらも最終的には本編へ反映されている要素ですので、ここではどちらを採用してもよかったと思います。ただ、本編の場合は、

  • 既に第7話で大艦隊を見せているので、ネタが被る。
  • 旧作通りの都市帝国である、とのミスリードになった。

この二つのデメリットがありました。シナリオ通りの場合、そもそも第7話の艦隊も250万隻ではない、という違いもありますが、この第12話についても、

  • 旧作の都市帝国とはスケールが違うことを示せる。
  • 大艦隊がなくとも、直前の戦闘でその強大な力を描くことはできている。

こういったメリットがあったのではないかと思います。敵の強大さを示すときに、艦隊のスケールにこだわったのが本編、小林さんの都市帝国スケッチを活かそうとしたのがシナリオだったのかな、という印象です。本作がリメイクであることを考えると、早い段階で旧作と違う部分を匂わせておいた方が無難だったかもしれません。

〇第12話ポイント③:決戦へのカウントダウン

最後に、シナリオ版の第12話に与えられていた要素として、決戦へのカウントダウンがあったことを指摘しておきます。シナリオ版では、白色彗星に捕まったヤマトが、彗星のデータをとるために敢えて白色彗星中心部に進路をとる場面があります。そこで、複数の惑星が内部に存在することに気づくわけです。

その後、紆余曲折あってガトランティスはワープ。以下のように続きます。

真田「あれほどの質量のものがワープを……」

土方「副長。白色彗星は、地球に向かって移動しているという話だったな」

はっとなる一同。

太田「そんな、まさか……」

古代「相原、地球司令部と通信を繋げ。大至急だ」

全員の顔が凍りつく。

本編より、緊張感が高まっている様子が見て取れますね。

この場面のように、第12話シナリオではその尺の自由度もあってか、ヤマト艦内へ本編以上の緊張感を与えています。反面、ガトランティスの側には綻びが生じていました。危機感を抱くヤマト・地球サイドと、ヤマトの気づかないところで自らの矛盾を露呈するガトランティス。その両者を対比的に描くことが第12話の柱だった、と言えそうです。

〇ささやかな改善案

さて、これという改善案も見当たらない第12話ですが、敢えて何か別の選択肢を提示するとすれば、第9話と第10話に工夫を加える手もあります。

第12話で描かれていたガトランティスの矛盾は、第9話でも少し匂わされていました。そして第10話では、ガイレーンとズォーダーの会話で、その矛盾が明らかにされていました。

第10話については「3 構成メモを読む──【ヤマト2202】第10話を振り返る」で改善案を書いていますが、やはり最も優先順位が低いのはガトランティスの描写。そういうことを踏まえると、敢えて第9話・第10話、すなわち第三章ではガトランティスを非人間的に描いておいて、第四章第12話で初めて綻びを見せる。そういう選択肢もアリだったのかなと思います。

 

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