ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【新人クルー研修日誌】ネタバレと「人間味ある公式」のハイブリッド

こんにちは。ymtetcです。

「新人クルー研修日誌」による『2199』振り返りも第五章にやってきました。復習テストを盛り込むあたり、心憎い演出です。

さて、「新人クルー研修日誌」は今、『2199』振り返りが中心になっていますよね。そこで今日は、現時点のこの企画が持っている要素を(私から見える)世の中の潮流と照らし合わせて、考えてみたいと思います。ポイントは、「ネタバレプロモ」と「人間味ある公式アカウント」です。

まず、最近は”ネタバレなくして宣伝なし”の色合いが濃くなってきたように思います。2021年で言えば、『シンエヴァ』の公式がネタバレ感想をファンに求めた出来事も記憶に新しいですよね。

しかし皆さんが最も目にするであろう、ツイッターでは、全体的にネタバレを自重していました。それゆえに盛り上がりに欠けた面があります。ネタバレ覚悟で議論をして、意外な部分に気付いてもらい、ファンが二度、三度映画館に足を運んでもらってこそ、さらなる興収アップが期待できるからです。

シン・エヴァ劇場版 公式が「ネタバレ」をファンにお願い なぜ?(河村鳴紘) - 個人 - Yahoo!ニュース

サブカル専門ライター」の河村鳴紘さんは、『シンエヴァ』公式がネタバレ感想を求めた理由として、「意外な部分に気付いてもらい、ファンが二度、三度映画館に足を運んで」もらう、という興収上のメリットを指摘しています。つまり、一度観ただけでは分からなかったその作品の魅力に気付いてもらう役割が、ネタバレにはあるというのです*1

実際、『シンエヴァ』は「現在のエヴァンゲリオン」と題して、ネタバレ要素多めのPVも公開しています。これも同様の役割を担っていると言えるでしょう。


www.youtube.com

「観た人が映画を思い出せる」「観ていない人も核心は分からない」絶妙なラインを突いた傑作動画だと思います。

 

ところで、ネタバレプロモにはもう一つの役割があると私は考えています。それが、新規ファンを寄せ付ける役割です。

Youtubeが社会に定着して久しいですが、Youtubeを開いてみると、動画には必ず、動画のタイトルとサムネイル画像が表示されていますよね。そして、タイトルとサムネイルからどのような内容の動画であるかを判断して、視聴者は動画を再生させるわけです。この一連の流れが瞬時に行われているのが、Youtubeです。

この仕組みが関係あるのかは判然としませんが、私は、現在の社会は少しずつ「得体の知れないものには見向きもしない」社会に変わりつつあると感じています。これを映像作品に当てはめるのなら、「よく分からない作品は観ない」。逆に言えば、「ネタバレを聞いて面白そうなら観る」。そんな社会に変わりつつあるのではないでしょうか*2

そう考えると、既存作品の内容を要約してツイートする「新人クルー研修日誌」は、『2199』という作品を「よく分からない作品」から「なんとなく分かる作品」に転換させていく役割を果たせるわけですから、使い方次第でいいプロモーションになるかと思います。

 

最後に、「新人クルー研修日誌」は「人間味ある公式アカウント」の役割も担っているとも私は考えています。「人間味ある公式アカウント」としては、有名どころで言えば、タニタの公式Twitterあたりでしょう。

タニタの公式アカウントについては、ネット上にいくつかの記事が公開されています。

公式Twitterアカウントの開設当初は、朝の挨拶など当たり障りのない“普通”のツイートがメインでした。でも、やっぱりそれだけではフォロワーが増えない行き詰まりを感じるようになって。

そこで、少しずつ自分のパーソナルな部分を出すようにしたのです。そもそもアイコンも企業ロゴなので、そこに人間味や人の温かみがないと感じていて。

タニタ公式Twitterはなぜここまで人に愛される?【3人の「中の人」Vol. 1】 | ライフハッカー[日本版]

この記事によると、堅苦しい公式アカウントが人間味あるツイートをすること、それが人を惹きつけるのだという考え方をとっているようです。

今回の「新人クルー研修日誌」も、それと同じような考え方を取り入れているように思います。

最後に、ネタバレプロモも「人間味ある公式アカウント」も、最近始まったトレンドではありません。その意味で、今回の「新人クルー研修日誌」は、やや周回遅れな企画だと批判することもできるでしょう。

しかし、「新人クルー研修日誌」は、”ヤマト世代が中心となって楽しむ(ものだと世間に認識されている)作品を、ヤマト世代ではない若いスタッフが楽しむ”という点に意外性や”おもしろみ”をもっています。その強みを活かして、『宇宙戦艦ヤマト』の宣伝活動を効果的に展開することができれば、既存ファンが楽しむ以上の意味をもった企画になっていくのではないでしょうか。

*1:これは私の体験とも合致します。私は同じ庵野さんの『シン・ゴジラ』を映画館で(私としては異例の)5回鑑賞したのですが、これはTLに流れてきた同作の二次創作やネタバレ感想に感化された部分が大きいです。

*2:極悪非道でお馴染みの「ファスト映画」なども同じ文脈で語れるかもしれません。また、かつて「ライトノベルのタイトルが長すぎる問題」が議論されたこともありましたが、あれも「よく分からない作品は読まない」流れの一つであったのかもしれませんね