ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【ヤマト2199】ファンの世代交代を遠ざけた"制作中断"

こんにちは。ymtetcです。

宇宙戦艦ヤマト2199』は、間違いなくファンの世代交代に貢献した作品です。

しかし、『2199』の目指したファンの世代交代は、必ずしも順調には進まなかったと考えます。世代交代はヤマトファンの子ども、SF好き、ミリタリー好きといった「潜在的ヤマトファン」にとどまり、より広範なムーブメントにはなりませんでした。

そこで今回は、『2199』の目指したファンの世代交代がなぜ順調にいかなかったのかを考えます。さらに今日は、視点として”2010年の『2199』制作中断”に注目します。

『2199』の目指したファンの世代交代が順調に進展しなかったのは、コンテンツとしての『2199』が、若者に注目されない環境の中で育ってしまったからだと考えます。

〇若いアニメファンを意識してスタートしたが……

2012年にスタートした時点の『2199』は、若いアニメファンを意識していた形跡が明確に見て取れます。

主役級の声優はおおむね当時のトレンドに沿っていましたし、いわゆる「アホ毛」は、スタッフから苦言を呈されながらも批判覚悟で盛り込んでいます。さらに、ランティスとのコラボによるアニソン歌手の起用も堅実で、特に作詞家・畑亜貴さんの起用は、直後の『ラブライブ!』大ヒットを見てもトレンドに沿っていたと言えるでしょう。

しかし、2012年にスタートした『2199』は、若者には到底注目され得ない環境にありました。劇場上映は限定的なもの、観客の大半は既存ヤマトファンでした。そして『2199』は、口コミ的にヤマト世代へと広がっていきました。

その結果、『2199』は2013年のテレビ放送以前の段階で、ヤマト世代からなる「『2199』ファン」によって支えられたコンテンツとして、既に完成されていました。

〇『2199』ファン=ヤマト世代に向けた作品へ

こうして、『2199』のターゲットは、総じて『2199』ファン=ヤマト世代へと偏っていったと考えます。少なくとも2012年のスタート時にあったような、若いアニメファンに向けた志向は優先順位を大きく下げていました

メカにせよキャラにせよ、序盤はスピード感や爽やかさ、スマートさを強調していたのに対して、第五章以降はヤマトらしい重厚感と迫力を強調したものが増えていきます。


www.youtube.com

第15話のキャラ&メカ作画は当時、第五章PVの段階でファンから「変わった」との指摘があった回であり、分かりやすい例だと思います。さらに、この延長線上にあった劇場版『星巡る方舟』は、完全に『2199』ファン向けの作品となっていました。

このように、『2199』は進行中にほとんど若者世代の目に晒されなかったことにより、ヤマト世代に向けた作品としての志向を強めてしまったと考えます。

〇『2199』を若者から遠ざけた原因

より根源的な原因は、2010年に『2199』が制作中断となってしまったことにあります。

制作中断以前の『2199』は、いわゆる「UC式」の先行上映ではなく、テレビ放送される企画として存在していたと言われています。劇場アニメの『復活篇』、実写映画の『SBヤマト』、テレビアニメの『2199』、というわけです。

仮に『2199』が2010年の頃に「テレビアニメとして」スタートしていたならば、『2199』の作風は現在私たちが知るものとは大いに異なっていたはずです。なぜなら、その過程で若いアニメファンの目に触れるからです。彼らを含めての賛否両論が交わされていたならば、『2199』は終盤になっても、序盤の「若者向け」的要素を多く含んだ、あるいはもっと増やした作品になっていた可能性があります。そもそも、途中で軌道を修正するような時間もなかったことでしょう。

また、2010年に制作が中断したことで、『2199』が用意していた「アホ毛」などの若者向け要素は、2013年にはトレンドから遅れたものになってしまいました。2010年の若者に向けた要素を2012年のヤマトファンに見せて賛否両論を受け、修正しながら迎えた2013年ですから、当たり前といえば当たり前です。

このように、2010年の制作中断と公開形態の変更は、(『2199』のクオリティアップには大きく貢献しましたが)ファンの世代交代にとっては必ずしもよいことではなかったと考えます。『ヤマト』は、若い世代と共に作品を作り上げていく機会を、結果的に逸してしまったわけです。