ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【アクエリアス・アルゴリズム】宇宙空母ブルーノア

こんにちは。ymtetcです。

宇宙戦艦ヤマト 黎明篇 アクエリアスアルゴリズム』には、1シーンではありますが、『復活篇』や『2520』に登場した戦闘空母≪ブルーノア≫が登場します。

アクエリアスアルゴリズム』におけるブルーノアの扱いは、短いながらも敬意に満ちたものであったように思います。今日はこれについて、考えていきます。

〇オーダー宙域での艦隊戦

アクエリアスアルゴリズム』はアクエリアスを舞台にした集団劇を主としていますが、もちろんそれだけではありません。アクエリアスを舞台にした集団劇からすればある種の”脇役”でありながら、一つの小さな集団劇として機能していたのが「オーダー宙域」での艦隊戦です。

同作の制作過程に詳しいわけではありませんが、この艦隊戦からは「アステロイド6」の戦術設定担当、我が家の地球防衛艦隊さんの雰囲気を感じます。

個人的に、我が家さんの艦隊戦は「艦隊に感情を与える」点に特徴があると考えています。ここが我が家さんの作る艦隊戦の魅力の一つで、「宇宙戦艦ヤマト2199外伝“第二次火星沖海戦”」シリーズでは、それを十二分に感じ取ることができます。

本作でも、

(略)空間機動部隊は、司令長官の烈々たる言葉を受け、先を争って追撃を始めていく。艦隊陣形が前後に長く伸び始めたそのとき、異変はおこった。

(高島雄哉著、アステロイド6協力『宇宙戦艦ヤマト 黎明篇 アクエリアスアルゴリズムKADOKAWA、2021年、194頁。)

あたりは(我が家さんのお仕事なのかは分かりませんが)、艦の動きを中心に艦隊戦を描きながら、艦を動かす人間の感情が描かれており、真に迫るものがありますよね。

〇オーダー宙域の戦いにおけるブルーノア

さて、今回注目したいのが、このオーダー宙域の戦いにおけるブルーノアの描き方です。

そもそも『ヤマト』シリーズにおけるブルーノアは、西暦(星暦)2520年を舞台とした『YAMATO2520』が初出で、西暦2220年を舞台とした『復活篇』にも登場するメカです。『ヤマト』世界ではおよそ300年間使い続けられるという、特殊な立ち位置のメカだと言えます。そのブルーノアが、西暦2215年を舞台とする『アクエリアスアルゴリズム』では「空間公試航海中」の「地球防衛軍次期総旗艦」として登場したわけです。

ポイントになるのは、ブルーノアが物語に登場するタイミングでしょう。

アクエリアスアルゴリズム』で描かれたオーダー宙域の戦いとは、ディンギル残党軍艦隊と地球防衛軍艦隊の、一大決戦的艦隊戦でした。ここで地球防衛軍は”とある理由”によって苦戦を強いられるのですが、そこに駆け付けたのが、空間公試航海中のブルーノアです。

【集団劇のあり方】『黎明篇』『ヤマト2205』、そして『Λ』」で、『アクエリアスアルゴリズム』と『2205』に共通して「おいしいところをヤマトが持っていく」シーンがあり、そこには「ヒーローとしての宇宙戦艦ヤマト」らしさが反映されているのだ、と書きました。

ここで、ブルーノアはある種の「ヒーロー」として描かれています

つまり、オーダー宙域という脇役的立ち位置とはいえ、そのシーンにおける主役として、「ヒーロー」としての役割を、ブルーノアは与えられているわけです。

ブルーノアに敬意を払うこと

『ヤマト』ファンが「ブルーノア」という言葉を認識するとき、そこには二つの「ブルーノア」が存在します。一つが、ここまで触れてきた『復活篇』『2520』のブルーノア

そしてもう一つが、1979年のテレビアニメ『宇宙空母ブルーノア』です。

『YAMATO2520』は、ポスト『ヤマト完結編』の物語として作られた作品です。それは『復活篇』も同じ。その点において、ブルーノアはポスト『完結編』の象徴的なメカの一つであったと言えます。

いっぽう『ブルーノア』は、『2520』や『復活篇』以上に、ポスト『宇宙戦艦ヤマト』が強く意識された作品であったと言えるでしょう。つまり「ブルーノア」とは、「完結」後の『宇宙戦艦ヤマト』を象徴する存在であり、ある意味では「『ヤマト』のいない時代」の象徴でもあります。

それなのに、これまでの「ブルーノア」は「タイトル詐欺」と揶揄されてみたり、本格的に活躍する前に打ち切りになられてみたり、開始数分で大破させられてみたり。活躍の場がなかったわけではないので不遇というほどではありませんが、どこか「ヤマトのようなヒーロー」になりきれなかったのがブルーノアでした。

そんなブルーノアを、「次期総旗艦」という明日への希望に満ちたポストで、そして苦戦する地球艦隊を勇気づけるヒーローとして登場させたところに、私はアクエリアスアルゴリズム』の視野の広さと、その視線のあたたかさを感じました。

とはいえ、今回も本格的な活躍には至らなかったブルーノア。『黎明篇』の未来があるなら、彼(彼女?)の本格的な活躍にも期待したいですね。