ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【これからの『宇宙戦艦ヤマト』】クリエイターの慣れを待つ

こんにちは。ymtetcです。

私たちはしばしば、新作『宇宙戦艦ヤマト』に携わるクリエイターに厳しい視線を向けます。それもとても大切ですが、彼らの”もがき”に対して、一定程度の優しさをもって「待つ」ことも大切なのではないでしょうか。

〇「あのスタッフを外せ!」

宇宙戦艦ヤマト』のリメイクが始まって以降、目立つ論調があります。それは「あのスタッフを外せ」というものです。私たちはしばしば、さながらプロスポーツチームの熱心なファンによる「あの監督を解任しろ!」のように、特定のスタッフを『宇宙戦艦ヤマト』から切り離そうとします。

私自身は、その考え方そのものには反対しませんし、賛同することも少なからずあります。そして、そのようなヤマトファンの厳しい視線こそが、今後の『宇宙戦艦ヤマト』の発展には欠かせないとも考えています。

ですが、厳しい視線を向けると同時に、私は「長い目で見る」視点も大事なのではないかと思います。新作『宇宙戦艦ヤマト』に携わるスタッフを評価する際には、「『宇宙戦艦ヤマト』に対する慣れ」、すなわち適応という観点も必要なのです。

それはなぜか。

〇複雑すぎる「ファンの声」

ヤマトファンの視線は常に厳しいです。しかもまとまりがありません。

宇宙戦艦ヤマト』の「ファンの声」は、あまりにも複雑なのです。それなのに、その「声」を無視すれば絶対に成功しない現実があります。

宇宙戦艦ヤマト』を作ることは、とてもとても難しいのです。どんな実績のある人でも、どんなに実力のある人でも簡単にはいかないでしょう。

このような状況では、クリエイターが『宇宙戦艦ヤマト』に適応し、実力が発揮できるようになることを待ってみる、という考え方も必要だと考えます。

福井晴敏の『ヤマト』慣れ?

1月のオールナイトニッポンで、福井さんは『ヤマトという時代』に向けていくつかのコメントをしていました。そこでは、「『宇宙戦艦ヤマト』の社会性」や「『宇宙戦艦ヤマト』との出会い」といった、これまでの福井さんらしい、あるいはこれまで実際に語ってきた内容も語られていました。

ですが、それと同時に、これまでの傾向とは少し違うことも語っていました

例えば、福井さんは『ヤマトという時代』に絡めて、『2199』の出渕さんの功績を語ったのです。その時、私がとったメモがこれです。

福井:2199の段階で行われていた「ファンの疑問を吸い上げる」という作業、出渕さんたち(!)がやっていた作業をさらに推し進めた。2199の設定を引き継いで拡張させ、絵に起こした。

 「(!)」をメモしたのは、福井さんが出渕さんの名を明言したことに驚いたからです。それと同時に、私は、福井さんの基本姿勢の中に「『2199』へのリスペクト」が含まれつつあるのではないか、と思いました。

さらに、福井さんは「『宇宙戦艦ヤマト』を作ることはやりがいがある」「『真赤なスカーフ』のわびさびが『宇宙戦艦ヤマト』の本質なのではないか」とも述べていました。どちらもこれまでには見られなかった傾向で、あたかも福井さんがヤマトファンになったかのような錯覚を感じます。福井さんは、『宇宙戦艦ヤマト』や「リメイク・ヤマト」に適応(慣れる、と言ってもいい)しつつあるのかもしれません。

〇「ヤマトファン」でも難しい

そもそも『2199』の出渕さんは、経歴を見ても言動を見ても、とても熱心なヤマトファンだということがこちらにもよく伝わってきました。あるいは『2202』の岡さんは、発言やシナリオゼロ稿を読む限り熱心なヤマトファンです。そして、どちらも『宇宙戦艦ヤマト』以外で実績を残しているスタッフです。

それでも、出渕さんの下で行われた改変は少なからず賛否を呼びましたし、岡さんの提案するアイデアはいくつか空回りしていた部分もありました。出渕さんや岡さんのような「ヤマトファン」であっても、「新作『宇宙戦艦ヤマト』を作る」という難題に適応することは難しいのです。

〇これからの『宇宙戦艦ヤマト

これからの『宇宙戦艦ヤマト』には、福井さんのような、いや、福井さん以上に『宇宙戦艦ヤマト』に縁のなかったクリエイターが加わるでしょう。

若手発掘に邁進した『2202』エンディングの布陣や、『復活篇第0部』と『Λ』の二本立てで取り組む「NEXTヤマト」の現状を見るに、西﨑彰司さんの志向はヤマトファンを登用するといった保守的なアプローチに加えて、新しいクリエイターを投入することも重視していると思います。

宇宙戦艦ヤマト』は往時に比べればとても頼りないコンテンツではありますが、新しい時代に着実に進もうとしています。その時、私たち観客には、これまで通り厳しい視線を向けるだけでなく、クリエイターの『宇宙戦艦ヤマト』への「適応」を待つことも必要なのではないでしょうか。