ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【ヤマト2202】反逆への道のり──第三話「シナリオ」を読む

こんにちは。ymtetcです。

今日も「シナリオを読む」の続きです。第二話に引き続き、第三話のシナリオを読んでいきます。

第三話は、シナリオと本編のギャップも少なく、あまり気になる箇所はないかな、と考えていました。気になる箇所がなければ容赦なく飛ばして次に進みたいところですが、ひとつ、気になる箇所が見つかりました。

それが、ヤマトクルーの地球連邦政府に対する「反逆」です。

第一話から第三話に至る「シナリオ」の大きな流れを踏まえると、そこには本編で抱いていた漠然とした印象よりも、さらに一歩進んだ「反逆への道のり」が示されているように感じました。今日は、そのあたりをまとめていきます。 

「地球連邦への反逆」動機付けのステップ

本編の『宇宙戦艦ヤマト2202』では、テレサのコスモウェーブが「テレザートへの航海」の動機として描かれ、これに時間断層・波動砲艦隊への不満が加わって、ヤマトクルーが「地球連邦への反逆」へと踏み出す、という大きな流れが作られていました。

もちろん、その構図はシナリオ版『宇宙戦艦ヤマト2202』においても同様です。ですが、第三話のシナリオを第一話のシナリオとつき合わせてみると、もう一歩細かく、ステップを踏んで動機付けが行われていることが分かります。

前提:『2199』最終話までの動き

まず前提にしておきたいのは、『2199』最終話まで(『方舟』含む)のヤマトクルーの動きです。

ヤマトクルーは、イスカンダルへの航海(特にガミラスとの出会いと戦い)を通じて、”異星人とも理解しあえる”という「相互理解」への手応えを得ています。

その具体的な動きとして挙げられるのは、ひとつに『2199』第23話における”首都バレラスの救出”です。このヤマトの行為は、ヒス副総統をして「もうヤマトへのわだかまりはない」とまで言わしめています。

もう一つは、イスカンダルでの約束です。ヤマトクルーは”波動砲を使わない”、”波動砲大艦隊を作り上げて拡大政策をとり、今なお滅亡の淵にあるイスカンダルの「愚行」を繰り返さない”と誓い、実際に自らの波動砲を封印しています(『2199』第24話)。

さらに『方舟』では、本国の停船命令にも従わずにヤマトへの復讐を誓っていたバーガーと”和解”して”友情”を育み、対ガトランティスの共同戦線を組むまでに至ります。

以上が、『2199』最終話までの大きな流れです。

前提:『2202』第1話までの動き

もう一点、前提にしておきたいのが、『2199』最終話以降『2202』第1話が始まる前までの動きです。

『2199』から『2202』へと至るまでの間に、宇宙戦艦ヤマトがもたらしたガミラスとの”和解”を契機に、地球とガミラスの同盟(「地ガ同盟」)が誕生します。

全ての起点は、首都バレラスを救った宇宙戦艦ヤマトの行動です。

さらに地球では、波動砲艦隊構想が再軍備の既定路線となります。こうして軍拡への道を突き進む地球連邦政府ですが、その根底には、異星人への不信感があります。それは、「同盟」を組んだはずのガミラス人に対しても同様でした。

人類は孤独ではない。地球の他にも多くの星間文明が存在する。あなたたちガミラスの攻撃で、破滅の淵に立たされるという残酷な経験をもって、我々はそれを知らされた。今の地球の人口は往時の三分の一にも満たない。デスラー体制の崩壊で国が乱れていようと、あなたたちがその気になれば地球を併呑するのは容易なことだろう。強力な”隣人”に囲まれた地球人が生き延びるためには、手段を選んでいる余裕はないのだ──。地球参謀の言いように、返す言葉を失うガミラス大使。

(「『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』構成メモ➀」『シナリオ編』227~228頁。)

地球政府は「相互理解」とは逆の道へと向かっているのです。

そして、異星人への不信感の結実たる「波動砲艦隊」は、イスカンダルがかつて経験した破滅の歴史の再現。

ヤマトクルーは『2202』第1話以前に、自らが『2199』で作り上げてきた「相互理解」を、真っ向から否定されています。

『2202』第1話におけるヤマトクルー(古代進)の心情

宇宙戦艦ヤマトイスカンダルへの航海を通じて、大切に大切に育ててきた「相互理解」、その具体的発露としてのガミラスとの友情は、戦後「地ガ同盟」に結実します。

その結果発生するのが、『2202』第1話の戦闘です。

この戦闘では、地球連邦防衛軍ガミラスの基地奪還作戦に参加します。

防衛軍を強調したところに意味があります。この「地球、ガミラス連合軍によるガミラス植民星奪還作戦」の初出は、2015年7月31日の「構成メモ➀」です。

2014年から2015年に至る時期は、いわゆる「平和安全法制」に結実する「集団的自衛権」論争が日本社会を賑わせていました*1。『2202』第1話の戦闘は「地球連邦を防衛する軍隊」が「ガミラスの拠点を奪還するために戦う」ものです。この構図は厳密に言えば「集団的自衛権」とは異なりますが、福井さんの意識には当時の日米同盟をめぐる状況があったと推測します。

爆炎が後方に過ぎ去り、戦場の宇宙が古代の眼前に戻ってくる。

舵を失ったガミラス艦がガトランティス艦に突っ込み、爆発の閃光が膨れ上がる。

古代「こんなこと(なんでおれはやってるんだ)……!」

絞り出すように呻く古代。

(「『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第一話『西暦2202年・甦れ宇宙戦艦ヤマト(仮)』第三稿」『シナリオ編』6頁。)

この戦闘に参加したヤマトクルー(古代進)は、「こんなこと……!」と呻きます。

古代は、宇宙戦艦ヤマトの結んだ地球とガミラスの「相互理解」が両国に平和をもたらす、と信じていたはずですが、そこにあるのは地球とガミラスの軍事「同盟」。そして、その「同盟」が、地球を再び(地球そのものの防衛とは関係のない)戦争へと駆り立てている現状があります。

「互いに理解しあえる。手を携え合おう」が「手を携え合って戦争しよう」にすり替えられてしまっているわけで、古代進にとっては、いわば「相互理解」を悪用されたようなもの。この時点で、古代進の地球連邦政府への憤りは、相当なものになっていると言えるでしょう。

『2202』第3話におけるヤマトクルー(古代進たち)の心情

この3年の間、古代たちヤマトクルーが抱いてきた心情を鑑みると、『2202』第3話における時間断層と波動砲大艦隊、テレザートへの調査航海の否決、旧ヤマトクルーの一斉転属は、反逆へ向けた最後の”とどめの一撃”だったことがわかります。

既に3年間、「相互理解」と「『愚行』を繰り返さない」を踏みにじられてきた古代たち。その上で、ヤマトが「相互理解」の末にイスカンダルから持ち帰ったコスモリバースシステムを、地球連邦政府が戦争のために悪用しているとなれば……。彼らの心情は推して知るべきでしょう。

ヤマトがコスモリバースシステムを持ち帰らなければ、滅んでいたはずの地球。その地球を救うために、ヤマトはコスモリバースシステムを持ち帰ったはずなのですから。

キーマン「地球政府は、時間断層の使用権をガミラスにも売った」

古代「……売った?」

キーマン「見返りは、ガミラスが持て余しているいくつかの植民星。大量の資源と、そこに住む人々も含めて」

古代「……!」

キーマン「拡大政策を維持できないガミラスと、復興政策から国力増強へ舵を切りたい地球……。政治、経済という言葉は、宇宙共通だな」

奈落に突き落とされた面持ちの古代。

古代「……これが、ヤマトが……地球に持ち帰った未来か……」

(「『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第三話『衝撃・コスモリバースの遺産(仮)』第一稿」『シナリオ編』26頁。)

それなのに、今の地球にあるのは政治と経済、軍拡と戦争。ヤマトは波動砲艦隊に組み込まれ、コスモリバースシステムの副作用が、今なお地球で波動砲大艦隊の建造を支え続けている。それは、イスカンダルがかつて歩んだ滅びへの道。「自衛のため」? 地球連邦防衛軍はガミラスの拠点を奪還するために主力艦隊を派遣し、地球政府はガミラスの植民星を譲り受け、自衛どころか拡大の一途を辿っているではないか──。

相原「……ヤマトの大航海は、こんな地球を取り戻すためのものだったのかな……」

その呟きに、百合亜が言葉を継ぐ。

百合亜「他の星の人とも手を取り合える……」

桐生「(頷き)その可能性を携えて、ヤマトは帰ってきた。新しい時代が始まるって、私も信じていた……」

新見「一度は滅びの淵に立った地球人だからこそ、全宇宙に発信できるメッセージがあったはずなのに……」

南部「今の地球は……これでいいのかよ!」

全員が胸の中で血の涙を流している。

(同上、『シナリオ編』27頁。)

そして「静かに口を開いた」古代が”テレザートへ行きたい”と語り、ヤマトクルー(島と森雪を除く)は「反逆」を決意するわけです。

『2199』を”悪用”する地球連邦政府

以上から、『2202』は、『2199』が描いた「波動砲封印」や「相互理解」を、地球連邦政府に徹底的に”悪用”させていたことが分かります。しかもそれは、「波動砲封印を否定して波動砲艦隊設立」「相互理解を否定して戦争」といった個別の枠組みではなく、「相互理解を否定し、CRSを悪用して作り上げた波動砲艦隊を主力として相互理解を悪用したガミラスとの軍事同盟に基づき、拡大政策をとってイスカンダルの愚行を繰り返す」といった、複雑に入り組んだ形で描かれていました。

シナリオについて考える時は、ついつい「本編でもこれやってよ」と言いたくなる場面が増えてしまいますが、今回取り上げたヤマトクルーの心情に関して言えば、この心情描写は文字情報だからこそ、可能なことです。本編にいくつかセリフを足せば、とは思わないでもありませんが、「本編もヤマトクルーの心情に深く迫り丹念に描き出すべきだ」という主張には現実味がないと思います。

ただ、『2202』第一話から第三話に至る過程には、本編から受ける印象よりもさらに一歩深く「反逆」へ至る心理的なドラマがあったのかもしれない。少しでもそう感じていただけたならば、幸いです。

最後になりますが、今回の記事に出てくる「悪用」という言葉を不愉快に思われた方がいらっしゃるかもしれません。というのも、『2202』でヤマトクルーが憤りを覚えている地球連邦政府の姿は、絶対的な「悪」ではなく、「善」の側面を併せ持った現実的な存在だからです。「平和安全法制」での国論の分断をみれば分かるように、これは地球政府とヤマトクルー、そのどちらかを一方的には糾弾できない状況なのです。現実に、波動砲艦隊がなければ地球はガトランティスにあっけなく敗れていたでしょう。

ヤマトクルーを主人公とする『2202』において、地球政府は「ヤマトクルーにとっての悪」として描かれていました。これらを踏まえて私は「悪用」という表現を使いましたが、それは必ずしも客観的、絶対的な「悪」ではありません。

ですが、『2202』が、ヤマトクルー(古代進)の理想を「救う」ラストをハッピーエンドに位置づけたのも事実です。『2202』には、かなりの部分で福井さんたち脚本チームの思想・価値判断が入り込んでいる、とも言えますね。