ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

藤堂早紀は何故ヤマト救出を「選択」したのか

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こんばんは。ymtetcです。

「森雪のキス」が2202サーベラーの描写を解き明かしてくれたように、最終章を経て、改めて分かってきたことは他にもあります。

それが、

〇藤堂早紀は何故ヤマト救出に「お伴」したのか?

です。これは、

⇒ヤマトを救い出すことで、自分の心を救うことができるから。

と解釈できるのではないでしょうか。

何故早紀がヤマト救出を「選択」したのか?

という問いについては、元々よく分かっていませんでした。父親が沖田と親しいから? 英雄と思っていたから? 色々と考えてみましたが、腑に落ちる答えは浮かんでこなかったのです*1

ですが、最終章最終話「真田の演説」において、早紀の「選択」を通じて福井さんが描こうとしたものが浮かび上がってきました。

真田:彼は、彼を愛し運命を共にした森雪ともども、決して英雄などではなかった。彼は、あなたです。夢見た未来や希望に裏切られ、日々何かが失われているのを感じ続けている。生きるため、責任を果たすために、自分で自分を裏切ることに慣れて、本当の自分を見失ってしまった。昨日の打算、今日の妥協が、未来を、自分を食いつぶしていくのを予感しながら、どこへ向かうともしれない道を歩き続ける。この苛酷な時代を生きる、無名の人間の一人。あなたや、私の、分身、なのです。ですから、引け目は感じないでいただきたい。英雄だから、犠牲を払ってでも救う価値があると考えるのは間違っています。もし、彼と彼女を救うことで、自分もまた救われると思えるなら、この愚かしい選択の先に、もう一度本当の未来を取り戻せると信じるなら、是非、二人の救出に、票を投じてください。数字や便利さ、効率を求める声に惑わされることなく、自分の心に従って。未来は、そこにしか存在しないのですから。

この演説に、第六章の早紀を重ねてみてください。

──夢見た未来や希望に裏切られ、日々何かが失われているのを感じ続けている。生きるため、責任を果たすために、自分で自分を裏切ることに慣れて、本当の自分を見失ってしまった。

英雄だから、犠牲を払ってでも救う価値があると考えるのは間違っています。

早紀は、ヤマトを救うことで、自分もまた救われると思えた。たった一つの戦艦を救うためだけにG計画の発動を取りやめる、そんな愚かしい選択の先に、もう一度本当の未来を取り戻せると信じたから、早紀はヤマト救出を「選択」した。

 

数字や便利さ、効率の象徴であるAIを過信していた早紀が、それを破壊するという「選択」をしたことは、この二つの「救出=愚かしい選択」を描いたドラマを結びつける一つのヒントだったのかもしれません。

*1:ちなみに「父親が沖田と親しいから」説は、早紀を「藤堂の娘」と設定したのが岡さんである(福井さんではない)ことから、否定されている。また、英雄説については、本記事における記述により否定できる。