ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【ヤマト2202】少しだけ物語を「わかりやすく」する方法

こんにちは。ymtetcです。

今日は『ヤマト2202』の物語をほんの少しだけ「わかりやすく」する方法を、後出しジャンケンで提示してみたいと思います。

まずはこちらの引用文をご覧ください。 

テレサの声「強い"想い"は、ときに定められた未来を変えてしまう」

〇第一艦橋

窓の前にひとり、またひとりと、ヤマトに縁ある者たちの霊体が現れる。

沖田が、土方が、古代守が、徳川が――

テレサの声「もとに戻すには、別の”想い”が必要でした」

「強い”想い”はときに定められた未来を変えてしまう。もとに戻すには、別の”想い”が必要でした」。

第25話のテレサの言葉です。何やら重要なことを言っているようですが、その意味はいまいち判然としません。それはなぜか。

理由は明白です。「強い”想い”」も「もとに戻す」も「別の”想い”」も、この第25話で初めて登場する表現だからです。だから、ピンと来ないのです。

『2202』は全体を通して、色々な表現を使ってくれました(褒めてません)。「愛」「人間」「想い」「縁」「大いなる和」「美しいと感じる心」。ここに『2202』を楽しむ上での難しさがあります。

では、そんな『2202』の欠点も念頭に起きながら、先ほどのテレサの言葉を解釈してみたいと思います。

まず、「もとに戻すには、別の”想い”が必要でした」と告げた場面では、タイミングよくヤマト関係者の霊体が登場します。ここから考えると、「別の”想い”」とは、古代たちヤマトクルーの「想い」であり、言い換えるなら「縁」や「大いなる和」であると推測できます。

次に、「強い”想い”」の方にも目を向けましょう。この「強い”想い”」は「縁」や「大いなる和」と対置される存在。であれば、単純に考えるならこれはズォーダーの「想い」でしょう。第25話で、ズォーダーは「人間だから、人間を呪い、人間を滅ぼそうとする」と述べていました。これはサーベラーに向けた言葉ですが、ズォーダーにもそのまま跳ね返っている言葉かと思います。ズォーダーもまた人間性を持っているからこそ、人間を呪い、人間を滅ぼそうとした。それがテレサの言う「強い”想い”」なのではないでしょうか。

さて、残るは「定められた未来」と「もとに戻す」です。

「もとに戻す」は第26話にも登場したセリフでした。古代と雪の命を助け出せば「未来がもとに戻る」と、山本はテレサからの伝言を受け取っていましたよね。「もとに戻す」の「もと」とは、「宇宙の始まりから終わりまでを見通す」テレサの予見した、「定められた未来」であることが分かります。

つまり、ズォーダーの「人間を呪い、人間を滅ぼそうとする」強い想いが、テレサの予見した「定められた未来」を変えてしまったので、もとに戻すために、ヤマトを中心とする「縁の力」という別の想いが必要になった。またここから、テレサはズォーダーによって「定められた未来」を変えられてしまったからこそ、ヤマトクルーに救難信号を送ったことも分かります。

ズォーダーと古代の対決は、一見すれば「人間性を否定する者」と「人間性を重んじる者」の戦いにも思えますが、ズォーダーが人間性を否定するのは、他でもない彼自身が人間性を持っているからです。宇宙の全てを俯瞰するテレサには、これは人間性同士のぶつかり合いに見えたことでしょう。だから、強い人間性には別の強い人間性を(「縁の力」で結んで)ぶつけるしかなかった。第25話で、テレサはそう説明しているのです。

であれば、この枠組みは第一話から無言のうちに存在していたことになります。それにも関わらず、『2202』は敢えてそのことを隠していた。その狙いは、「人間性を否定する存在」と出会うことの衝撃性を、観客に共有するためだったと思われます。

では、この枠組みは一体いつ提示すれば「わかりやすく」なったのでしょうか。実際の『2202』は第25話で初めて提示したわけですが、私は、第14話で提示すれば、『2202』はもっともっと「わかりやすい」作品になったと考えます。

第14話は、前話でゴーランド親子を葬って古代が涙を流した後、テレサとようやく対面する回です。すなわち、ガトランティス人が人間性を持つことは、既に観客に共有されています。ここで、戦いの大枠をも観客に提示するのです。

強い想い(人間性)に対しては別の想い(人間性)が必要。だから、あなたたちは『縁』を結んで、あの強い想い(人間性)に対して立ち向かわなければならない。それができれば、あのガトランティスを止めることができるだろう」。テレサにこう語らせれば、戦いの枠組みがより明確になるのではないでしょうか。

さらに言えば、ズォーダーも人間性を持ちながら、何らかの事情で人間性の否定にこだわっていることをこの時点で古代に伝え、また観客に共有すれば、古代があくまでズォーダーとの和平にこだわることにも説得力が増します。さらに、第19話で「人間性を否定する人間」が艦長を務める銀河が登場した際に、それがズォーダーの心情とどこか重なることも観客に伝わりやすくなるはずです。

さらにさらに言えば、ここで「想い」や「人間性」を思い切って「愛」に統一してしまう手段もあるかと思います。「ズォーダーは愛ゆえに愛を否定している。強い愛に対しては別の強い愛が必要。だからあなたがたは『縁』を結ばなければならない」。そうすれば、「愛の戦士」同士がぶつかり合う『2202 愛の戦士たち』の構図もより明確になるはずです。

 

いずれにせよ、第14話はテレビシリーズで言えば、第2クールの第1話でもあります。このタイミングで物語の軸を明確にすれば、より『2202』は「わかりやすく」なったものと思います。