ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

『ヤマト2202』に欠けていた「わかりやすさ」

こんにちは。ymtetcです。

色々と批判された『ヤマト2202』ですが、資料集の「シナリオ編」を読むと、同作のプロットには大きな破綻が見られなかったことが分かります*1。それだけに、本編に欠けていたものを指摘したくなるのが、性というものです。

私は、『ヤマト2202』には「わかりやすさ」が欠けていたと考えます。そのせいで、『2202』は受け手である観客に余計な手間を取らせることになり、結果的に観客の満足度を下げた側面もあったのではないでしょうか。

〇「わかりにくさ」の例をいくつか挙げてみる

第1話、アンドロメダに倒せなかった大戦艦をヤマトが倒せた理由。

第2話、島がテレザートへの航海に反対した理由。

第5話、直前まで艦隊行動をとっていた山南がヤマトとの一騎打ちに切り替えた理由。

第7話、ガトランティスが突如として250万隻の大戦力を送り込んできた理由。

……その他諸々。

これらは、果たして本編を観ただけで十分に理解することができたでしょうか。

〇「わかりにくさ」のデメリット

先に挙げた例は、必ずしも理解不能なものではありません。

例えば第1話の件については、大戦艦との位置関係がアンドロメダとヤマトでは異なることが要因として考えられますし、ヤマトが何らかの新型弾を使用した可能性は、画面上で示唆されてもいます。観客がそこから考察して、理由を補完することは不可能ではありません

ですが、果たしてその作業を観客にさせる意味はあったのか、と私は思います。

『2202』は観客に「アンドロメダに倒せなかった大戦艦をヤマトが倒せた理由」を問いかけるためのアニメーション作品なのか……と言えば、答えはそうではありません。『2202』のストーリーにはもっと大事なものがありました。例えば第1話では、アンドロメダ波動砲を使用したことの方が、ドラマ的にはずっと大切な要素でした。

〇「わかりやすさ」を重視したい

極端な話、ヤマトが大戦艦を倒せた理由など、ストーリー上はとても些細な、枝葉の設定に過ぎません。『2202』全体から見れば、どうでもいい問題なのです。

例えば、「ヤマトは真田の開発していた新しいエネルギー弾を使ったので大戦艦を倒せました」と適当に設定しておいて、劇中で主砲を発射する際にその旨をはっきりとセリフで表現しておく。決して深みのある設定ではありませんが、「わかりやすさ」はあります。観客も「真田さんだからね」と、ひとまず納得はしてくれたはずです。

そうすれば、「大戦艦をヤマトが倒せた理由」に観客のエネルギーを割かせる必要などありませんでした波動砲を目の前で放たれた古代の心情や、山南の心情、ヤマトの改装に取り組んでいた真田の心情。『2202』の作風からすれば、そちらに観客の意識を向かせる方がずっとよかったのです。

〇残念な開き直り

残念だったのは、こうした「わかりにくさ」を指摘した書き込みに、ある『2202』スタッフが「わからないそちらが悪い」という態度を一貫してとっていたことでしょう。

もちろん、自分たちの意図を十分に理解してくれない受け手に腹を立ててしまう気持ちも理解できます。ですが、それ以上に作り手は、そうした枝葉の疑問点を本編に残してしまったこと、それ自体を課題と見なすべきだったのではないでしょうか。

〇説明の重要性

『2202』は、「説明が多い」と批判されたこともありました。確かに、説明台詞が多くなると、映像作品としては厳しい評価を下されます。

ですが、私はこの際、説明でいいとも思っています。問題は説明を回避することで、「わかりにくさ」が大量に残されることでしょう。

劇中で説明をすることには勇気が必要です。設定を観客に周知させるためには最も簡単な方法である一方、キャラクターの会話の運びとしては違和感が残ってしまうからです。例えば、『2202』第19話では藤堂早紀が「ご承知のように」と前置きしてワープ阻害フィールドの説明をしましたが、現実的に考えれば違和感のある会話でした。

でもそんな説明も、ないよりはずっといいと思っています。事実、『2202』の第六章は、『2202』では「わかりやすさ」のある章でしたよね。

また、「わかりやすさ」は初心者ファンを取り込む上でも重要だと考えます。

前回の記事で取り上げた『マクロスΔ』は、説明という意味ではとても親切なアニメです。当然のようにナレーションがありますし、例えば、第1話の4分35秒以降のシーンでは、

youtu.be

ワルキューレの役割」と「フレイアの目的」を流れの中で説明しています。

同作の場合、説明を重視するあまりセリフ運びに違和感をきたしているところもあります。それでも、物語を進める上で必要な情報は十分にこちらへ与えられており、とても「わかりやすさ」のある作品です。初心者である私も、現状(第7話時点)、なんとか物語についていくことができています。

リメイク『宇宙戦艦ヤマト』は次が三作目です。ガトランティスは消えましたが、ガミラスイスカンダルは残っています。物語はどんどん複雑になっていくでしょう。

ならば、枝葉の設定で観客を悩ませている場合ではないのです。周知の必要な独自設定はある程度説明で済ませておいて、しっかりと物語の本筋で観客の頭を動かし、考えさせ、議論を巻き起こすような作品にしていきたいところですね。

*1:ただし、シナリオ段階でいくつか細部を保留としていた点があり、そこが巡り巡って不具合をきたした側面もありますが。