こんにちは。ymtetcです。
前回の最後の方で、「若者たちの存在を『波乱』と見なすのは、若者たち自身ではなく『大人』の方である」と書きました。同時にこれを書きながら、私は「波乱」という字にどこか引っかかりを覚えていました。その正体は、アニメ『響け!ユーフォニアム』です。同作の原作小説の第二作のサブタイトルが「波乱の第二楽章」なのです。
小説『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』は、2018年に映画『リズと青い鳥』、2019年に映画『誓いのフィナーレ』としてアニメ化されました。ちょうど『2202』や『スターウォーズ』を上映していた時期の映画館で予告編が流れていたので、一度は予告を観たことのある方が多いかもしれません*1。
今日は特に、『誓いのフィナーレ』に注目しましょう。
〇劇場版『響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ』
映画の雰囲気は、この1分の予告編でおおよそ掴めると思います。
テレビシリーズで1年生だった主人公たちが2年生になり、新しい目標の下で新1年生を迎える。でも、その新1年生は曲者ばかりで……!? という感じです。要は、「チームに加わった新参者が波乱を巻き起こす」タイプの映画でした。シリーズもの、特にチームものの作品では、こうした「波乱」を巻き起こす新参者がチームに加わることで、物語を盛り上げることがあります。
今まさに、リメイク・ヤマトが『2205』で突入しようとしている物語も、このパターンなのではないでしょうか。
意外なところに、『2205』と比較できそうな物語が転がっていたものです。
〇『誓いのフィナーレ』的な『2205』を想像する
では、『誓いのフィナーレ』から『2205』の予想へと繋げてみましょう。
「頑張るって、なんですか?」
「上手くなってどうするんですか?」
これは『誓いのフィナーレ』に登場する新1年生・久石奏の言葉です。
この言葉選びは、『響け!ユーフォニアム』のファンであればあるほど、グサッとくるような仕掛けになっています。というのも「頑張る」も「上手くなる」も、テレビシリーズで主人公が心の底から叫んだ言葉、つまり作品の主題の一つだったからです。
これと同様の展開ならば、『2205』にあってもおかしくありません。
既に『2205』の本予告では、新クルー・土門竜介の「背負えるんですか? 全ての地球人の運命を」との言葉が登場しています。そのまま久石奏が放ってもおかしくないセリフですね。
「異星人と理解し合って何になるんですか?」
「波動砲を使わないでどうするんですか?」
「理想だけで地球を守れるんですか?」
これに対して、改めて古代と土門が、『2199』『2202』の主題を確認していくような物語。そうすれば、『2205』は『誓いのフィナーレ』のような、無難な「波乱」を描くことができるでしょう。
〇『誓いのフィナーレ』から得られる『ヤマト2205』へのヒント
映画を未見の方も何となくイメージできたのではないかと思いますが、『誓いのフィナーレ』が持っているストーリーライン自体は、極めてシンプルかつ王道なチームもの作品の一作、といった感じです。それを『2205』がなぞったところで、物語の一本の筋にはなり得ても、それは没個性的だと言われて致し方ありません。
ですが私は、『誓いのフィナーレ』の強みはそのディテールにあると考えています。同作は、人間が「高校1年生」から「高校2年生」になるということを、無言のうちに画面で表現している点が素晴らしいのです。
例えば、テレビシリーズと『誓いのフィナーレ』では、画面の色づくりが変更されています。あくまで私の経験ですが、「高校1年生」の時に見える景色と、「高校2年生」の時に見える景色とは異なるものです。これは『2205』でも、制作スタジオの変更により、意図的ではないにせよ実現しています。
他にも、敢えて新1年生に制服を着崩させることで、「少し大人」な上級生に対する「若者」を表現しようとしたり、テレビシリーズから登場するキャラクターの髪形やシューズの色を変更したりすることで、無言のうちにジェネレーションギャップや責任感、時間経過を表現しているわけです。
こういった部分は、『2205』も十二分に学ぶべき点であると私は思います。
例えば、『2202』で、ヤマトにおける古代進の部屋は概ね『2199』とは変わっていないようでしたが、それもガトランティスとの決戦で焼けてしまいました。『2205』での古代の部屋は、沖田のような書斎を作っているのか、それとも『2199』と変わらないコンセプトなのか。変わる、変わらないも含めてキャラクターの個性です。こういったディテールの部分でキャラクターの表現にこだわるということも、これからの『ヤマト』では挑戦してみて欲しい部分ですね。
*1:私自身、実は『響け!ユーフォニアム』に興味を持ったのは映画館で予告編を観ていたからでした。