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偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【ヤマト新時代到来】 『黎明篇』『Λ』、そして『2205』

こんにちは。ymtetcです。

2021年9月27日:『宇宙戦艦ヤマト 黎明篇 アクエリアスアルゴリズム』発売。

2021年10月8日:『宇宙戦艦ヤマトNEXT スターブレイザーズΛ』第3巻発売。

        同、第18話公開。

2021年10月8日:『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』前章公開。

私たちは今、とても贅沢な時間を生きています。

今日はこの三作品について、語りましょう。

〇『黎明篇』『スターブレイザーズΛ』、そして『ヤマト2205』

先月27日、『宇宙戦艦ヤマト 黎明篇 アクエリアスアルゴリズム』が発売されました。

SF作家・高島雄哉さんを生粋のヤマトファンからなる「アステロイド6」が支え、『宇宙戦艦ヤマト 完結編』と『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』の間のドラマを、アクエリアスをめぐる群像劇としてダイナミックに描き出す。それは、劇中世界にとっても現実世界にとっても、「過去」となっていた「宇宙戦艦ヤマト」の復活劇・第一章に他なりません。

そして今日、『宇宙戦艦ヤマトNEXT スターブレイザーズΛ』第3巻が発売され、第18話がネット上で無料公開されます。SFドラマで注目される漫画家であり、『鉄腕アダム』を代表作とする吾嬬竜孝さんが、「過去」の『宇宙戦艦ヤマト』に囚われない新しい「宇宙戦艦ヤマト」の物語を描き出す。それは前例のない、『宇宙戦艦ヤマト』にとって初めての地平を切り開く航海の一ページになるでしょう。

そして今日、もっとも多くの人の注目を集めているであろうアニメシリーズの最新作、『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』が公開されます。『2202』脚本チームをベースに、『2202』ノベライズの皆川ゆかさんを本編スタッフとして補強。SF設定の小倉信也さんがSF的仕掛けを入れ込みつつ、映像面ではサテライトより新たなスタッフが大量加入。『2199』へのリスペクトと、『2202』の感性と、そして『2199』とも『2202』とも異なる映像作りへの意欲が融合した新作『2205』は、まさに、リメイク『ヤマト』の「新たなる旅立ち」に位置づけられています。

〇三作品の共通点

これら三つの作品の共通点は、「”いま”の世界に送る、新たな『宇宙戦艦ヤマト」であることです。

どの作品も2019年以前に企画されているので、厳密に言えば現在の世界に対する『ヤマト』ではありません。ただ、2019年以前と2020年以後で社会が断絶したわけではありませんから、『2202』以前の作品よりもずっと、この三作品は”いま”の世界に向けた作品に仕上がっていくものと考えています。

〇三作品の棲み分け

今度は三作品のちょっとした違いを考えてみましょう。

まず、『スターブレイザーズΛ』は旧作、リメイクを含めた、過去の『宇宙戦艦ヤマト』すべてに囚われない作品。すなわち、「全く新しい『宇宙戦艦ヤマト』を作る」ことに主眼が置かれています。「全く新しい『宇宙戦艦ヤマト」。これが『スターブレイザーズΛ』です。

次に、『アクエリアスアルゴリズム』は旧作世界に立脚した最新鋭の『宇宙戦艦ヤマト』です。これを作ることで、歴史の一部となっていた旧『宇宙戦艦ヤマト』を、再び”いま”を生きるシリーズ作品として復活させる。「旧作世界に立脚した最新鋭の『宇宙戦艦ヤマト」。これが『アクエリアスアルゴリズム』です。

最後に、本日36の劇場で公開される『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』は、前2作『2199』『2202』と比べて、旧作世界への依存度が劇的に低下しています。あくまで旧作のリメイクに徹していた『2199』『2202』に対して、『2205』は、ある種の失敗をした旧作を踏まえつつ、むしろ『2199』に立脚することを重視していると考えます。「『2199』シリーズ」として、リメイク『宇宙戦艦ヤマト』を再始動させる。「旧作のリトライを志向する『2199』シリーズの新作」。これが『ヤマト2205』です。

この三つの作品は、「過去」に対する向き合い方が異なります。

最も「過去」に対して穏健であろうとし、むしろ再評価を促そうとするのが『アクエリアスアルゴリズム』だとすれば、「過去」に対してリスペクトをしつつも批判的視線をなげかけ、新たなシリーズ作品を再構築しようとするのが『ヤマト2205』、そして最も「過去」に対して革新的なのが、「過去」のほとんどを敢えて無視した『スターブレイザーズΛ』。

今の『宇宙戦艦ヤマト』は、偉大な「過去」に対してどのように向き合うかを、試行錯誤している時だと言えるでしょう。

〇SF作品としての『ヤマト』復活へ

さらに、もう一歩立ち入って、作品の共通点を眺めてみます。

2012年以降『宇宙戦艦ヤマト』界を牽引してきた『宇宙戦艦ヤマト2199』は、『方舟』が星雲賞を獲得したことからも分かるように、SFを重視する作品でした。

一方、2010年代後半の『宇宙戦艦ヤマト』の表舞台に立った『2202』は、中核スタッフの変更もあってか、むしろもっと上の人たちの判断の変更があってか、SFを『2199』ほどには重視しない作品でした。

この、半ば対極的な『2199』『2202』を経て、今、私たちの目の前にある『宇宙戦艦ヤマト』はどうでしょうか。

物語は高島雄哉さんや吾嬬竜孝さんといったSFを志向するクリエイターに委ねられ、『2205』ではSF設定の小倉信也さんが、『2202』のリベンジとばかりに意欲を見せています。

SF作品としての『宇宙戦艦ヤマト』を復活させる。いまの『宇宙戦艦ヤマト』は、このようなアプローチで取り組まれているものと考えます。

〇大人と若者が共存する『宇宙戦艦ヤマト』へ

全く新しい『宇宙戦艦ヤマト』を志向する『スターブレイザーズΛ』は若者のドラマが軸となっていますが、『アクエリアスアルゴリズム』と『2205』は興味深い構図を示しています。

アクエリアスアルゴリズム』であれば、大人である古代、雪、真田たちと、若者である美雪、パピライザー、真帆。『2205』であれば、大人である古代、雪、真田たちと、若者である土門、みやこ、太助、坂東、雷電、坂本。大人と若者が共存し、相互にかかわりあいながらドラマを展開していく構図です。

大人と若者の融合は、実は旧作『宇宙戦艦ヤマト』の原点に立ち返ることでもあります。若者としての古代進を主軸に、若者を導く沖田十三という大人がいる、土方竜がいる、山南がいる。大人と若者あっての『宇宙戦艦ヤマト』だったとすれば、新作に持ち込まれた構図は、ある種の原点回帰とも言えます。

〇「過去」と向き合い、未来へ

前を向く、未来を向く。そう考えた時、私たちには二つの選択肢があります。

過去を振り切って進むのか、過去を大切にして進むのか、です。

ですがこの二項対立は、いずれも「過去」に対するリスペクトを含んでいます。「過去」への認識なくして「過去」を大切にできないのはもちろんのこと、「過去」への認識なくして「過去」を振り切ることもできません。

宇宙戦艦ヤマト』には、あまりにも偉大過ぎる「過去」があります。その中で『2199』『2202』と試行錯誤してきて、うまくいったことも、うまくいかなかったこともありました。

では、ここから『宇宙戦艦ヤマト』を未来に繋ぐためにはどうすればいいのでしょう。そこで『宇宙戦艦ヤマト』はいま、「過去」との向き合い方が異なる三つの作品を、私たちに届けてくれています。

これが『宇宙戦艦ヤマト』最後の輝きなのか、それとも『宇宙戦艦ヤマト』復活物語の序章なのか

『黎明篇』『Λ』、そして『2205』が並び立つ2021年の秋は、大げさに言えば、そのことが問われていく季節になるのではないでしょうか。