ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

西暦2021年の『宇宙戦艦ヤマト』回顧

こんにちは。ymtetcです。

西暦2021年が終わろうとしています。本年もお世話になりました。

今年は「ヤマトイヤー」だったと言ってもいいのではないでしょうか。毎月の『スターブレイザーズΛ』はさることながら、6月に『ヤマトという時代』、9月に『アクエリアスアルゴリズム』単行本、10月に『宇宙戦艦ヤマト2205』。劇場公開の映像作品が二作品あったわけですから、とても充実していたことが分かります*1

今日は、今年の1月2日に投稿した記事「西暦2021年の『宇宙戦艦ヤマト』展望」をベースに、西暦2021年の『宇宙戦艦ヤマト』を振り返っていきたいと思います。

○『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』

2021年6月11日に公開された映画『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』。実のところ、この映画の私の中での評価は高くありませんでした。

というのも、私はこの映画に、総集編以上の”一つの映画としてのまとまり”を期待していたからです。ですがそれは、ちょっと過大な期待であったと反省もしています。

『ヤマトという時代』は、総集編としての情報の網羅だけでなく、それをなるべく面白く魅せようとの努力を十分に行った、意欲作だったと思います。反面、”一つの映画”としてこの映画を評価しようとすれば、設定のディテールに(必要以上に)拘った「ノイズの絶えない」映画でもありました。音楽の使い方にしても、福井さんの目指した”音楽に合わせたカッティング”というよりは、シーンに対して音楽を長尺で流すだけの単純な使い方に見える場面が多かったと感じました。

とはいえ、全52話のテレビシリーズを"一つの映画"にまとめあげたその成果は認められるべきです。私たちが『2199』『2202』に再び向き合う格好の機会をもらえたことに感謝しつつ、この”一つの映画”が、ファン層の拡大に寄与して欲しいなと願うばかりですね。

○『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』

2021年10月8日に公開された『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』前章。とても爽やかな『新たなる旅立ち』だったと思います。

デスラーの新たな物語を幕開けさせつつ、『2202』主人公の古代進と、新人クルーの中の主人公・土門竜介の出会いの物語を描く。全8話の前半4話でありながら、そんな”一つの映画としてのまとまり”をもった映画でもありました。

『2199』『2202』に続くシリーズ作品としては、これら2作品で起きたことを極力否定せず、かつキャラクターの行動原理や理想像を継続させることで「続編っぽい続編」を実現させた作品だったと思います。

また、キャラクターをヤマトに集中させず艦隊に分散させたことで、違和感なく必要なキャラクターの描写に注力できたことも注目すべきでしょう。その結果、ヤマト艦内に土門世代、古代世代、山南世代の三世代が揃うことになり、いわば”全世代型”の『宇宙戦艦ヤマト』を実現させることができたと考えます。

そして『ヤマトという時代』で見られた”ノイズ”の多さも、『2205』ではとても整理されていたと思います。『2205』では、劇中で必要な設定の大枠を提示しつつ、気になる人のためにパンフレットや公式サイトで体系的かつ詳細な説明を提供する、そんな高いレベルでのベーシックが実現していました。「段取りを省く」ことによるテンポの良さ、安田賢司監督による現代的な演出も一役買いましたね。

『2205』という作品全体では後章を観ないことには評価できませんが、少なくとも前章単体では、良い映画に仕上がっていたことは間違いありません。「反乱によって戦争を避ける」など、シリーズとして新しい視点を盛り込んでいたことにも注目すべきでしょう。また、「人類最後の希望」論の視座からは、『宇宙戦艦ヤマト』のアイデンティティを問い直せる作品でもありました。

○番外編:『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』

年初に「番外編」として挙げた『シン・エヴァ』も、良い映画でしたね。私は「ごちゃまぜ全肯定」と表現しましたが、これまで存在したエヴァ、そして今存在するエヴァの全てを肯定する映画だったと思います。

宇宙戦艦ヤマト』の観点からみても、真っ赤に染まった地球で戦艦が撃ち合う「ヤマト作戦」、そして『完結編』や『さらば』を思わせる”艦長の決断”など、『ヤマト』のエッセンスが随所に盛り込まれた作品でしたね。

○『宇宙戦艦ヤマトNEXT スターブレイザーズΛ』

『スターブレイザーズΛ』は連載なので、まさに一年間楽しんだ作品でした。

人間の心(人間性)や優しさ、人の意志に着目する人間ドラマに、インド哲学を土台とした世界観、サスペンスと、盛りだくさんなSF作品に仕上がっていたと思います。

2020年の連載から続くトップネスたちの人間ドラマがレインの死を境に大きく転換し、『Λ』宇宙の真実に迫っていくクライマックスへと繋がっていく。ここから先はどうなるのだろう? そんな一年だったのではないでしょうか。

私は圧倒的に”人間ドラマ派”なので、サスペンスパートについては「課題」として、やや批判的なことも書きましたね。”はじめまして”だった2020年とはうってかわって、『Λ』の色々な姿が見えてきた2021年だったな、と思います。

○『アクエリアスアルゴリズム

最後に、思わぬ形で記事をたくさん書く機会を頂いた『アクエリアスアルゴリズム』です。

正直なところ、まだまだ色々な記事を書きたくてうずうずしているのですが、それは2022年以降に譲っておくことにします。

本作と私の出会いは『ヤマトマガジン』でしたが、最初は掴み所のない、ちょっと読むのが難しい作品でもありました。特に随所に盛り込まれている設定の補完が、それこそ『ヤマトという時代』の時のような”ノイズ”となっていたことも否めませんでした。

一方、単行本では、冒頭に沖田と古代の回想シーンが移動したことや、とても細かな修正を積み重ねたこともあって、とても読みやすく、掴みやすい作品になっていたと思います。特に「アクエリアスをめぐる人々」の集団劇として、非常にまとまりのよい作品になったのではないでしょうか。旧作の『完結編』や『復活篇』を再解釈するための題材としても、とても意義深かったと思います。

○楽しく、心地よい1年に

さて、私は1年前の「西暦2021年の『宇宙戦艦ヤマト』展望」で、”『ヤマト』を楽しむ一年にしたい”と語っていました。

終わってみれば、楽しいのはもちろんのこと、宇宙戦艦ヤマト』で嫌な思いをすることがほとんどない一年だったと思います。それは作品の出来がよかっただけでなく、ファンと作り手の距離感やファン同士の関わり合いが、とても適切な、本来の在り方に戻ったためだと思っています。これは2022年も続いて欲しいですね。

では、よいお年を!

*1:もちろん、コロナ禍でなければ1月に『時代』、6月に『2205』前章、10月に後章だったわけですから、本来ならば! との思いは浮かびますが……。