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偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

『宇宙戦艦ヤマト』シリーズ作品をどう呼称・整理するか?

こんにちは。ymtetcです。

2009年の『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』をもって、文字通り現代社会に「復活」した『宇宙戦艦ヤマト』シリーズ。その後、シリーズはリメイク版『宇宙戦艦ヤマト2199』に引き継がれ、『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』を経て、2019年には『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』が完結しました。

そして現在は、小説『アクエリアスアルゴリズム』と、漫画『宇宙戦艦ヤマトNEXT スターブレイザーズΛ』が公開中で、2021年1月には映画『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』の公開を控えています。

このような状況の変化の中で、今もなお増え続ける『宇宙戦艦ヤマト』シリーズ作品をどのように呼称し、整理すればよいか。今日はこれを考えてみたいと思います。

〇「旧作」と「リメイク」でよかった頃と、今

『2202』までの『ヤマト』シリーズ作品は、とてもシンプルでした。それまで存在していたのは基本的に、「旧作」と「リメイク」だけだったからです。

宇宙戦艦ヤマト』(1974年)から『完結編』、『2520』、『復活篇』に至る作品群が「旧作」であり、『2199』から『2202』に至る作品群が「リメイク」。この大枠で、何も問題はなかったのです。

しかし、冒頭申し上げた通り、最近では「リメイク」の枠には収まらない新作『ヤマト』が登場してきています。具体的には『アクエリアスアルゴリズム』と『スターブレイザーズΛ』です。これらの作品も含めた現在の『ヤマト』作品は、一体どのように呼称すべきなのでしょうか。

〇公式はどう呼称しているか

まずは、公式による呼称を押さえておきましょう。

イントロダクションで、『2199』は「TVアニメシリーズ第1作をベースに、新たなスタッフで制作する完全新作TVアニメーション用シリーズ」と呼称されています*1。『方舟』は「宇宙戦艦ヤマト2199』の完全新作劇場映画」です*2。そして『2202』は『さらば』をモチーフとした、「(注:『2199』の)続編となる完全新作シリーズ」と表現されています*3

興味深いのは、いずれも「リメイク」との表現が使われていない点です。実は我々が思っている以上に、公式サイドでは、これらの作品は「リメイク」ではなく「『2199』シリーズ」である、との認識に重きが置かれているのではないでしょうか。

今回は、この事情を踏まえて、『2199』『方舟』『2202』の呼称をまとめて「『2199』シリーズ」としておきます*4

では、『2199』シリーズには該当しないその他の『ヤマト』作品たちは、どのように公式に呼称されているでしょうか。

まず、『アクエリアスアルゴリズム』は「宇宙戦艦ヤマト復活篇 第0部」と表現されています。これは本作が『復活篇』に立脚する物語であることを示しているだけでなく、2009年に公開されたいわゆる『復活篇(第1部)』、そして「中断」している『復活篇 第2部(仮)』『復活篇 第3部(仮)』も含めた「『復活篇』シリーズ」とでも言うべきシリーズが存在する可能性を示唆するものでもあります。

次に『スターブレイザーズΛ』ですが、これは公式の呼称ではなく、そのタイトルに注目したいと思います。『Λ』第1話冒頭に付されていた、西﨑彰司さんの「発進にあたって」を今一度思い返してみましょう。

46年前に親父殿(西﨑義展)が生み出した「宇宙戦艦ヤマト」……(中略)……

そして、それを継ぐ私たちは、さらに多様で刺激的な挑戦をしていきたいと考えています。この「スターブレイザーズΛ」は、そうしたNEXTヤマトを生み出すプロジェクトのひとつなのです。

……(後略)

宇宙戦艦ヤマトNEXT スターブレイザーズΛ 第1話|コミックNewtype

『Λ』とは「NEXTヤマトを生み出すプロジェクトのひとつ」。これは、『Λ』のタイトルに掲げられた「宇宙戦艦ヤマトNEXT」の枠組みが、『Λ』だけに止まらない「『宇宙戦艦ヤマト』新シリーズ」を象徴する枠組みだと示唆するものです。『宇宙戦艦ヤマトNEXT ○○○○○○(仮)』をタイトルとした作品は、今後も生み出される可能性があるということです。以上のことから、『Λ』は「『ヤマトNEXT』シリーズ」の枠組みで理解しておきたいと思います。

〇西﨑義展さんのコミットに注目

ここまでは、現在の『ヤマト』作品の枠組みを見てきました。これを踏まえると、これまでの『ヤマト』作品を、「旧ヤマト」「『2199』シリーズ」「復活篇第0部」「『ヤマトNEXT』シリーズ」の大きな枠組みで捉えるのも悪くありません。

しかしこの場合、「復活篇第0部」がどこか宙に浮いてしまいます。『復活篇(第1部)』そのものは「旧ヤマト」の枠組みに入っているのに、『アクエリアスアルゴリズム』はその枠からはみ出してしまうことになるからです。

そこで今回は、『ヤマト』作品を「旧ヤマト」と「新ヤマト」に二分する、シンプルな呼称・枠組みを提案します。

今回、「旧ヤマト」と「新ヤマト」を分ける最大のポイントは、「西﨑義展さんが携わっているかどうか」です。こうすることで、西﨑義展さんが関わっている『復活篇』を「旧ヤマト」に、関わっていない『アクエリアスアルゴリズム』を「新ヤマト」に、迷いなく分類することができます。

問題は企画段階まで西﨑義展さんが関わっていた『復活篇DC』と『2199』ですが、両作品を彼が一線を退いた後に具体化された作品だと解釈することで(彼が関わっていたら、我々の知る作品のあり方と異なっていたはず)、ひとまず「新ヤマト」の枠内に収めることにしましょう。

以上の観点から、これまでの『ヤマト』作品を区分してみます。

〇『宇宙戦艦ヤマト』シリーズ作品区分試案

<「旧ヤマト」>

『ヤマト』シリーズ(一部代表作のみ)
『2520』シリーズ
  • 『YAMATO2520』

<「新ヤマト」>

『2199』シリーズ
『復活篇』シリーズ
『ヤマトNEXT』シリーズ

〇おわりに

今回は、西﨑義展さんの関わりを基準に『ヤマト』作品を整理してみました。『2520』を独立させたことや『実写版』『2199』の扱い、コミカライズ・ノベライズの扱いなどいくつか課題は残されていると思いますが、ひとまず”分かりやすい”枠組みで整理できたかなと思います。

また、この枠組みは「『復活篇』シリーズが分断される」という課題を抱えることになります。しかし、西﨑義展さんの存在の大きさを考えると、敢えて分断してしまってもいいのかなとも思います。例えば2009年の『復活篇』を「前期復活篇」とし、『復活篇DC』『アクエリアスアルゴリズム』以降を「後期復活篇」と理解する手もあるはずです。ただこれは、西﨑さんの遺志を継いだと自認する『復活篇DC』スタッフにとっては、受け入れ難い枠組みでもあるでしょう。

さらに想起される問題としては、「新ヤマト」は一体いつ終わるのか、というものもあると思います。これは我々の時代認識における「現代」がいつまで続くのか、との問題とよく似ていますね。

西﨑義展さんの関わりを基準にした今回の枠組みを引き継ぐのであれば、「新ヤマト」の終わりとは、西﨑彰司さんの『ヤマト』への関わりが終わった時でしょう。今後しばらくは彰司さんが主導する時代が続くと思いますが、時間は止まってくれませんから、どこかのタイミングで後の世代に引き継ぐことも視野に入れなくてはなりません。彰司さんの後継者(それは人ではなく、企業かもしれませんが)に『ヤマト』のバトンが渡った時、そこで新しい「新ヤマト」が誕生し、彰司さんが関わっている今の『ヤマト』には別の呼称・枠組みが当てはめられるものと考えます。

今回の整理では人、とりわけプロデューサーに着目しました。その点において、製作委員会のパワーバランスに変化があったと思われる『2199』と『2202』を同じ枠組みに組み入れたことなど、やはり種々の課題はあると思います。また、他の観点に基づけば違った分類もできることでしょう。とはいえ、これからどんどん多様化すると思われる『ヤマト』作品をどう整理すべきかは、意外に大切な問題です。この枠組みに拘泥せず、継続して考えていきたい問題ですね。

*1: イントロダクション|宇宙戦艦ヤマト2199

*2:宇宙戦艦ヤマト2199

*3:INTRODUCTION┃宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち

*4:ちなみに『ヤマトという時代』のイントロダクションでは、福井さんが『2199』『2202』を「リメイク」と表現し、氷川さんは「『2199』からのシリーズ」と表現しています。