ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

「副監督」という役職名

こんばんは。ymtetcです。

いまや小林誠の代名詞ともなっている「副監督」。

この「副監督」という役職名は一般的ではなく、一体何をする役職なのか分からない故に、違和感を覚える人も少なくないと思います。

今日は「副監督」はいかなる役職と規定できるのか? を考えてみます。

結論から言えば、「副監督」とは、2202ではいわば「共同監督」とも言うべき役職なのではないでしょうか。

これは私が考えたことではなく、以下のサイトにヒントを得たものです。

WEBアニメスタイル_COLUMN

稲っち(以下“稲”)「『砂ぼ』さあ、俺が監督をやる事になっちゃったんだけどさあ、時間(スケジュール)もないし一緒に、共同監督でやんない?」
板垣(以下“板”)「やだ、共同監督なんて。だって責任の所在が曖昧になるし、稲っちにきた監督なんだから、監督の肩書きは自分でもらった方がいいでしょ」
「副監督、とかさあ~」
「それ、どーゆー仕事してほしいの、俺に?」
「まあ、コンテ・演出がメインだよね~、あとは好きに……」

これは「作業の進行を加速させるために監督を二人置いた」という特殊なケースなので、ヤマトにはそのまま当てはまりそうもないのですが、「共同監督」という表現は「副監督」という役職に対する考え方として示唆的だと思いました。

つまり「副監督」とは、「監督」の意向を作品に反映するためにお膳立てをする役割というより、「監督」と協力しながら互いの得意分野やこだわりを取り入れ、「監督」と「共同」で作品を「監督」する役職なのではないか、という。

特に2202の場合は、アニメーションが得意な羽原監督とメカニックが得意な小林副監督、という形で、ある意味、共同の「監督」体制が確立されているとも言えます。

とはいえ、この「副監督=共同監督」という図式が普遍的にあらゆるケースで適用できるのかと言われると、そうではないのも確かです。

例えば「副監督」制を採用しているアニメ作品で有名なのが『新世紀エヴァンゲリオン』ですが、「監督:庵野秀明」「副監督:摩砂雪」「副監督:鶴巻和哉」という体制が、果たして三人による「共同監督」体制、と表現できるかどうかは疑問ですよね*1

また小林誠自身について考えてみても、復活篇の時の「副監督」と2202の「副監督」ではその内実がやや異なるように思えます。

というのは、復活篇では西崎監督をはじめとした「格上」のスタッフがいて、あくまで「格上」に対する譲歩、ないしは対立の中で「副監督」を担っている。つまり、共同で「監督」するというイメージとはやや異なるわけです。

また「副監督」業務の解釈で言えば、復活篇では彼はきちんとメカニックデザインでクレジットされているので、復活篇に彼のメカが登場すること自体は「副監督」業務の範囲内ではありません。

しかし2202では、メカに手を出すことは「副監督」の業務と解釈されているわけですから、「副監督」という役職に対する解釈は、復活篇のそれよりもかなり拡大されていることが分かります。そして、上述の記事のような「やりたいところに手を出す」状態になっているのも事実でしょう。

このように、「副監督」といっても多様な解釈があります(「助監督」説、「共同監督」の言い換え説……)。ので、一概に定義することはできません。

その中で2202では、「共同監督」と言った方が近いと思われます。

ここまで考えてみても、やはりメカは「副監督」の業務とは思えません。

石津さん、玉盛さんと連名で「メカニカルデザイン」にするか、もしくは「メカニックディレクター」として二人よりも高い位置にクレジットするか……でもしないと、2202における彼の業務は明確化されないでしょうね。

*1:ちなみにリビルド版である『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズでは、「総監督、監督、副監督」体制を敷いていて、クレジットの多様性を感じさせてくれます