こんにちは。ymtetcです。
最近、スターウォーズのスピンオフドラマ『マンダロリアン』を観ています。これを観ながら「面白いスピンオフって何だろう?」と考えています。
そこで思い出したのは、『アクエリアス・アルゴリズム』が『ヤマトマガジン』における連載時よりも単行本の方が格段に読みやすくなったことです。それはもちろん、細かな文章の調整や印刷の工夫が背景にあります。
ただ、特に大きな効果を発揮したのが、冒頭に『ヤマト完結編』のシーンを移動させたことではないでしょうか。連載時は途中で出てきた回想シーンを冒頭にした。この工夫が、なぜ『アクエリアス・アルゴリズム』を読みやすくすることに繋がったのか、今日は考えていきたいと思います。
『アクエリアス・アルゴリズム』は『完結編』のシーンを冒頭にもってきたことで、シリーズのファンに共通の知識からスタートさせることに成功したと考えます。
〇共通の知識からスタートする重要性
もともとの『アクエリアス・アルゴリズム』は、冒頭で、惑星ベルライナでの悲劇を描いていました。これは古代が軍から一線を退いたきっかけとなる出来事で、『アクエリアス・アルゴリズム』の柱の一つです。
しかし、ここで登場する事件も、惑星ベルライナという名前も、ファンにとっては新設定となります。
また、『アクエリアス・アルゴリズム』は、ラストで救難艇オリオンに乗って旅立つ古代の姿を描きました。これは、沖田との再びの別れを経た古代の新たなる旅立ちを描くシーンで、やはり本作の柱の一つです。しかし、貨物船ゆきは既存の設定とはいえ、この後の古代のドラマがどう『復活篇』に続いていくのかは不明です(続編を想定したラストだから当然ですが)。
このように、『アクエリアス・アルゴリズム』単体での構成としてはいいのですが、シリーズ作品であることを考えると、冒頭もラストもどちらも新設定が多く、ファンにはどちらも馴染みがありません。そのため、既存の作品に対してどの部分を描いているのか不明確なのです。
その点、ファンの多くが知っている『完結編』のシーンからスタートさせるのは、ファンにとってはとても親切だと言えます。
〇リメイクシリーズに応用してみる
このように、物語の出発地点、もしくは到着地点のどちらかで、シリーズ作品のファンにとって馴染みの深い設定やシーンと繋げることで、シリーズのファンに親しみやすいスピンオフが可能になるのではないでしょうか。
では、これをリメイクに応用してみましょう。
この視点に立つと、『2199』の冒頭は旧作を再現しており、割と親切です。ただ、銀河航路を突然登場させるのは不親切で、むらかわ版の構成の方がまだ親切と言えます。
『2202』もいいのですが、シリーズのファンには馴染みのないメカが登場したり、紋様が2199とは少し異なる使い方をされていたりなど、少し不親切になっています。
また、既存設定を活用するという意味では『2205』冒頭も素晴らしいと言えますが、あたかも『2205』がヤマトⅢのリメイクであるかのようなミスリードを招く設定だったかもしれませんね。
まぁ、ここまで潔癖になる必要はないと思います。
ただ、シリーズ作品においては、物語のスタートもしくはゴールにおいて、シリーズ作品のファンにとって馴染みの深い要素を盛り込むことが必要なのではないでしょうか。そうすることで、ファンにとって親切な新作が作れるのではないか、と感じています。