〇はじめに
こんにちは。ymtetcです。
お盆ですね。お仕事の方もいらっしゃるでしょうか。私も仕事ではありませんが休みなく、少々忙しいお盆を過ごしています。
さて、今日は2016年に大ヒットした2本の映画『シン・ゴジラ』『君の名は。』を取り上げつつ、さらに私の趣味領域であるヤマトシリーズから『さらば宇宙戦艦ヤマト』を取り上げて、「音楽的スイッチ」の話をしてみたいと思います。
『さらば』を一番最後に持ってきたい関係上、敢えて公開順とは逆に作品を取り上げていきますね。
◯決戦とは
今日取り上げる三つの映画は、ひとつの共通点を持っています。
それは、終盤に物語の全てを解決する決戦があり、その決戦が終わると共に、物語が完結するとはいう共通点です。
◯『君の名は。』
(2016年、音楽:RADWIMPS)
決戦までのストーリー:時を超え、「結び」の力で結ばれた男女。大切な人を悲劇から救うため、主人公は動き出す。
そして流れるのが「スパークル」です。
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この曲が流れる場面は、視点が主人公から「人々」へと移る場面。大きく視点が広がるこの場面では、「スパークル」がまさに「音楽的スイッチ」として、映画の中で作用していると言えます。
◯『シン・ゴジラ』
決戦までのストーリー:巨大不明生物〈ゴジラ〉が東京を蹂躙。核攻撃のタイムリミットが迫る中、ゴジラを止めるため、巨災対は〈ヤシオリ作戦〉に最後の希望を託す。
そして流れるのが「宇宙大戦争」。
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これまで、随所に伊福部サウンドを織り交ぜながらも、EM20を多用しつつリアル路線をとってきたシン・ゴジラが、この「音楽的スイッチ」(+新幹線爆弾)を境に、ハッタリの効いた迫力ある展開(決戦)へとシフトチェンジします。
◯『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』
(1978年、音楽:宮川泰)
決戦までのストーリー:地球艦隊壊滅! 最悪最大の危機が地球に迫る中、かつての英雄・宇宙戦艦ヤマトが白色彗星に立ちはだかる。
そして流れるのが「ヤマト再会」。
この曲は、『さらば』最大の特徴である「登場人物が次々と死ぬ」展開(決戦)の口火を切った音楽的スイッチだと言えます。直後森雪が倒れ、これ以降多くの主要キャラが戦死しますね。
コスモタイガー隊の出撃シーンでは前作のメロディが使われており、「ぬか喜び」も含めてこれまでの『宇宙戦艦ヤマト』的な雰囲気を醸し出しているのですが、この「ヤマト再会」によって雰囲気は一変。本来はピンチなのでピンチらしい音楽がかかる所ですが、ここを悲壮感のある音楽にするというのは、今ヤマトに迫るピンチは「これから脱出するピンチ」ではなく、「深く悲しい運命の始まり」であることを示唆しているといえるでしょう。
地球艦隊壊滅~ぬか喜びまで、に凝縮された「前作的」ヒロイックさに、「最終回的」な悲壮感を追加しているとも言えます。『さらば』の終盤が「前作的」であるということは以下の記事に詳述していますので是非ご覧ください。
この悲壮感は、死へと向かう戦士たちの運命を示唆しているという点でもまた「大和」的、すなわち「前作的」であるとも言えます。「大和」は「ヤマト」の紛れもない原点ですからね。
〇おわりに
今日は3つの映画の「決戦」に着目し、「音楽的スイッチ」なる造語をベースに色々と考えてみました。
『君の名は。』では「スパークル」が、決戦に際して視点を広げる場面、言い換えると、この決戦が世界の中でどう捉えられ、この決戦が世界のどこにあるのかを確認する場面で使用され、決戦の導入を描く「音楽的スイッチ」として機能していました。
『シン・ゴジラ』では「宇宙大戦争」がヤシオリ作戦の口火を切り決戦としてのスイッチを入れます。前半部のリアリティに比べ、ヤシオリ作戦はまさに勢いとハッタリの大スペクタクル。ここの切り替えをこの曲が担っているわけです。
『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』では、「ヤマト再会」が、前作『宇宙戦艦ヤマト』的な展開に対して、さらに最終回的・大和的な悲壮感を加えることで、従来の克服を前提とした危機描写から迫りくる運命的悲劇描写へと転換させるスイッチを担っていました。
〇「音楽的スイッチ」に関する余談――シン・ゴジラ
これは完全に余談ですが、シン・ゴジラにはもう一つの「音楽的スイッチ」があります。
それが、「Who will know」の流れる場面です。
シン・ゴジラ 放射熱線シーンBGM「Who will know / 悲劇」を弾いてみた - YouTube
(↑私が個人的に大好きな方の「弾いてみた」動画です。ヤマト系もおススメ。)
この映画は、間違いなくこの音楽によって「切り替え」られています。
決戦という点に着目しなければ、むしろこちらの方がスイッチ的だと思います。
シン・ゴジラについては私の本業ではないので、まさしくこのタイミングでの「切り替え」を論じておられる以下の記事をご覧ください。
シン・ゴジラ感想 - 兵棋演習とファンタジーの裏表 - shigusa_t’s diary
私見になるが、恐らくシン・ゴジラの「リアル」は、タバ作戦が失敗し、米軍のバンカーバスターが投下された場面で終わっている。
ゴジラの背中からビームが放たれ、米軍機が破壊され日本の上層部が全滅したあのシーンを境に、シン・ゴジラの筋書きは「ファンタジー」へと切り替わっている。
ここで論じられている”「リアル」から「ファンタジー」への切り替え”を音楽的に担っているのが「Who will know」だと言えますね。