こんにちは。ymtetcです。
今日取り上げるのは、「シナリオ」編から、第8話の記述です。
まずは本文をご覧ください。
(略)
斉藤「おまえが逃がしてやった敵は、そういう連中だ。イスカンダルでどんな約束してきたのか知らねぇが、それだけは覚えといてもらいてぇな」
凍った血だまりの中に、ヤマトのおもちゃが転がっている。吸い寄せられるように跪き、壊れたおもちゃに手をかける古代。
ぱりん、と薄い音がして、赤い氷がおもちゃの表面から剥がれ落ちる。
古代「(ぎりと歯を食い縛り)……間に合わなかった……」
うつむき、肩を震わせる古代。
古代「……ごめん。ごめんよ……」
斉藤「……」
心底から泣く古代の背中から目を逸らし、凍てついた天を仰ぐ斉藤。
これこそが、古代進という男だと私は思います。
これは、第8話、第11番惑星救出作戦が終了し、メーザー艦隊を無力化した後のシーンです。本編ではヤマトの後甲板で会話をする描写に変更されましたが、シナリオでは、古代と斉藤の二人が(第11番惑星の被害状況を確認するためか)鉱山基地を訪れます。
斉藤は、人工太陽を失って凍り付きつつある第11番惑星の大地に発煙筒を投げる。そうして「散乱する死体と瓦礫」を古代に見せ、上に引用したシーンへと繋がります。
彼らの救出が間に合わなかったのは、決して古代のせいではありません。むしろ古代は、もう生存者はいない、第11番惑星は防衛軍に任せて先を急ごう、という意見を退けて、大きなリスクを背負って第11番惑星に飛び込む判断をした。斉藤が言外に認めるように、「二百人以上の人間が救われた」ことは”艦長代理”としての古代の功績と言ってもいいでしょう。
それでも古代は、目の前に倒れている人間、救うことのできなかった人間たちの方を見て、「間に合わなかった」「ごめんよ……」と心の底から涙を流す。
これこそが、古代進という男だと私は思います。
小説版『2202』で、斉藤はこう思いをめぐらせます。「指揮官」には「責任」がある、それは、「生きている人間に対しては守ってやる責任」と「死んだ人間に対しては守ってやれなかった責任」。その責任を背負うのが指揮官だ……と*1。
斉藤のこの思いは直接古代には届いていませんが、古代はまさに斉藤の言う「指揮官としての責任」を、ここで強く感じているわけです。
ですが、それは決して当たり前のことではないと私は思います。
『2202』で改めて感じたことですが、リメイクシリーズの古代進は、まるで旧作『ヤマト』のガミラス本土決戦を経験しているように、言い換えるならば、あたかも”誰かの故郷を滅ぼした経験があるかのように”、どこか指揮官として、人間として完成されているキャラクターのように見えます。
『2202』では古代が現実に苦しむ姿が描かれましたが、これは『2199』以来の「完成されている」古代進を逆手にとった仕掛けです。古代進はどこか、『2199』の時点で完結している存在のように私には思えます。
そうして考えた時に、私はリメイクシリーズから発展したスピンオフ(それは、「アクエリアス・アルゴリズム」のような)として、「古代進の過去」篇を作ることが必要なのではないか、と思います。
『2199』の古代は、地球の命運をかけた一大作戦に回収要員として参加するほどの存在であり、「兄さんの仇だ」と言って戦闘機を飛ばす兄への想いと行動力があり、それでいて「君とは信じあえる、そんな気がする」と言える正直さを、「ごめんよ……」と救えなかった命を悔やむ責任感を持っています。
そしてちょうど『2199』は、旧作第13話に相当する「古代進の過去」を描いてはいません。
それを補完するという旧作由来の正統性ある役割も担いつつ、それ以上に、『2199』と『2202』を「古代進の成長ドラマ」として一本に貫く役割を果たすものとして「古代進の過去」を描くスピンオフがあれば、「リメイク・ヤマト」はまた新たな深みをもつシリーズになる。そう私は思います。
《追記》
ヤマトマガジンが5月末とのことで心待ちにしていたのですが、なんと私のもとには届かないことが判明しまして(察してください)、かなり本気で落ち込んでいます(笑)。