ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

『ヤマト復活篇』が一部のヤマトファンを惹き付ける理由

こんにちは。ymtetcです。

『ヤマト復活篇』は、近年の『ヤマト』でも特別な立ち位置を占めていると思います。あれほど批判を受けたのに続編を望む声が根強くあり、多くの二次創作を生み、ついには『ヤマト黎明篇』という公式の新作が誕生するに至った。リメイクヤマトとは違う、独自の立ち位置と存在感を保ち続けている作品なのではないでしょうか。

その理由として考えられることは、いくつかあります。例えば、『復活篇』は西﨑義展さんが本格的に携わった最新の、そして最後の『宇宙戦艦ヤマト』であること。あるいは、作品のいくつかの要素が「第一部」では未回収であること。さらに、全国的に大々的な宣伝をうったことで、そもそもの知名度が高い作品であること

しかしそれだけでは、先述した「多くの二次創作」や、『ヤマト黎明篇』につながる、ファンの『復活篇』に対する想いは説明できないと私は考えます。

それこそ『ヤマト黎明篇 アクエリアスアルゴリズム』の制作に携わった「アステロイド6」の さたびーさんが、

(略、『復活篇』は大好きだけれども)納得がいかない点や、時代に即していないと感じる点があって。プライベート小説を書いたのも、それが大きな原動力だったんです*1

と語ったように、『ヤマト復活篇』は仮にネガティブな感情であっても、ファンを突き動かすだけの力を持っていたわけです。

では、その背景にあるものは何か。今日はそれについて、考えてみたいと思います。

『ヤマト復活篇』が一部のヤマトファンを惹きつけるのは、そもそも『宇宙戦艦ヤマト』の物語そのものが「復活」のモチーフを随所に盛り込んでいたからだと考えます。つまり、ヤマトファンの多くが愛した『宇宙戦艦ヤマト』とは、そもそも「復活」を描いた物語であるということです。

だから、「復活」をテーマに掲げた『ヤマト復活篇』は、失敗をしてしまった部分も含めてファンの心を惹きつけるのだと考えます。

宇宙戦艦ヤマト』とは、滅びの危機に瀕した地球を過去の青い姿に"復活"させるために、過去の戦争のために散った戦艦を”復活”させ、旅をする物語でした。また、『さらば宇宙戦艦ヤマト』とは、過去の危機を忘れて繁栄を謳歌する地球に異議を唱えて、過去の遺物として扱われようとしていた戦艦を”復活”させ、旅立つ物語でした。

シリーズの中で、とても多くの人々を惹き付けた2作品、宇宙戦艦ヤマト』と『さらば宇宙戦艦ヤマト』は、いずれも「過去(忘れ去られた存在)の復活」というモチーフを物語に盛り込んでいました

ここで再び『復活篇』に目を向けますと、『復活篇』は二重の「復活」の要素を、映画に与えられていたことに気づきます。

一つが、劇中世界の「宇宙戦艦ヤマト」の復活です。これは過去の出来事で散った戦艦を”復活”させる、第一作と全く同じ構図であることが分かります。

もう一つが、現実社会における『宇宙戦艦ヤマト』の復活です。西崎プロデューサーの騒動、著作権問題などを経て「冬の時代」を迎えていた『ヤマト』が、日本社会に「復活」する。昭和の時代に消えた『宇宙戦艦ヤマト』を、平成の世に「復活」させる。それも『復活篇』に与えられた役割の一つでした。

ですが、現実の『復活篇』はそのどちらにも失敗してしまいました。『復活篇』の宇宙戦艦ヤマトは、復活の感慨もそこそこに飛び立ち、その後は後期『ヤマト』の良いところ、悪いところをふんだんに受け継いだ物語が展開されます。劇中世界の「宇宙戦艦ヤマト」が復活するという部分に、ドラマを配置できていなかったのです。

そして『復活篇』は、現実社会に『宇宙戦艦ヤマト』を復活させることにも失敗した。

コンセプトだけなら、初代『ヤマト』や『さらば』にも匹敵する、確かな「過去の復活」というモチーフを盛り込み得たはずなのに、『復活篇』は失敗してしまいました。

だから、一部のファンはごく自然にこう思うのです。「なぜ『復活篇』は失敗したのだろう?」「どうすれば『復活篇』は成功できたのだろう?」と。この自然と湧き上がる問いこそ、『復活篇』が一部のヤマトファンを惹きつける背景にあるものだと考えます。

つまり『復活篇』は、そのプロットやコンセプトにとても大きなポテンシャルを持っていたが故に、今でも一部のヤマトファンを惹きつけているのではないでしょうか。

そして、『復活篇』のコンセプトが持っていた「過去の復活」要素に、確かなドラマを与えようとするのが『黎明篇 アクエリアスアルゴリズム』でもあります。「ヤマト復活」に至るまでの新作が制作されることは、『復活篇』の抱えた課題からすれば、一種の必然であったと言えるかもしれませんね。

 

*1:『STAR BLAZERS ヤマトマガジン 10号』株式会社ヤマトクルー、2021年2月、24頁。