ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【物語以外にも】『アクエリアス・アルゴリズム』の存在意義

こんにちは。ymtetcです。

我が家の『アクエリアスアルゴリズム』は、先日の三冊から二冊に戻りました。

ふふふ……!

さて今日は、「『アクエリアスアルゴリズム』の存在意義」について考えていきます。まず第一に浮かぶのは「『完結編』と『復活篇』の間を埋めたこと」なのですが、これはあくまで物語の中身の話。今日は、物語の外にもある存在意義について、考えていきましょう。

アクエリアスアルゴリズム』の存在意義は何か?

それは「ファンの目線に立った創作と考察が、公式の『宇宙戦艦ヤマト』として承認された」ということです。

〇『アクエリアスアルゴリズム』が持つ二面性

アクエリアスアルゴリズム』は、高島雄哉さんの新作小説であると同時に、2009年の『復活篇』以来初めての、旧『宇宙戦艦ヤマト』シリーズの最新作でもあります。

だからこそ、岡秀樹さんは、高島さんが「たった一人で」「ヤマトの新作に向き合わされている」ことを気にかけて、「ヤマトのことを深く理解している手練れの乗組員」を制作に参加させました*1。それが「アステロイド6」なるブレーン集団の結成に繋がったわけです。

そして今、私の手元にある書籍版『宇宙戦艦ヤマト 黎明篇 アクエリアスアルゴリズム』には、「著 高島雄哉」「協力:アステロイド6」とあります*2

〇「ファンの魂」の承認

こうして本作は、高島さんの言葉を借りれば「長年にわたりヤマトを愛し、ヤマトの世界を考え続けたファンの魂」を*3、作品へ注ぎ込むことに成功しました。「著作総監修/西﨑彰司」「ライセンス/ボイジャー」のクレジットと共に、「ファンの魂」が公式の『宇宙戦艦ヤマト』として承認されたのです。

私はここに、本作の大きな意義があると考えています。

〇『2199』との違い

「ファンの魂」、長年の間ファンが積み上げてきた議論や考察と集合知が、公式作品へと注ぎ込まれる。と聞いて、『2199』を思い出すファンの方も多いでしょう。『2199』は出渕さんの作品ではありますが、そこには数十年もの間ファンが積み上げてきた議論、考察、創作などの集合知が余すところなく注ぎ込まれていました。

ですが、『2199』と『アクエリアスアルゴリズム』には決定的な違いがあります。

アクエリアスアルゴリズム』は、『宇宙戦艦ヤマト 完結編』の続編……、すなわち『宇宙戦艦ヤマトⅢ』の続編であり、『ヤマトよ永遠に』の続編であり、『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』の続編であり、『宇宙戦艦ヤマト2』の続編であり、あの1974年の『宇宙戦艦ヤマト』の続編なのです。

西﨑義展さんはもちろん、松本零士さんも含めた全てのオリジナルスタッフが作品にクレジットされていた旧『ヤマト』シリーズの続編*4。ここが『2199』とは根本的に異なっている点です*5

加えて、『黎明篇 アクエリアスアルゴリズム』は(私の知る限りは)オリジナルスタッフの参加なしで作られています。

「長年にわたりヤマトを愛し、ヤマトの世界を考え続けたファンの魂」が、世界で最初の『宇宙戦艦ヤマトと全く同じ宇宙に存在する物語として、オフィシャルによって承認される。それはきっと、『宇宙戦艦ヤマト』の歴史において特別な意味を持つと私は考えています。

〇「光ある未来に向かって」

アクエリアスアルゴリズム』は、単に『完結編』と『復活篇』を繋ぎ、旧『ヤマト』シリーズにもう一度光を当てるだけの作品ではありません。

オリジナルスタッフの多くを失いつつある旧『ヤマト』シリーズが、旧『ヤマト』シリーズの制作過程に関わっていなかった新世代のクリエイターの手に委ねられていく、その第一歩を刻む作品なのだと思います。

『ヤマトマガジン』の言葉を借りれば、『アクエリアスアルゴリズム』は「光ある未来に向かって前進」する作品。すなわち、1974年に始まった『宇宙戦艦ヤマト』シリーズを新しいステージへと押し上げた作品なのではないでしょうか。

*1:岡秀樹「解説にかえて」高島雄哉著、アステロイド6協力『宇宙戦艦ヤマト 黎明篇 アクエリアスアルゴリズムKADOKAWA、2021年、348頁。

*2:今回の記事の末尾に貼ったAmazonのリンクに至っては、「作者:高島雄哉,アステロイド6」です

*3:『宇宙戦艦ヤマト 黎明篇』発売記念インタビュー!“黎明編”に込められた熱い思いとは!? | 電撃ホビーウェブ

*4:旧『ヤマト』シリーズにスタッフとしてクレジットされていた方を「オリジナルスタッフ」と呼ぶのですから当然ですが。

*5:むしろ出渕さんは、『ヤマトⅢ』にクレジットされていた点ではオリジナルスタッフの一人でさえあります。