【ヤマト2202】「政界の地図」に起きた異変とは何か
真田: だが、政治的な面に限って言えば、バレル大使の尽力で、奇蹟が起きそうだ。今度の戦争で、政界の地図にも異変があった。
こんばんは。ymtetcです。
2202の最終話において、無茶な国民投票が実現した背景には「バレル大使の尽力」がありました。そう聞くと、第5話ラストの政治的駆け引きを思い出す人も多いと思いますが、私は、最終話におけるそれは第5話と異なるものだった、と考えます。
私がそう考えた根拠は、冒頭に引用した真田さんのセリフにあります。「今度の戦争で、政界の地図にも異変があった」。今日は、これについて考えていきましょう。
〇「政界の地図」に起きた異変とは何か。
「『政界の地図』に起きた異変」とは、バレル(ガミラス政府軍)の参戦によるガミラス政府と地球政府の間のパワーバランスの変化だと考えます。
そもそも、本来であればガミラスの方が地球より上の立場です。
ですが、地球が時間断層を持つことを通じて、徐々にそのパワーバランスは変化していったと言えます。時間断層で建造された波動砲艦隊の整備によって、ガミラスよりも地球の方が上に立つ気配が現れてきたのです*1。
また、その時間断層の所有者は地球です。ガミラスは対価を払っているとはいえ「使わせていただく」立場。この関係がそのまま推移すれば、将来的に地球政府の方が「強い」立場に立つことは明白です。
第5話で、バレルはヤマトの航海を地球政府に認めさせますが、これは、時間断層の情報をヤマトクルーに漏らし、「時間断層の情報を知る彼らを刺激すべきではない」と迫ることで強引に航海を黙認させるという、一つの策略でした。これはガミラスの強さによってバレルが自らの意向を押し通したのではなく、政治的な駆け引き・テクニックによって押し通したのです。
一方、ガミラスの地球に対する政治的な「弱さ」は、第18話に表れています。白色彗星へ攻撃を仕掛けようとする地球政府に対して、バレルは「性急に過ぎるのではありませんか?」と忠告します。これは穏健派のヒス率いるガミラス政府の立場を代弁するものでしょう。
しかし、地球はバレル大使(ガミラス政府)の忠告を拒否しました。ただ、地球の勢力圏での戦闘ですから「地球の問題」。ガミラス政府には介入する権利がない、と言われるのも当然だったかもしれません。
さて、これと対照的なのが最終話です。最終話では、「バレルの尽力」によって「全てを明らかにして、結論を国民投票に委ねる」ことが決定しました。地球の未来を決める重要な局面であるにもかかわらず、ガミラス(民主)政府の外交官の意向が通ってしまったのです。
では、これもまた第5話のような策略が展開された結果なのか。私は違うと考えます。
では、第18話から第26話に至るまでの物語で、何故ここまでガミラスは地球の政治に介入できるようになったのか。
これを考えた時、「バレルの参戦」が一つの契機として浮かびあがってきました。
第20話、突如としてバレルが参戦しました。18話まで白色彗星に対する攻撃に慎重論を唱えていた彼が、「ガミラスの誇りにかけ、共に地球圏の防衛を!」などと声高に叫びながら参戦してくる様には、正直言って違和感を覚えたものでした。
しかし、最終話の展開を観た後ならば、別の考え方を当てはめることもできます。
バレルは、地球圏の防衛の一翼を担うことで、地球圏におけるガミラスの立場を「強く」しようとしたのではないでしょうか。
そして結果的に、ガミラス軍は地球の防衛に大きな貢献を果たしましたよね。地球連邦防衛軍の艦隊が壊滅した後、地球圏での大海戦を最後まで戦い抜いたのはガミラス艦隊です。
これによって、ガミラス側は地球政府に対し、強気に出ることができるようになったのだと考えます。
作劇としてはいささか唐突な感を免れなかったバレル大使の参戦ですが、地球圏におけるガミラスの「弱さ」を補うため、あるいは時間断層の存在を通じてガミラスより「強い」立場に立ちつつある地球政府との対等な関係を構築(維持)するための政治的な意味を持った参戦だった、という解釈もできそうです。